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けんいちブログ

経済産業省への挑戦状(下)

2002年04月01日

「経済産業省への挑戦状(下)」

~温暖化対策日記(4月1日から議定書批准まで)~党内に渦巻く賛否両論の中、ついに議定書批准へ。温暖化に関心を寄せる人必読の貴重な記録。

◆4月1日

本日の朝日新聞に温暖化に対する世論調査の結果が出ている。興味深いのは産業界の主張に対する国民の厳しい視線である。例えば「経済界は経済成長にマイナスなどとして、議定書に反対しています。あなたは経済界の姿勢に納得できますか」という設問には、“納得できる”が20%、“納得できない”が62%である。「これ以上の省エネは無理」という産業界の主張に対してもやはり62%の人が“納得できない”としている。さらに産業界が主張する自主的取り組みでの温暖化対策で十分という人は12%にすぎない。国民の健全な感覚こそ大切にすべきである。

◆4月2日

朝9時40分から国会の院内第15控室で自民党国会対策委員会が開かれる。この会には党の国会対策委員長・副委員長らと衆議院当選一期の議員が出席する。一期生は全員が国会対策委員という肩書きをもらっている。ここでは国会の審議日程や新たに提出された法案の簡単な説明が行われる。法案の説明は所管官庁の大臣政務官が出席し行なう。新人議員にとっては国会の現況の勉強の場になっているともいえる。本日はここで京都議定書の説明が行われる。説明役は私である。今国会にこれまで提出された外務省関係の法案・条約は今村雅弘政務官が説明してきたが、京都議定書に関しては行き掛かり上、私の役回りになった。本日は京都議定書の他に環境省所管の地球温暖化対策推進法の説明も行われる。こちらの方は奥谷通環境大臣政務官が担当となる。ちなみに外務省は私を含め三人の政務官がおり、環境省は奥谷氏のみである。いずれも衆議院当選二回組である。国会対策委員会は部会のように議論や意見交換をすることを目的とした場ではないが、質問が出ることもないではない。本日は京都議定書にも温暖化対策推進法にも特段の意見は出されなかった。

次の問題は実際の審議にいつ入れるかである。法案・条約は関連する委員会に付託されて審議されるが、重要な案件の場合はそれに先立って本会議で趣旨説明が行なわれる。本会議趣旨説明を行なうか行なわないかは議院運営委員会が決める。だが京都議定書も温暖化対策推進法も重要法案なので衆議院本会議にかけられることはまず間違いない。そのあと普通にいけば京都議定書の場合は条約なので外務委員会、温暖化対策推進法は環境委員会で審議されるはずである。「普通にいけば」と断ったのは両法案は密接に関係するので外務・環境の両委員会の連合審査になる可能性も残されているからである。 いずれにせよ衆議院本会議での趣旨説明が最初に行なわれる。今日の時点では両法案とも12日の本会議で趣旨説明という話も流れている。だが国会日程ほど当てにならないものはない。我々としても審議促進に努力する必要がある。

本日午後1時から40分行なわれた本会議の終了後、古屋圭司・経済産業副大臣から「そろそろ情報開示について答えを出すから」という話を聞いた。情報公開請求の行方について新たな話を聞くのは久し振りである。

京都議定書を国会に提出するまでの間、自民党内にはかなり強い外務省批判があった。その背景には「条約を勝手に結んできても苦労するのは我々だ。外務省はその苦労が分かっていない」という不満があったようだ。だが本日、テーマが変われば立場が変わると思うことがあった。放射性物質の海上輸送についてである。午後、外務省内で科学原子力課からこの問題についてブリーフを受けた。原子力発電所からは使用済み燃料が出る。この使用済み燃料にはプルトニウムが含まれており、これを取り出せば再び燃料として使うことができる。使用済み燃料から有用部分を取り出す作業を再処理というが、日本は使用済み燃料はすべて再処理することを国策としている。ところが日本国内には再処理のための施設がまだない。そこで使用済み燃料はイギリスかフランスに送り、ここで再処理してもらっている。ここで有用部分と不要部分に分別して、これらを日本に返還してもらっているのである。不要部分というのは「核のゴミ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物なので、日本に持ち帰ってきても危険なだけで使い道はない。だがゴミだけ他国に置いていくわけにもいかないので、こちらも日本に持ち帰って国内で処分することになっている。こうした輸送は往復ともに海上ルートを使っている。より正確にいうと現在では日本から欧州に運ぶことはすでにやめているが、欧州から日本に帰ってくる船便はまだ残っている。

海上輸送ルートは大きく分けて3つある。パナマ運河ルート、喜望峰・南西太平洋ルート、ホーン岬ルートである。いずれにしても積み荷は放射性物質なのだからもちろん沿岸国は喜ばない。例えばパナマ運河を通れば周辺のカリブ諸国は懸念を抱く。輸送そのものに国際法上の問題はないが、やはり沿岸国の理解を得ないといけない。つまり外務省としてはそれだけ努力をしなければならない。経済産業省や電力会社が核燃料サイクル・全量再処理という方針を続けば続けるほど外交的なコストがかかるとも言える。どうやらテーマによっては外務省側が「我々の苦労を分かっていない」と言いたくなる時もあるようである。

ちなみに私は原発そのものには反対しないが、再処理するという方針には疑問を持っている。最初から再処理という選択肢を採らなければ海上輸送の問題も起きなかった。しかしひとたび海上輸送をする以上は安全に運ぶ必要がある。政府として安全輸送と沿岸国の理解を得るための努力を惜しんではならないと思う。 ただ現行の原子力政策のもとでそういう外交上の負担があるということを電力会社や経済産業省側にも理解はしてもらいたい。

◆4月4日

本会議終了後、自民党の大臣政務官が院内第15控室に招集される。国会対策委員長・副委員長から法案成立のために政務官は努力しろという指示を受ける。法案の円滑な審議のためには野党の協力も必要となる。平たくいえば政務官はそのために汗をかけということである。この話になると外務省の政務官としては肩身の狭い思いがする。他省庁の法案に比べても外務省関係の条約の審議が遅れているのは事実だからである。 外務省は今国会に2本の法案と18本の条約を出している(条約のうち3本は未提出なのでこの時点では15本)。法案2本はすでに成立しているが、条約の審議は遅々として進んでいない。成立したものはもちろんなければ、審議に入ったものでさえわずか3本である。今国会中も外務省はNGO排除問題、田中外相更迭、ムネオハウス等々、話題に事欠かなかった。 その分、本来審議すべき条約が委員会でもなおざりになっている。京都議定書もまだ審議入りの目途が立っていない。政務官としてはなんとかしなければならないと自戒する。

資源エネルギー庁の川上敏寛・省エネルギー対策課課長補佐が議員会館に来る。私が2月1日に行なった情報公開請求への対応について説明を受ける。開示できるものは開示するという発表がそろそろ出されるのは間違いないようである。公開請求をした企業のうちだいたい半分くらいは全部開示しても構わないと言っているようだが、中には開示されては困るという企業もあるという。そういう会社にはなぜ困るのかということを各経済産業局で照会しているらしい。開示決定の遅れはそのあたりに時間を取られているためだという。

◆4月5日

午後7時15分から2時間半にわたり環境省内で気候変動に関する日米ハイレベル協議が開かれる。これは日米の閣僚級の協議で昨年7月に第1回目が開かれており、今回が第2回目になる。出席者は日本側が環境省の大木浩大臣、外務省から朝海和夫・地球環境担当大使、その他経済産業省、農水省、国土交通省の事務方などである。アメリカ側がドブリアンスキー国務次官、コノートン環境評議会議長、他に環境保護庁からの出席もある。私は参加していないが、週明けの8日に岡庭健・外務省気候変動枠組み条約室長から報告を受ける。また会議についての記録も読む。

詳細を明らかにすることはできないが、大木大臣は米国の京都議定書への参加問題について踏み込んで発言している。少なくとも2月18日の日米首脳会談で小泉首相が表明した「米国の建設的な提案を評価する」という姿勢にとどまっているわけではない。もう少し主張すべきことをきちんと主張している。だが米国側の態度は硬そうだ。気候変動枠組み条約の締約国として交渉には参加するが議定書には参加しないという構えである。「議定書に入れ」「入らない」と押し問答をしているだけでは埒があかないのでその他の実務的な話にもなる。ここでも産業界に排出削減を強制することに反対する経済産業省の姿勢が目についた。強制に反対するだけならともかく強制を想起させるあらゆることに反対するのだからたまらない。

◆4月8日

本日11時に外務省内で第1回省内国会対策会議を開催する予定になっていた。これは条約審議のための大臣政務官と官房長、総括審議官らの作戦会議のようなものである。ある事情でこの会議は延期されたが、私は省内の国会担当者と審議状況を分析する。京都議定書については与党側は温暖化対策推進法と共に12日の本会議での趣旨説明を求めているが、野党側が難色を示している。重要法案を一緒に趣旨説明するのは無理があるから別々にやれということらしい。 そのため温暖化対策推進法の趣旨説明が先に行なわれ、京都議定書が後日になりそうな雰囲気になってきている。もっとも複数の重要法案の趣旨説明を同日に行なった例は過去にもある。地球温暖化対策推進法と京都議定書は極めて密接な関係にある。そもそも京都議定書の内容を国内的に担保するのが温暖化対策推進法という位置づけなのである。一緒に審議する方がよっぽど合理的と思うのだが、国会日程はそんなに理屈通りには進まない。

野党側は政府・与党に対し様々な要求を突き付けている。外務省関係でいえば鈴木宗男疑惑に関する資料請求や東郷和彦オランダ大使の参考人招致などである。あまりにも国会審議がすんなりと進むと交渉の駆け引きの道具がなくなってしまうと思っているのだろう。我々としても道理の通る要求にはできる限り誠実に対応したい。それを理解してもらって京都議定書の早期審議入りに協力してもらいたい。

本日、各経済産業局から「行政文書開示決定通知書」が郵送されてきた。私が請求した文書のうち一部について部分開示を決定したことになる。だが資料そのものがまだ出てきたわけではない。通知書の別表に掲げられているのは開示できる文書の一覧である。実際に資料を入手するためにはこの別表に基づいて新たに請求することになる。この時点ではまだどこが不開示になるかもよく分からない。情報公開請求から2か月待って、開示できるメニューリストがやっと出てきたということになる。今からメニューに基づいて注文するというわけだ。なかなか手続きがややこしい。

以下、代表的なものとして関東経済産業局から来た通知書の内容を掲載する。

平成14・03・28公開関東第3号        平成14年4月5日

行政文書開示決定通知書

水野賢一事務所様

関東経済産業局長 名尾良泰

平成14年2月4日付けで、別添(写し)のとおり請求を受け付けました行政文書の開示請求について、下記のとおり、その一部を行政機関の保有する情報の公開に関する法律第9条第1項の規定に基づき開示することとしましたので通知します。

また、残りの文書については、平成14年8月5日までに決定を行い通知します。

なお、開示決定をした行政文書の開示の実施の方法等の申出については、この通知書を受け取った日から30日以内に、同封した「行政文書の開示の実施方法等申出書」によって行ってください。また、「行政文書の開示の実施方法等申出書」は開示を受ける希望日の7日前までには当方に届くようにご提出願います。

1 開示する行政文書の名称

エネルギーの使用の合理化に関する法律第11条に基づく定期報告書(平成12年度実績分で、様式第4及び第5の第2票以下を除く)[開示する定期報告書に係る第一種エネルギー管理指定工場の名称を別表1に示します。]

2 不開示とした部分とその理由

別表2に示します。

※この決定に不服がある場合は、この決定があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定に基づき、経済産業大臣に対して審査請求をすることができます。

3 開示の実施の方法等

(1)開示の実施の方法等 ※同封の説明事項も必ずお読みください。

別表3に記載した開示の実施の方法から希望する方法を選択することができます。

【別表3全ての行政文書を開示する場合の基本額合計】

①閲覧 300円

②複写機により複写したものの交付 4380円

(注)上記基本額は、同一開示方法ごとに数量を合計した上で算出していますので個々の行政文書ごとの基本額の合計と必ずしも一致しません。

※開示実施手数料は、基本額(複数の実施方法を選択した場合は、それぞれの合計額)が300円までは無料、300円を超えた場合は、基本額から300円を差し引いた額となります。(上記の場合、①閲覧の場合は無料、②複写機により複写したものの交付の場合は4080円となります。)

以下、細かな手続きなので省略する。

肝心の別表1という開示されるものは、次のようになっている。

・東京電力株式会社 鹿島火力発電所の熱管理に関するもの

・東京電力株式会社 鹿島火力発電所の電気管理に関するもの

・鹿島共同火力株式会社 鹿島共同発電所の熱管理に関するもの

・鹿島共同火力株式会社 鹿島共同発電所の電気管理に関するもの

・株式会社日立製作所 日立事業所 日立勝田発電所の熱管理に関するもの

・株式会社日立製作所 日立事業所 日立勝田発電所の電気管理に関するもの

・東京電力株式会社 玉原発電所の電気管理に関するもの

このような調子で158項目が続く。冒頭に発電所が集中しているだけで、その他、東京ガスもあればNECもあれば森永乳業もカルピスもある。

別表2の「不開示とした部分とその理由」というのが気になるところである。これを引用すると158のすべての文書に関して「①氏名、職名及び印影については、特定の個人を識別することができる情報が記録されており、法第5条第1号に該当するため、これらの情報が記録されている部分を不開示とした。②民間企業の印影については、法人に関する情報であり、法第5条第2号イに該当するため、これらの情報が記録されている部分を不開示とした」とある。

本日、私のところに郵送されてきたのは関東経済産業局の他に、北海道経済産業局、東北経済産業局、中部経済産業局、近畿経済産業局、四国経済産業局、九州経済産業局からの通知である。いずれも内容は大同小異といえる。

◆4月10日

中国経済産業局からも通知が簡易書留で届いたのでこれで8経済産業局からの通知がすべてそろった。今後はこれらをどのように扱うかが問題である。明日から東チモールに出張するので帰ってきたらゆっくり考えよう。

衆議院外務委員会の野党筆頭理事の中川正春議員(民主党)に京都議定書の早期審議入りを要望する。昨日も同様のことをお願いした。中川氏も決して後ろ向きなわけではない。「環境問題はむしろ我々野党の方が熱心だから」と言っていた。本日の外務委員会理事会でも京都議定書の審議入りについて言及してくれている。ただ審議入りするためには自分たちの要求にも外務省がきちんと応えてほしいという意向はあるようだ。私の方からは8~9月の環境開発サミット(WSSD)に間に合わせる必要があるという日程上の問題も説明した。

午後、第1回省内国会対策会議が開かれる。当初は8日の予定だったが本日に延期されていた。衆議院外務委員会の定例日は毎週、水、金の二日だが、外務省側としては二日とも条約審議に充ててもらいたい。ところが野党側は一日が条約審議で、もう一日は一般質疑(外交や国際情勢一般についての質疑)にすべきだと主張している。こうなると審議ペースが遅くなってしまう。このあたりの状況分析をした。

本日の議院運営委員会の様子などを聞くと12日は本会議そのものが開かれなくなりそうだ。つまり同日と思われていた温暖化対策推進法の趣旨説明も延期ということになる(実際、12日には本会議は開催されなかった)。

◆4月11日

本日から15日まで四泊五日で東チモールに公務出張になる。東チモールはインドネシアに支配されていたが5月20日に独立する。21世紀になって初の独立国誕生である。現地に展開しているPKOには自衛隊も参加している。また初代大統領を選ぶ選挙が4月14日に実施される。その選挙監視要員としても日本から8名が参加する。私も現地で彼らと共に投票所を見ることになっている。

朝、成田空港に向かう途中、環境省の奥谷通政務官に電話をする。温暖化対策推進法の本会議趣旨説明は18日になりそうだということを聞く。私の方からは京都議定書・温暖化対策推進法を外務委員会・環境委員会の連合審査にすることは外務省としては望んでいないことを伝えた。これは純粋に国会の審議日程上の都合である。もっとも京都議定書の遅れにより両法案の審議入りの時期にズレが生じたため、わざわざ伝えるまでもなく連合審査にはなりそうにないが…。 それにしても国内担保法である温暖化対策推進法が京都議定書に先立って審議されるのは論理的には首を傾げざるをえない点もある。

◆4月16日

衆議院本会議の定例日は火、木、金である。今日以降連休までに開催される可能性があるのは5日間ということになる。自民党国会対策委員会の話によると今後の審議予定は次のようになりそうである。

18日(木)…温暖化対策推進法の趣旨説明

19日(金)…健康保険法の趣旨説明

23日(火)…園遊会があるので開催しない方向で調整中。仮に開催しても委員会で可決された法案を処理するだけで重要法案の趣旨説明を行なうことはしない。

25日(木)…有事法制の趣旨説明

26日(金)…個人情報保護法案の趣旨説明

cf. 25日と26日の予定は入れ替わることもありえる

この分だと連休前に京都議定書の審議入りは難しいようだ。だが連休後になると有事法制の審議が連日行なわれることになる。これは特別委員会を設置して審議する予定だが、おそらく外務大臣はこちらに出席しなければならなくなる。そうなると外務委員会の審議時間が取りづらくなり、条約審議も進まなくなる恐れがある。このあたりが深刻な問題である。

外務省の省議のあとで植竹繁雄・杉浦正健の両副大臣、今村政務官と私、さらに北島信一官房長、坂場三男官房総括審議官、粗信仁官房参事官で国会対策の打ち合わせ。18本の条約の重要度についても議論する。いずれの条約も重要なのだが、自ずから優先順位というものがある。内々、4段階に分ける。京都議定書はもちろん最優先のうちの一つである。

午前中、ロシアのパノフ大使が外務省にやってきた。私の方からは京都議定書をロシアが早期に批准するように要望した。

夕方、川口順子外相と大臣室で話した時、大臣も京都議定書の審議入りの遅れについて心配されていた。

◆4月18日

ついに本日、衆議院本会議で温暖化対策推進法改正案の趣旨説明と質疑が行なわれる。3月7日の項などで詳しく述べたが、私の立場は「京都議定書の批准は積極的に賛成」「温暖化対策推進法の改正案は不十分だと思いつつも改正されないよりはましなので賛成」というものである。特に温暖化対策推進法改正案に企業に対するCO2排出量公表義務が盛り込まれていない点には大いに不満を持っている。それでもここに至るまでの曲折を思えば「やっとここまできた」という感慨はある。

大木浩環境大臣が趣旨説明をした後、鮫島宗明(民主党)、樋高剛(自由党)、藤木洋子(共産党)の各氏による質疑が続く。 本会議の所要時間は1時間45分だった。鮫島議員の質問はなかなかユーモアがあって他党ながら面白かった。森林吸収枠は詐欺的な計算方法だという部分も説得力があった。私がかねてから主張している各事業所にCO2の排出量を把握・報告の義務を課すべきだということは藤木氏だけが触れた。私は共産党嫌いでは人後に落ちないつもりだが、この点だけは賛成できる。 政府がCO2等の排出抑制実行計画を未だに作成していない点を問題にした人はいなかった。

それにしても本会議の空席が目についた。小泉首相はそもそも本会議に出ていなかった。各党党首級も質疑の後半になるとほとんど姿を消した。民主党・鳩山由紀夫代表はいたが、公明党・神崎武法代表、自由党・小沢一郎党首、社民党・土井たか子党首、保守党・野田毅党首らは軒並み、出席の印として自席の木札だけは立っているが姿は見えなかった。共産党も不破哲三議長、志位和夫委員長ともにいないのだからあまり偉そうなことはいえない。

◆4月23日

連休前の衆議院外務委員会の日程がほぼ確定した。明日24日の委員会で日韓関係の2本の条約(日韓犯罪人引渡し条約と日韓投資協定)の提案理由説明をして、26日(金)に審議・採決という段取りである。結局、連休前の京都議定書審議入りはできなかった。委員会審議の前段階である本会議の趣旨説明にも入れなかった。どういう順番で審議をするかは外務省側が決めるわけではなく、委員会の理事会で決まる。政府はお願いする立場であり、決定権者ではない。 審議入りしていない条約の中では京都議定書が際立って重要度が高い。我々としては連休明けには早速この審議入りをお願いしなければならない。

◆4月25日

連休前の京都議定書審議入りは無理になったが、連休明けまもなく審議されることはほぼ間違いない雰囲気になってきた。

京都議定書については与野党ともに賛成すると思われる。ただここで少し注意を払っておかなければいけないのが附帯決議である。法案や条約を通す場合、委員会の附帯決議を付ける場合がある。附帯決議を要求するのは主に野党である。「法案は容認する。だがこの部分には留意すべきだ」というようなことを決議しろというわけである。京都議定書が審議される外務委員会でも附帯決議が付く可能性がある。そこで本日の衆議院本会議中に外務委員会の野党筆頭理事の中川正春議員の席に行き、附帯決議についての私なりの考え方を伝えておいた。中川氏のもとにも各方面から附帯決議案が寄せられているようだ。

◆4月26日

中川正春議員には本日も京都議定書の早期審議入りを頼んでおいた。そして本日、経済産業省の各経済産業局に対し行政文書の開示の実施を申し出た。2月1日に始まった情報公開の試みも新たな段階に入ってきた。この“温暖化対策日誌”も情報公開の顛末記として書き始めたはずである。それがだんだんと横道にそれて京都議定書の批准問題が中心になってきた。早期審議入りこそ外務大臣政務官としての私の職務なのでどうしてもそのことに力点を置いて書いてきたが、久しぶりに本道の情報公開の話題である。この話も少し間が空いてしまったのでこれまでの経過をもう一度整理してみたい。

・2月1日…全国の各事業所がどれだけの燃料や電気を使用しているかの資料を経済産業省に情報開示請求した。ある工場がどれだけの石炭を燃やし、重油・軽油・ガソリン・LPGなどを使っているかが分かれば、二酸化炭素の排出量が判明する。各企業には省エネ法に基づいて燃料や電気の使用量を経済産業省に報告する義務がある。つまり同省はこうした資料を保有しているわけである。それを自分たちで溜め込むのではなく広く公開しろと要求したわけである。

・3月上旬…経済産業省側から開示するか不開示にするかの決定を延期する旨の通知がある。情報公開を請求された役所は原則として30日以内に開示か不開示かの決定を行なわなければならない。ただ例外も認められている。今回はその例外措置を講じてきたことになる。

・4月上旬…一部の企業については情報開示が可能という通知が経済産業省からくる。例示をすると東京電力姉崎火力発電所、本田技研鈴鹿製作所、富士通長野工場、ヤンマーディーゼル尼崎工場、アサヒビール博多工場、京セラ鹿児島川内工場などについては可能というわけである。残りの企業については態度がまだ未定である。

こういう経緯をへて、開示が可能とされた分について本日開示の実施を申し出た。閲覧という方法もありえるが、そのためには北海道経済産業局や九州経済産業局まで出向かなければならないので、コピーを郵送してもらう方法を選択した。コピー代と郵送代は自己負担となる。8経済産業局合計でコピー代は34020円、郵送代は6020円となる。約1週間以内に、これらの企業の使用燃料・電力のデータが入手できるはずである。だがこれで終わりではない。今回開示可能とされたのはあくまでも一部企業にすぎない。その他の企業の情報が開示されるかどうかは追って連絡があるはずである。

◆5月7日

ゴールデンウィークを利用して小泉首相はオーストラリアとニュージーランドを訪問した。首脳会談では京都議定書の批准についても取り上げられた。オーストラリアのハワード首相は議定書への態度を鮮明にしていないが、米国・途上国の参加がないままの締結には消極的である。一方、ニュージーランドのクラーク首相は8月までに締結したいと明言した。ちなみにニュージーランドの場合、排出する温室効果ガスの4割以上は羊や牛がげっぷなどで出すメタンガスというのだから国それぞれである。

◆5月10日

連休明けの衆議院本会議開会は5月7日に次ぎ2回目である。ついに京都議定書の趣旨説明が行なわれる。趣旨説明を行なうのは川口順子外相だった。ただ冒頭に一昨日の瀋陽総領事館事件について外相から説明があった。この時の議場は怒号に包まれた。こうした騒然たる雰囲気の中で議定書の趣旨説明と質疑が行なわれたのは残念だった。

4月26日に行なった経済産業省への情報開示の実施申し出に対して各経済産業局から資料が届き始めている。かなり膨大な量になるのでこれについては改めて報告したいと思っている。

◆そして京都議定書の批准へ

この「温暖化対策日誌」もいよいよ最終段階に入ってきた。京都議定書の批准も近づいてきた。その国会審議の経過を振り返ってみよう。

国会で京都議定書の審議が始まったのが5月10日である。この日ついに衆議院本会議で趣旨説明・質疑が行なわれた。議定書の国内担保法である地球温暖化対策推進法改正案は4月18日に衆議院本会議で趣旨説明が行なわれ、翌19日から環境委員会で審議入りしているのでこれに遅れること約3週間である。法案にせよ条約にせよ大抵はいきなり委員会で審議され、本会議にかかるのは採決の時だけだが、重要なものに限って本会議でまず趣旨説明・質疑を行ない、それから委員会に付託される。京都議定書も重要な案件なのでそういう扱いになった。

本来ならばこのあと委員会で詳細にわたる審議が行なわれるはずなのだが、実はそうでもなかった。外務委員会での議定書の審議は5月17日の午前中の3時間だけだった。これまで一日も早い成立のために各方面に働きかけてきた私からすると不思議な気持ちである。延々と審議が行なわれ、成立が遅れるというのは避けたいところである。とはいえこれだけ重要性の高い京都議定書がほとんど審議のないままに委員会を通過してしまうのもどうかという気がする。しかもこの日の質疑は京都議定書を議題としながら実際には瀋陽総領事館事件の対応をめぐる質問ばかりだった。国会質疑というのは実際にはかなり柔軟で、法案審議と銘打ちながら他の事項を取り上げることは往々にしてある。それにしてもこの日は本題の京都議定書関連の質問があまりにも少なかった。つまり3時間の審議時間といっても議定書に関わる正味はずっと少なかった。

政務官である私は答弁に立つ場面こそなかったが、この委員会には最初から最後まで出席し、一部始終を聞いていた。ちなみに私自身、外務政務官であると同時に衆議院外務委員会の一員でもある。結局、京都議定書は5月17日の昼12時50分頃、衆議院外務委員会において全会一致で可決された。

個人的な日程をいうと同日の午後、環境団体の世界自然保護基金(WWF)の会合で講演をすることになっていた。これは「気候変動対策と企業の取り組み」と題するシンポジウムで、私は“京都議定書批准をめぐる国会の動き”との演題で話をした。この場で「数時間前に衆議院外務委員会で可決されたところです」ということが報告できたのはタイミング的に良かったと嬉しく思っている。

京都議定書の審議時間そのものは短かった。しかし裏面ではいろいろな動きがあった。外務委員会で採決する時に附帯決議をつけようという動きがあったのである。附帯決議というのは普通は野党側が要求する。法案には賛成するが、一定の条件みたいなものを附帯決議という形で課すわけである。附帯決議には法的拘束力はないが、それでも委員会の意思を示すという意味はある。今回の附帯決議の動きが異例だったのは、これが自民党から提起された点である。私の関係した範囲でこの顛末を記してみたい。

京都議定書の委員会採決を翌日に控えた5月16日の午後6時過ぎ、私が外務省の政務官室にいると環境省の奥谷通大臣政務官から電話がかかってきた。「明日の委員会の附帯決議の件はいったいどういうこと」と奥谷氏。そう言われても私の方は何のことやらよく分からなかった。奥谷政務官はさらに続けた。「まだ聞いてない?変な決議案が出てきたから環境省は上に下にの大騒ぎしてるよ。今すぐその案をFAXするから見てみてよ」。そこで送られてきたFAXを見ると確かにひどい。

決議案は三項目からなっている。

・一、法的拘束力を伴う遵守制度の導入は、京都議定書発効後の第一回締約国会合において決定されることとなっているが、その交渉において我が国は、米国の京都議定書参加が得られるまではいかなるコミットメントも行わないこと。

・二、次期約束期間に関わる交渉においては、米国の参加及び中国、インド等主要途上国の参加を確保する

こと。

・三、次期約束期間に関わる交渉においては、GDP当たりの排出量や省エネ努力の水準等、締約国の経済活動を勘案した負担の衡平性を確保すること。

いささかなりとも環境問題に取り組んでいる者ならばこんな附帯決議など飲めるわけがない。特に第三項目目のGDP当たりの排出量云々などはCO2の排出総量を削減するという京都議定書の精神とまったく相反する。まったく経団連の主張そのものである。

すぐさま外務省の国会対策を担っている坂場三男総括審議官、条約局の林景一審議官らに連絡をとり、状況の把握に努める。その結果、この日開かれた外務委員会理事懇談会で与党側筆頭理事の石破茂氏(自民党)がこの決議案を提案し、野党側も持ち帰ったことが分かった。

私も翌17日に議定書の審議採決が行なわれることは知っていたが、決議案のことはまったく聞いていなかった。省内の関係者に対しては「なぜこんな大切な話を上げてこない」ということはきつく注意しておいた。ちょうど瀋陽総領事館事件でも大臣・副大臣などへの第一報が遅いということが問題になったが、外務省の情報伝達には改善すべき点が大きい。外務委員会で起こっていることについて外務省の政務官たる私が外務省ではなく環境省側から話を聞いたというのは明らかに不自然である。

さてこの決議案だけは阻止しなければならない。まず石破茂氏に電話した。聞いてみると石破氏がこの決議案を強く主張したというわけでもなさそうである。石破氏は自民党内きっての防衛政策通である。安全保障問題ならば強い信念があるだろうが、温暖化問題にこだわりがなくてもそう不思議なことではない。「確かに私がこの案を野党に提示はしたけれども、別に私個人としては積極的にこの決議案を推奨しているわけではない。伊藤達也・経済産業部会長から連絡があって『自民党内はこの決議案でまとまっている』というから提示しただけ。私は与党筆頭理事として条約が通れば良いというそれだけだから」と石破氏。翌日、伊藤達也氏に聞くと「議論のたたき台として案は出したが、まさかこれがそのまま自民党案として提示されるとは思っていなかった」という。意思疎通の微妙な行き違いがあったというのが真相だろう。

そして両者を含む関係者の話を総合すると近藤剛参議院議員がこの決議の採択を強く働きかけたことは間違いない。近藤議員は経団連などの推薦により昨年の参議院選で初当選している。また麻生太郎政調会長の影もこの決議案の背後にちらついている。いずれにせよ私は石破氏に「どうしてもこの附帯決議を出すというならば、私は採決で反対する」ということを伝えておいた。先に述べた通り私は政務官であると同時に外務委員会委員でもあるので、起立採決の時に座ったままでいればいいわけである。

私としてもこの案が採択される可能性は極めて低いと思っていた。まず野党が反対するはずだからである。自民党でも私を含め反対論者はいる。附帯決議は全会一致が慣例である。反対の声が多い中、この決議案が採決に付されること自体、常識では考えにくい。だが油断は禁物だった。この夜、連絡をとった環境省幹部が次ように言っていた。「本来ならこんな内容の決議案ならば自民党でも党内に持ち帰れば紛糾して通らないでしょう。まして野党が認めるはずがない。だけど野党の委員でも外務委員会の現場にいる人が必ずしも環境に精通しているとは限らない。だからポテンヒットのように何かの拍子で可決されてしまうのが怖いんです」。私もまったく同感だった。

翌17日の午前中も水面下で附帯決議をめぐるやりとりは続いた。山本公一・自民党環境部会長も「この決議案は困る」ということを外務委員会理事たちに働きかけてくれた。こうした中、大勢は決まった。附帯決議は無しという方向で話が進んだ。決議案の文言を一部修正することで可決に持っていこうと模索する人もいた。しかし原案があまりにもひどい内容である以上、微修正を加えて糊塗するよりも、きれいさっぱり決議などなくしてしまった方がすっきりする。結局、12時50分に京都議定書が全会一致で可決された時には、一切の決議がつくことはなかった。

委員会で可決された京都議定書は5月21日の衆議院本会議に上程されることになった。実は私は前日の20日夕方から下関に行っていた。捕鯨問題についてのIWC総会に外務大臣政務官として出席するためだった。20日の夜は春帆楼に宿泊した。日清戦争の講和条約を伊藤博文と李鴻章が交渉したことで有名な宿である。

陽総領事館の件で日中関係に焦点が当たっている時に独特の感慨もある。欲をいうとせっかく下関まで来たので少しはゆっくりと壇ノ浦などの史跡を見学したり河豚でも食べたりしたいところである。だが本会議で京都議定書の採決とあればこれに必着で帰らなければならない。21日の朝すぐに下関を発ち、午後1時からの本会議に間に合うように帰京した。本会議では「異議なし」の声のもと全会一致で可決された。ようやくここまで辿りついたとの感がある。

一方、環境委員会で審議されていた地球温暖化対策推進法改正案は5月21日朝の委員会で全会一致で可決され、この同じ本会議に上程された。これまた全会一致の可決だった。こちらは委員会採決の時に野党側が修正案を出している。一定規模以上の事業者に温室効果ガス排出抑制のための計画策定と排出実績の公表を義務づけるというものである。なかなか良い修正案だとは思うが賛成少数で否決されている。ちなみに私は環境委員ではないのでこの採決には参加していない。

修正案が否決された代わりに環境委員会では10項目の附帯決議がついた。これは外務委員会の場合と違い、意味のある決議だった。特にその第4項目目は「実効ある地球温暖化対策を推進する上で、各主体毎の温室効果ガスの排出量の把握が重要となることから、国及び各地方公共団体、事業者等からの温室効果ガス排出量の把握、公表及び評価のあり方について検討を進め、必要な措置を講ずること」というものであり、これは私が日頃から唱えていることと重なる。

ともあれこれで京都議定書批准に向けて大きな山は越えた。条約については憲法で衆議院の議決の優越が定められているからである。衆議院さえ通過すればあとは参議院が議決しなくても30日経てば成立する。これがいわゆる自然成立である。つまり条約である京都議定書はこれでどんなに遅くても1か月後には国会承認されたということになる。参議院でも可決されることは間違いない。

そんな中、唯一心配なのは余計な附帯決議である。衆議院の時のような気苦労は繰り返したくない。まして衆議院の時はいざとなれば「(起立採決時に)私は立たない」と言って身を挺して反対もできるが、私は参議院には籍がないのでそういうこともできない。しかも参議院の審議時期には私は国内にいない。外務政務官として5月27日から6月1日までAPECの会合に出席するためにメキシコに行くことになっている。そこで「変な決議はくれぐれも認めないでくださいね」ということを参議院外交防衛委員会理事の山本一太氏など要路には頼んでおいた。

幸いにして私が不在の間も参議院の日程も順調に進んだ。

京都議定書の審議は次の通りだった。

5月24日 参議院本会議で趣旨説明・質疑

5月28日 外交防衛委員会で提案理由説明

5月30日 外交防衛委員会で質疑・採決(全会一致で可決)

5月31日 参議院本会議で可決(賛成229/0反対)

cf. 参議院本会議は押しボタン式なので票数が 明示される

心配していた附帯決議はなかった。

他方、地球温暖化対策推進法改正案の審議は以下 の順序をたどった。

5月22日 参議院本会議で趣旨説明・質疑

5月23日 環境委員会で提案理由説明

5月29日 環境委員会で質疑

5月30日 環境委員会で質疑・採決(全会一致で可決)

5月31日 参議院本会議で可決・成立 (賛成228/0反対)

こちらは衆議院の時と同様のまともな附帯決議がついている。

これで京都議定書関連の国会審議はすべて終了した。後は6月4日の閣議で京都議定書を受諾することが決定され、同日ニューヨークの佐藤行雄国連大使が国連事務総長宛に京都議定書の受諾書を寄託した。これで批准の手続きは完了した。ついに日本も京都議定書の締約国になった。74か国目である。米国に加えロシアやカナダなどの批准の遅れのため、当初期待されていたヨハネスブルク・サミットまでの発効は絶望的になった。しかし日本が締約国になったことは間違いなく大きな前進である。外務政務官として京都議定書批准という重要課題に直接関与できたことを嬉しく思っている。

*なお経済産業省への情報開示請求の行方については現在執筆中の「経済産業省への挑戦状(完結編)」で述べる予定です。

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