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指定廃棄物の処分場問題:「東電用地という結論先にありきだったのではないか」と疑うこれだけの理由

2015.07.03


◆3687トンの指定廃棄物
福島第一原発事故によって千葉県でも3687トンの指定廃棄物が発生した。指定廃棄物というのは放射性物質によって汚染され、1kgあたり8000ベクレルを超えるものを指す。その発生量が一番多いのは福島県の13万2千トン、2位が栃木県の1万3千トン、そして3位が千葉県となっている。千葉県の場合、その多くは焼却場から出てきた焼却灰である。

一般廃棄物の焼却灰は、本来ならば市町村が処理をする。しかし放射性物質に汚染されているものまで市町村任せにするわけにはいかないということで、原発事故の5か月後に放射性物質汚染対処特措法が成立した。この法律によって8000ベクレル超の指定廃棄物は国(具体的には環境省)が処理することになった。

◆環境省の説明への疑念
そこで環境省が埋設場所を探すことになったわけだが、今年4月になって千葉県分については千葉市中央区蘇我の東京電力敷地に埋める方針を打ち出した。原発事故の責任企業だからそこに引き取ってもらおうということなのかと思いきや、環境省はそうではないと言う。同省の説明によれば「安全性の確保を第一に考えて最適地を探したら、たまたま東電の敷地だった」とのことである。

しかし私はこの説明に大きな疑念を持っている。つまり東電用地に埋設するという結論が先にあって、後から様々な理由付けが出てきたのではないかと思っている。別の言い方をすれば、安全第一で選考したという説明そのものが虚構なのではないかと疑っている。

もちろん「結論先にありきだ」との明確な証拠をもっているわけではない。しかしそう推察するに足るだけの状況証拠ならば挙げられる。以下それについて箇条書き風に述べていきたい。

◆疑念その1 本当に偶然に東電用地が最高点になるのか?
まず安全第一で検討したらたまたま東電の敷地になりましたという説明そのものが不自然である。環境省の説明をより具体的に言うと「最初は県内の約5千か所を検討しました。それを683か所に絞り込みました。この683か所を安全面の尺度を使い20点満点で点数化したら東電敷地が16点で最高点でした。ですからここを候補地としました」ということになるのだが、そんな偶然は確率的に見ても極めて低いだろう。

◆疑念その2 なぜ東電には事務連絡ですませたのか?
指定廃棄物の処分場というのは、はっきり言えば迷惑施設である。誰も喜んで受け入れるものではない。だからこそ国は近隣住民に対して説明会などを開催して、受け入れをなんとか理解してもらおうとしているのである。近隣住民や地元自治体が難色を示すのは当然だが、普通はそれ以前に地主・地権者の理解を得ることさえ困難だろう。突き詰めて言えば「あなたの土地をゴミ捨て場にさせてください。そのゴミはただのゴミではなく放射性物質が含まれています」という話なのである。そんな話を地権者に持ち込んだとしても「もってのほかだ」とけんもほろろに扱われるのが常識だろう。

環境省からすれば自治体や近隣住民の理解を得るのも大変だろうが、それ以前にどうやって地権者の了解を得るかも頭を抱える問題のはずである。では、今回、環境省はどのように話を進めたのだろうか。
同省の説明を時系列で見てみると以下の通りになる。

・4月9日  環境省内での採点で東電用地が16点だったことを受けて、東京電力にこの土地について何か利用計画があるかを照会。

・4月17日 環境省が東電用地を候補地としていることがメディアによって報じられる。
・4月24日 小里泰弘環境副大臣が千葉市役所を訪問し、千葉市の東電用地を選んだことを説明。
・6月29日 環境省が地元住民への説明会(第1回目)を開催
では土地の所有者たる東京電力にはいつ説明したのだろうか。環境省の説明では4月9日に東京電力に対し「千葉市中央区蘇我の敷地のうち空き地になっている部分は何か使い道が決まっていますか」と事務的に照会したという。しかし「放射性物質を埋めさせて下さい」ということをいつ、どのレベルで申し入れたのかは明らかにしていない。
この点について、環境副大臣の小里氏は6月16日の私の環境委員会での質問に対し、こう答弁している。「(小里氏が千葉市を訪問する4月24日の)数日前だったと記憶しておりますが、事務方からその旨知らせております」。つまり事務的に連絡しただけだというのである。
人の土地に放射性物質を埋設するというお願いを事務連絡ですませているというのである。普通ならば平身低頭して頼むのが筋だろう。なぜそんなに軽いやり方ですむのか。それは、相手が事故の責任企業である東京電力であり、なおかつ以前からここを処分場にするということが事実上決まっていたからではないのか。決まっていたからこそあらためて頼みに行く必要などはなく、事務連絡で済む話になっていたのではないだろうか。

◆疑念その3 なぜ千葉県だけは民有地も選考対象にしたのか?
上述した話にも関係をするが、指定廃棄物の処分場など喜んで受け入れる人などはいない。地元住民や自治体だけでなく地主・地権者も簡単に納得するはずもない。こうした処分場は千葉県など5県に新設することになっているが、千葉県以外の4県ではすべて環境省は国有地と県有地だけを対象にして選定作業を行っている。国有地であっても近隣住民の反発はあるだろうが、地主の反発というハードルだけはとりあえず越えることができるからである。
ところが環境省は千葉県に関してだけは最初から民有地も選考対象にするという方針を取った。ここでも結論が先にあったからではないかという疑念を深めざるをえない。

◆疑念その4 なぜ補償についての議論はなかったのか?
繰り返しになるが指定廃棄物の処分場は典型的な迷惑施設である。そこで国は受け入れてくれた自治体には合計50億円を配分する方針を打ち出している。つまり環境省が処分場を建設する5県に対しては、風評被害対策や地元振興費として合計50億円(単純に割れば1県あたり10億円となるが内訳などの詳細はまだ決まっていない)を交付するというわけである。

しかしこれはあくまでも自治体への資金提供である。人の土地に放射性物質を埋設するとなれば、その土地所有者に対しても何らかの補償が必要になるはずである。他県のように国有地に建設するというのであれば、それも不要だろうが、千葉県のように民有地を含めて選考する以上、受け入れを納得してもらうためにはこうした補償策も検討しておくのが普通だろう。

環境省の説明によれば東電の土地を選んだのは偶々ということである。つまり他の法人や個人の土地が候補地になる可能性も十分にあったということになる。それならば補償策を詰めておくのは当然だろう。東京電力ならば事故の責任企業なので補償を求めて声高に叫ぶことはできないにしても、他の人の土地ならば補償の案がなければ用地交渉は入り口から躓いてしまうだろう。

ところが小里副大臣は補償については議論さえしていなかったことを国会答弁で明らかにしている。議論が不要だったのは東電用地を処分場にすることがあらかじめ決まっていたからではないのだろうか。

◆まとめ
以上、4点に分けて私の疑念を書き綴ってきた。こうしたことから私は「処分場は東電用地に建設するという結論が先にあったのではないか」と思っている。もちろん以上述べてきたことは状況証拠にすぎない。しかし疑うに足るものだとは思っている。こうした疑念がある中で、環境省側が「それは違う。誤解だ」というならば、それを覆すだけの情報を開示して、きちんと説明すべきだろう。ところが今日の時点では、環境省は東電とのやりとりの中身も公表していない。

放射性廃棄物はどこかに処分しなければいけないというのは事実である。もし環境省が「地主の理解など簡単には得られません。だから事故の責任者である東京電力に引き取ってもらうしかないんです」と言うならば、それはそれで一つの考えではあるだろう。しかしそれならばきちんとそう説明すべきである。またその場合は、これまでの説明、つまり「安全第一で選考してきたら、たまたま東電の土地でした」という説明との整合性は問われるだろう。
この問題はまだまだ尾を引きそうである。国政にある身としても今後も引き続いてしっかりと質すべきことは質していきたいと思う。

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