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けんいちブログ

『台湾訪問を希望』との報道について

2002年08月12日

『台湾訪問を希望』との報道について

このままでいいのか日本外交。抗議のため外務大臣政務官を辞任する直前に書いた憂国の論文。

私が台湾訪問を希望したということが報道されております。この件について多くの問い合わせをいただいていますので自分自身の考えを述べておきたいと思います。

私が外務大臣政務官として今夏に台湾を訪問することを企図し、それが外務省内で却下されたというのは事実です。まず訪台の狙いについて記したいと思います。台湾は日本にとって地理的にも近接した極めて重要な隣人です。経済関係の深さはいうまでもありません。さらに90年代に入り台湾の民主化は大いに進展し、自由や民主主義を奉じるという点でも我が国と共通の価値観をもっています。こうした台湾との関係を深めるというのはごく自然なことといえます。 時あたかも今年は日中国交正常化30周年にあたります。これは裏を返せば日本と台湾が断交してから30年ということに他なりません。正規の外交関係がないとはいえ、重要なパートナーとして歩んでいくという日本の意思を示すためにも外務省の一員として訪問するのは時宜を得たことだと考えたのです。

外務省には現在、大臣の下に副大臣二名、大臣政務官が三名おり、いずれも国会議員が勤めています。三名の政務官はそれぞれ担当地域を受け持つ形を取っています。具体的にいえば今村雅弘政務官が南北アメリカとアフリカ・南西アジア、松浪健四郎政務官が中東・中央アジア・ヨーロッパ、そして私が東アジア・ロシア・オセアニアとなっております。つまり中国・台湾は私の担当ということになります。それだけに自分が行くことがまさに政務官在任中の使命であると思ったわけです。

台湾を訪問すると中国が反発するのではないかと懸念する人がいます。日中関係が大切だということは言うまでもありません。しかしそれが台湾の切り捨ての上に立脚するものであってはならないのです。 台湾は人口2000万を超え、経済力もフィリピンやマレーシアを大きく上回る規模を誇っています。台湾という実態が現実に存在するにもかかわらず、あたかも存在しないかのように扱うことが正しい日本外交のあり方とは思えません。中国との関係は大切にしつつ、同時に台湾とも親善を進めるというのがあるべき姿です。 かつてドイツは東西に分裂していました。日本は西ドイツとは同じ自由主義陣営の国として友好関係にありました。しかし同時に東ドイツともきちんと外交関係を樹立していました。 日本政府の人間が東ドイツを訪問するからといって西ドイツが抗議するなどということはなかったのです。中国にもそうした寛容の姿勢を求めたいものです。

朝鮮半島も分断状況にあります。日本と韓国は1965年以来、外交関係を発展させています。その一方、日本政府は北朝鮮とも国交正常化交渉を続けています。しかもその北朝鮮は日本人を拉致し、ミサイルを発射し、核開発の疑惑まであるような国です。そういう国とでさえ外交的な接触をしているのです。これに対し台湾は拉致事件を起こしているわけでもなければ、ミサイルを撃ってきたわけでもありません。どうしてその台湾と政府レベルの接触をしてはならないのでしょうか。

もし中国が反発するというのであれば、そういう中国に対してこそ毅然として日本の言い分を主張すべきなのです。東西両ドイツと仲良くしていたように、台湾海峡の両岸とも友好関係を構築することが大切なのです。少なくとも台湾と友誼を結ぶことを中国側にとやかく言われる筋合いのものではありません。

政務官が台湾を訪問するとなればこれまでの日中・日台関係の転機となりうべき事態です。 それだけに台湾訪問に対し反対する意見があるのは当然でしょう。賛否両論があるのは世の常だからです。しかしそれならば訪台の可否についてしっかりと議論を行なうべきなのです。外務省では省議と呼ばれる幹部会があります。私は省議を招集し訪台問題をそこでの議題にすることを川口順子外相に求めました。残念ながら省議の開催は見送られそうな雰囲気です。省議による議論のないままに訪台拒否という結論だけが出されているのが実情です。本来、重要な問題であればあるほど徹底した議論を尽くすべきではないでしょうか。一片の決裁書によってこうした重大事が否決されるというのは得心がいきません。 私としてはあくまでも省議という公式の場で十分な議論を行なうことを求めているところです。

実を言えば過去に政府要人が台湾を訪問した例は皆無ではありません。近い例を取れば、昨年8月には厚生労働政務官だった佐藤勉衆議院議員が訪問し、今年1月には古屋圭司経済産業副大臣が葬儀への出席を名目に訪台しています。そうした中で何故外務省の場合は台湾に訪問できないのでしょうか。こうしたことをしっかりと議論するためにも省議が必要になってくると思います。

今、外務省改革ということが盛んに言われています。その目玉として大使への民間人の登用や組織改編など様々なことがあげられています。これらはもちろん大切なことです。しかし外務省改革という時に日本外交のあり方そのものを問い直すことは避けて通れません。本当に大切なのは外交改革なのです。そのためには政策についての徹底した討論が必要です。議論を封殺してしまっては改革の旗印が泣こうというものです。とりわけ中国関係については国民は高い関心を持っています。瀋陽総領事館事件の対応、対中ODAの必要性などは十分に検証しなければなりません。そうした一環として台湾訪問も闊達な議論が求められるところです。

「訪台に政務官としての進退をかけている」との報道もありました。現在政務官という政府の一員である以上、私がまず第一になすべきことは政府の方針に自分の意向を反映させるべく最大限の努力を傾けることだと思っています。そのためにも省議を開催し、訴えていきたいという意向を持っています。しかし努力はしたが、万策尽き果てたということもありえます。現にいまのところ台湾訪問は却下され、省議の開催さえ拒否されています。自説がまったく反映されないということであれば、やはりその政府の職に止まっていることはできないと思っております。自らの信念に反してまで政務官という職に恋々とするつもりはありません。

最後に誤解のないように付け加えておけば、私自身は川口外務大臣に対しては個人的には常に敬意を持ち続けております。僣越ながら強く親近感も抱いています。それは今なおまったく変わりありません。ただ残念ながら今回の一件についての考え方が違うというだけのことです。まずは意見の相違を埋めるべく努力をし、訪台を実現させたいと考えております。

今はまだ日台間に政府関係者の自由な往来がありません。しかし制約なく往来できる日がそう遠くない将来にくると信じています。またそうなるべきなのです。今回の行動がそのための第一歩になればと考えています。多くの方々に心情をご理解いただければ幸いに存じます。

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