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けんいちブログ

経済産業省への挑戦状(上)

2002年02月04日

「経済産業省への挑戦状(上)」

~情報公開請求へ~CO2の排出量を公開せよ!温暖化対策に消極的な経産省を水野賢一が撃つ。

◆省エネ法の情報公開を請求

2002年2月1日、情報公開法に基づいて経済産業省に対して情報開示を請求した。情報公開法は昨年4月に施行されている。経済産業省の情報公開推進室によれば、年末までの9か月間で同省関係の開示請求は700件余りあったそうである。ただし国会議員からの請求は今回が初めてだという。その点、私の行動は奇異に受け止められたかもしれない。だがこれはやらざるを得なかったとも思っている。

私が請求したのは全国の主要工場がどれだけのエネルギーを使用しているかの資料である。例えば新日鉄(別に東芝でもトヨタでもいいのだが)の○○工場がどれだけの原油や石炭、さらには天然ガスや電気などを使用しているかといった情報の提供を求めたのである。一定の規模以上の工場は省エネ法によって燃料や電気の使用量を経済産業省に報告する義務がある。だがこれらの数値は経済産業省が抱え込んだまま公表されていない。そこでその開示を求めたわけである。

◆公開請求の理由

なぜこうした資料を請求したのか。話は地球温暖化に関係してくる。地球温暖化は21世紀の最重要の環境問題となっている。温暖化を食い止めるには二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出削減が不可欠である。そのためには各界各層の努力が必要である。とりわけ産業界は国内の二酸化炭素排出量の約4割を占める最大の排出源となっている。この産業界からの排出削減が喫緊の課題であることはいうまでもない。

ところが現在どの企業がどれだけの温室効果ガスを出しているかは必ずしも明らかではない。公表の義務がないからである。排出量が分からないということは、どこがどれだけ削減努力をしたかも分からないわけである。もちろん自主的に公表している例はいくらでもある。例えば旭化成は年間520万トン、日立製作所は306万トンの二酸化炭素を出していることを明らかにしている。だが公表していない企業が多いのもまた事実である。

本来、こうしたデータは公開されて然るべきである。公開したからといって急に排出量が減少するというわけではないだろう。それでも野放図に排出することへの心理的歯止めにはなりうる。そこで私は公表の義務づけを主張し、各方面に働きかけてきた。しかし残念ながら今のところこの意見が現実化する目途はたっていない。

とはいえ現行の制度でも各社の二酸化炭素排出量を推定する道がないわけではない。省エネ法によって主要工場はエネルギー使用量を経済産業省に定期報告している。エネルギーの使用量が分かれば、事実上、二酸化炭素の排出量を把握できる。何をどれだけ使ったかが分かれば、それに一定の係数を掛けることによって二酸化炭素排出量に換算することができるからである。ところが経済産業省はこの資料を保管したままで外部に出すことを拒否している。私も一国会議員として資料請求をしていたが、経済産業省の姿勢は変わらなかった。そこで今回、法に基づく情報公開請求に踏み切ったわけである。

◆守られていない温暖化対策推進法

以上述べたように、今回の情報開示請求は代替策といえる。企業に二酸化炭素排出量の公開義務がない中で、燃料・電気などの使用量によってこれを推計しようというわけである。私の考えの基本はあくまでも企業に温室効果ガスの排出量の公表を義務づけるべきだというものである。企業に公表を義務づけるためには地球温暖化対策推進法の改正が必要になってくる。このあたりについてやや詳しく述べてみたい。

1998年、地球温暖化対策推進法が成立した。京都会議の翌年のことである。この法律は第9条で、事業者に温室効果ガスの排出抑制計画を作成するように求めている。きちんと計画を立てさえすれば、エネルギーの使い方に気を配るようになり、省エネにも努めるだろうという発想である。ただし計画の作成は明確な義務ではなく、努力義務とでもいうべき規定になっている。法律の文言は「計画を作成し、これを公表するように努めなければならない」となっている。つまり計画を作成することを求めてはいるが、作らなくても違法とは言い難い。ちなみに作成期限も定められていない。

こうした規定の下で実際にどれだけの企業が計画を作成したのかに私は興味をもった。そこで昨年秋に水野賢一事務所として実態調査を行なった。東証一部上場の全社にアンケート票を送付し、計画を作成しているかどうかを尋ねたのである。結果は次の通りだった。

・すでに作成した 41.9%

・企業としては作成していないが業界団体などで共同して作成した 13.9%

・企業全体としては作成していないが事業所などで作成した 6.4%

・まだ作成していない 27.5%

・その他 12.1%

アンケートの回収率は26.1%だった。決して高い数字ではないが調査票を郵送する手法を採った割にはまずまずの率だともいえる。だがこういう調査では環境への取り組みに自信を持っている企業ほど回答率が高いのに対し、そうでない企業は回答してこないということは容易に想像できる。つまり「まだ作成していない」企業は先にあげた27.5%を大きく上回っていると考えられる。

東証一部上場といえば日本を代表する企業である。そうした企業の間でさえ、計画を作成していない会社が多く存在することが明らかになった。温暖化対策推進法の理念は十分に生かされていないのである。 (このアンケート調査については『水野賢一ホームページ』の“水野賢一の主張”01年11月20日、11月23日の項に詳説してあるのでご参照いただきたい)

◆CO2 排出量を把握していない企業も

さらにこの調査によって多くの企業が自社の排出しているCO2 の量さえ算出していないことも判明した。これは極めて憂々しい問題である。現在どれだけ排出しているかを把握することは削減の大前提といえる。削減計画を作ろうにも現在どれだけ排出しているかを把握していなければ、計画の立てようもないからである。しかしこれが現実なのである。

そこで私はまず地球温暖化対策推進法を改正して各企業に排出量の把握と公開を義務づけるように主張してきた。もちろん温暖化対策は多岐にわたる問題である。これだけで事足れりというはずもない。排出量の把握というのは基本的な第一歩にすぎない。だがこれさえできていない以上、せめてこの程度のことは早急に実施すべきだと考えたのである。

このことは決して私だけが言っている突飛な案ではない。地球温暖化を心配する多くの人が賛同してくれている。環境省も昨年秋のの時点ではこの方向で動いていた。さらに企業が公表する数値が正しいかどうかを検証しうる第三者機関を設置することも検討されていた。

◆骨抜きになった改正法案

今年1月に開会した通常国会では京都議定書の批准に向けての審議が行なわれる。批准は日本が温室効果ガスの6%削減を国際的に公約することを意味する。そこで政府も温暖化対策推進法の改正に動きだした。二酸化炭素の削減に向けて対策を強化するためである。しかしこの改正案には肝腎の各企業の排出量公表は盛り込まれなかった。昨年秋の時点からみれば大きな後退である。 これでは骨抜きの改正案としか言い様がない。

企業の公表義務が見送られた背景には、経済産業省と産業界の猛烈な反発があった。推進派の環境省と絶対反対派の経済産業省のせめぎあいの中で、とりあえずは後者の主張が通ったといえる。関係者の話を総合すると、環境省としては今国会では京都議定書の批准が絶対の命題であり、そのためには他の部分で譲歩することもやむなしと考えていたようである。企業の義務に固執し続けると、経産省・産業界のさらなる反発を呼び起こし、批准そのものまで危うくなりかねないという判断があったものと思われる。確かに産業界や自民党内の商工族議員は京都議定書自体への攻撃を強めている。環境省の危惧も分からないではない。議定書の批准という大局的な勝利のためには小さな後退はやむをえないという考えを咎めるつもりもない。

だが環境省は環境省、水野賢一は水野賢一である。私は一人の議員としてあくまでも自説を貫いていくつもりである。法改正によって制度そのものを改めることが頓挫したのであれば、現行制度の枠内で次善の手を打つしかない。それが今回の情報公開請求なのである。

◆説得力に欠ける産業界の論理

ところでなぜ産業界はCO2 の排出量公表の義務化に猛反発するのだろうか。実を言うと私にもよく分からない。例えば炭素税・環境税といった新税を課すというのならば彼らが反対するのはまだ分かる。新たな経済的負担が生じるからである。またエネルギーの割り当て制のようなことに反対するのも産業界からすれば当然だろう。自由な経済活動を阻害する恐れがあるためである。だがCO2の排出量の公表というのは、新税でもなければ規制でもない。単なる情報公開にすぎない。ちょうど企業が売上高や経常利益を公表しているように、CO2についても公表すべきだというだけのことである。決して無理難題ではないはずである。

「CO2 の排出量は企業秘密だ」という反論も聞いたことがある。だがCO2 の排出量がどうして企業秘密なのだろうか。もしこれを企業秘密だというならば売上高や経常利益の方がよっぽど重要な機密ではないだろうか。さらに言えば、現に排出量を公開している企業も多いのである。それによって企業活動に悪影響があったなどという話は寡聞にして聞いたことがない。

「安易な義務化ではなく企業の自主的な取り組みに任せるべきだ」という声もある。特に産業界の人は二言目にはそういうことを言う。企業が自主的に温暖化に取り組むことは大歓迎である。ただ自主性だけに任せておくと最低限のことも実施しない会社も出てくる。現行の温暖化対策推進法が排出抑制計画の作成を求めているにもかかわらず、未作成の企業が多いのは先に見た通りである。この法律が企業に対しては“努力義務”しか課していないからである。やはり最低限の義務は必要なのである。

◆情報公開請求へ

経済産業省・産業界側はありとあらゆる反対論を展開した。だいたいは説得力に欠けるものだったが、その中で一つ興味深い意見があった。経済産業省のある人は次のように主張した。「産業界はすでに省エネ法に基づいて使用した燃料や電力の量を経済産業省に報告している。すでにそういうことをやっているのに、今度は二酸化炭素の排出量を環境省に報告しなければならないというのでは屋上屋を架すことになり、二重規制になってしまう」。

これは確かに一面の真理を衝いている。似たような報告を一方で経産省に、他方で環境省にするというのはいかにも縦割り行政で非効率である。もちろんこれを言った人は「だから企業に二酸化炭素排出量の報告や公表の義務を課すべきでない」と説いているわけである。だがこれを聞いた私はすぐに別のことを思った。「それならば現在すでに実施されている経産省への報告を公開してもらってもいいな」と考えたわけである。

そこで経済産業省に対して、この資料の公開を求めた。だが返ってくるのは否定的な答えばかりだった。曰く「企業秘密に該当します」、曰く「この資料は公開を前提としていません」という具合である。つまり普通のやり取りでは埒が明かなかったわけである。しかも一方では、地球温暖化対策推進法の改正案も大幅に後退した内容になってしまった。このままでは日本の環境行政は大きく遅れてしまう。それならばということで情報公開法第4条に基づいて、2月1日に情報公開請求を行なったのである。

請求を受けた官庁側は30日以内に開示・不開示の決定をしなければならない。 開示されれば問題はないが、不開示という決定を下すこともありえる。その場合には、請求者である私は不服申立てができる。この場合は内閣府の情報公開審査会が公開の是非について事実上、判断を下すことになる。今後、事態がどう推移するかはまだ分からない。だが事がここまでに至らないように経済産業省がすんなりと情報を開示することを希望している。情報公開と温暖化対策という大きな流れに逆らうことはもはや許されないのである。

 

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