「電力自由化は形だけ」
2011.07.25
「電力自由化は形だけ」
「夏は暑い」というのは当たり前だが、それでも近年はさらに暑くなってきている感じがする。気象庁は以前から30℃を超える日のことを「真夏日」と呼んでいたが、最近は30℃以上などは当たり前になってきたため2007年からは35℃を超える日を「猛暑日」と呼ぶようにした。そして昨年は、明治31年に観測が始まってからの113年間で最も暑い夏になった。
さて暑い季節は電力消費が増える。特に今年は原発事故が重なったために電力不足が心配されている。政府も37年ぶりの電力使用制限令を関東・東北地方に出し、他地域でも節電を呼びかけている。
電力不足というならば節電は当然のこととして、もう一つやるべきことがある。電力供給を増やすことである。発電は何も電力会社しかできないわけではない。自家発電もあれば、既存の電力会社以外の新規参入事業者もありえる。東京電力の電気だけでは足りないというならば、新規事業者にもどんどん参入してもらえばよい。つまり電力自由化である。
そういうと「電力はすでに自由化されています」という答えが返ってくる。確かに法律上はそうなっている。1990年代から段階的に電力自由化が進み、現在では50kw以上の電力小売りは自由化されている。要は関東地方の工場であっても必ずしも東京電力と契約する必要はない。東北電力と契約しても構わないし、エネットとかダイヤモンドパワーという新規参入事業者(PPSという)から買ってくることもできる。
cf.なお家庭用は50kw未満なので自由化の対象外で、関東の世帯は東京電力と契約せざるをえない。
ルール上は大口需要家の電力は自由化されている。問題は実体としてそれが進んでいないことである。その実態を明らかにするために私も7月7日の予算委員会でこの問題を取り上げた。
政府の答弁によると、電力会社が自分の管内を超えて他社の管内に小売りをした「越境供給」はわずかに1件にすぎない。「越境供給」できる対象も50kw以上なので全国におそらく何十万件もある。何十万件のうちたったの1件である。
cf.50kw以上の需要家が全国にいくつあるかは7月11日提出の私の質問主意書で政府に問い質したが、政府の答弁は「その数を把握していない」というものだった。しかし500kw以上の需要家に限っても東京電力管内に約14800あると政府も認めているので、「全国」「50kw以上」に対象を広げれば何十万以上に上るのは間違いない。
この1件というのは九州電力が広島市内(中国電力管内)のスーパーに電力を販売したというものだが、越境された側、つまり中国電力では社長、会長がまもなく辞任するに至った。越境という異例の事態を許してしまったことへの引責だと取り沙汰されている。「越境」というのはそれほど珍しいことといえる。さらに私の質問主意書(7月11日提出)への政府の答弁書によると全販売電力に占める新規参入事業者の発電の割合は1.91%にとどまっているという。
これではいくら法律上、電力は自由化されているといっても結局、「関東は東京電力、関西は関西電力、九州は九州電力」という既存大企業の縄張りは何ら崩れていないと言わざるをえない。
制度上は自由化されているにもかかわらず、なぜ実態の自由化が進んでいないのか。大きな理由は既存の電力会社が送電線を持っているからである。いくら発電事業に新規参入しても送電線が使えなければ、実際に電気を売ることはできない。結局は送電線を持っているところが強くなるのだ。
だからこそ発電と送電を分離すべきだと私たち「みんなの党」は主張している。要は東京電力は発電だけの会社にすればよい。送電線は別会社にして、東電にも他の発電事業者にも平等に利用させるようにすべきである。それなくして真の電力自由化はないし、地域独占企業の壁を崩すことはできないのである。
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