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けんいちブログ

不法投棄撤去のために

2002.12.24

「不法投棄撤去のために」
許すまじ不法投棄!その撤去に向けて産廃投棄全国ワースト1位の千葉からの提言

◆産廃撤去のための議連発足
「若手議員による廃棄物不法投棄撤去を推進する会」という議員連盟が11月に発足した。不法投棄は全国各地で大きな社会問題になっている。そこで若手議員が立ち上がった。政界で若手という場合、年齢ではなく当選回数を指すことが多い。この会には衆議院 当選1~2期、参議院当選1回の自民党議員が参加している。 代表には奥谷通・前環境大臣政務官(衆議院2期)、幹事長に木村太郎衆議院議員(2期)、事務局長に松野博一衆議院議員(1期)が就任し、私も創立メンバーの一人になっている。現在までのところ27名の議員が入会している。

これまでにも廃棄物問題に関する議員の会はあるにはあった。だがそれは関係業者との意見交換などを狙いとするものだった。今回発足したこの会の特徴は、力点を不法投棄の撤去に置いた点である。

◆蓄積される不法投棄
平成12年度に不法投棄された産業廃棄物は全国で40万3千トンに上った。前年度よりはやや減ったとはいえ、それでも膨大な量である。ちなみに県別に見ると私の住む千葉県が全国最悪で12万1千トンになっている。しかもその多くは県外で排出されたものが越境してくるのだから質が悪い。

こうした不法投棄をなくすためには様々な側面からの取り組みが必要になってくる。まず罰則の強化である。実はこれはかなり厳しくなってきた。不法投棄の罰則は平成3年までは「3月以下の懲役又は20万円以下の罰金」だったのに対し、現在では「5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金」になっている。また監視・パトロール体制の強化も必要だろう。これらの施策によって今後の不法投棄を未然に防止することが肝要である。

それに加えて過去の不法投棄をどう処理するかということも重要な課題である。全国各地に不法投棄の山があり、○○富士などと嘆息まじりに呼ばれている実態がある。千葉県を例にとると、首都高速湾岸線で東京から千葉に入り、千鳥町出口を過ぎるとまもなく左手に不法投棄の山「行徳富士」が目にとまる。このようにすでに捨てられてしまった産業廃棄物の撤去も必要である。

平成12年度の不法投棄40万3千トンのうち原状回復に着手されたものが16万3千トンである。逆にいえば残る24万トンは未処理のまま放置されている。つまりこれだけの量が蓄積されていくことになる。昨年6月に環境省が全国のゴミの山の実態を調査した。それによると問題になっている廃棄物は全国に1261万トンもある(うち産業廃棄物1214万トン、一般廃棄物47万トン)。ちなみにこの統計には量が不明なゴミの山は含まれていないので、実際の投棄量はこれを大きく上回ることは確実である。

産業廃棄物の撤去はガレキなどで1トンあたり1~1.5万円とされる。有害物質が含まれていれば2?3万円になる。つまり全国の不法投棄を一掃すると数千億円の費用がかかることは間違いない。

(注)この稿を書き上げた後、平成13年度の産業廃棄物の不法投棄量が発表された。12年度よりは大幅に減少し全国で24万2千トン、千葉県は4万8千トンだった。
①千葉県 47731
②岩手県 36481
③茨城県 25501
(単位・トン)
また24万2千トンのうち原状回復に着手されたものは14万1千トンである。

◆誰が撤去すべきなのか
さてこうした不法投棄は誰が撤去すべきなのか。撤去費用は誰が負担すべきなのか。不法投棄で一番悪いのは原因者である。つまり不法投棄に関与した人間が処理するのが当然である。 現在の廃棄物処理法でも投棄者・注意義務違反の排出事業者・土地所有者などに責任を負わせている。

だが残念ながら原因者が不明の場合がある。もしくは原因者が明らかでも財力・資力がないこともある。倒産しているなどの例がこれにあたる。だからといって放っておくわけにもいかない。 産業廃棄物にはダイオキシン、PCB、カドミウムなどの有害物質が含まれていることが多い。地下水汚染も懸念される。

そういう場合には原因者に代わって都道府県が撤去することができる。これが代執行と呼ばれ、廃棄物処理法第19条に規定されている。とはいえ都道府県もあまりこれをやりたがらない。 費用がかかるからである。例えば千葉県市原市福増の不法投棄は県内最大規模であり、今年5月には廃棄物処理法違反で5名の逮捕者を出しているが、このゴミの山の撤去には約80億円くらいかかると見込まれている。莫大な出費に都道府県も尻込みしてしまう。しかも不法投棄の撤去というのはあくまでも片付けであって、公共事業のように資産が後々まで残るわけでもない。そこでどうしても消極的になってしまう。本当はこうした負の遺産をなくすことも大切なのだが、都道府県がなかなか重い腰を上げないのが実状だった。

◆不十分な支援策
そこで都道府県を後押しするために平成9年に廃棄物処理法が改正され、国と産業界が資金面で支援することになった。まず産業廃棄物適正処理推進センターを全国に一か所設け、ここに基金を置く。この基金には国と産業界が資金を出す。そして都道府県が代執行する場合にはこの基金から費用の4分の3を出すことにした。これであれば都道府県の負担は4分の1に軽減される。そこであまり負担を気にせずに代執行に着手するようになるだろうと見込んだわけである。ちなみに基金の原資は国と産業界が1:2の割合で拠出しているので、全体の負担割合は都道府県が4分の1、国が4分の1、産業界が2分の1ということになる。こうした支援が行なわれるのは平成10年6月以降に不法投棄された産廃に限られている。それでも従来に比べれば一歩前進したとはいえる。

ところがこの基金への資金の集まりが悪い。現在の残額は9億円しかない。先の市原市のように一件80億円などというのがあれば、この基金からは4分の3、つまり60億円の支援が求められる。この程度の残額では一か所の産廃撤去にさえ足りない。実際にこの基金が資金協力をした産廃撤去はこれまでに11件あるが、小規模なものばかりだったので協力額は計8億円である。これでは全国の廃棄物の原状回復などは夢のまた夢である。

◆協力不足の産業界
なぜ資金が集まらないのか。産業界が十分な協力をしないためである。産業界は平成13年度までは年に数億円ずつの拠出をしていた。13年度の場合は、建設団体が2.8億円、自動車工業会・鉄鋼連盟がそれぞれ800万円などで合計4億円である。しかし14年度はまだ資金協力の構えを見せていない。廃棄物処理法第13条には環境大臣は「基金への出えんについて、事業者等に対し、必要な協力を求めるよう努めるものとする」と明記されている。環境大臣が産業界に協力要請することは法律上の義務なのである。ところが実際には大臣が協力を求めたことはない。潤沢な資金があるならばそれでも構わないだろう。だが現実は産業界が躊躇しているために資金不足に悩んでいるのだ。それならば一層明確に要請すべきなのである。しかもこれは法律に記されていることなのである。にもかかわらずそれが実行されてこなかったのは、いったいどういうことだろうか。産業界に対して過度に遠慮した姿がうかがえる。

そこで私は12月6日の衆議院環境委員会でこの問題を取り上げた。鈴木俊一環境大臣は私の質問に対して、要請していなかったことを認め、「今後、必要があれば事業者等に要請をしてまいりたいと思っております」と答弁した。今後は法律通り、きちんと産業界に負担を求めていくべきである。また金額も従来のような年間数億円では足りない。より大きな負担を要求すべきである。

産業界からの出捐がないと負担は国と都道府県だけにかかってくる。これはおかしな話である。確かに不法投棄の撤去は必要である。とりわけ健康に悪影響をもたらす有害物質の場合は特にそうである。国や都道府県が放置していいわけがない。だがそのすべてを税金で処理するというのは筋が違う。 不法投棄者の責任を安易に税金で穴埋めするのはモラルハザードにつながる。やはり多大な産廃を排出している産業界に一定の負担をしてもらわなければならない。それによって責任感も生まれ、廃棄物の減量化にも取り組むようになるだろう。まして平成10年6月以前に不法投棄されたものの原状回復については産業界には負担を求めていないのだ。せめて法律に明記された10年6月以降分については積極的な資金提供をしてもらわなければならない。

◆さらなる法整備に向けて
平成10年6月以降の不法投棄を都道府県が撤去する時は国と産業界が支援することになっている。支援のための基金が不足していることは前述した通りだが、少なくとも法的な制度は整っている。一方、それ以前に不法投棄されたものを撤去する時の支援策は法律上はない。だが古い不法投棄の方が量は圧倒的に多い。全国の廃棄物の山1261万トンのうち平成10年6月以降のものが164万トンなのに対し、それ以前のものが実に1085万トンと大半を占めている(投棄時期不明が12万トン)。こちらの対策も急務である。

環境省はこの部分に的を絞った新法「産業廃棄物の不適正処理に係る原状回復等の推進に関する特別措置法(仮称)」を来年にも制定したいとしている。また廃棄物処理法の改正も検討されている。処理しにくい製品を作った製造者には一定の責任を負わせる方向である。「拡大生産者責任」は時代の潮流である。歓迎すべき動きといえよう。

廃棄物不法投棄は緊急の課題である。特に国会議員は立法活動を通じて社会問題を解決するのが仕事である。私自身も志を同じくする議員と相語らいながら今後ともあるべき法整備を目指したい。そのために若手議員の会を創立したのである。今まさに我々の責任が問われている。次世代に負の遺産を残すわけにはいかないのだから。

※平成14年12月6日の衆議院環境委員会にて不法投棄問題を取り上げた(議事録を参照されたい)。その後、12月5日に「若手議員による廃棄物不法投棄撤去を推進する会」より鈴木環境大臣らに申し入れを行った。

外務省、台湾訪問解禁へ

2002.12.09

「外務省、台湾訪問解禁へ」

外務省が時代遅れの内規をついに改正。水野賢一の国会質問が冴える。『エネルギーフォーラム』誌に掲載論文。
ここ一年以上にわたって外務省は批判の集中砲火を浴びてきた。一つには機密費問題など不祥事の噴出のためである。もう一つが外交姿勢に対する批判である。とりわけ潘陽総領事館事件では中国への弱腰が叱責された。

外務省の中国への遠慮を象徴していたのが、課長以上の台湾訪問を認めないという内規だった。確かに日台間には正式の国交はない。だが国交はなくても政府首脳が訪問する例はある。今年9月の小泉首相の北朝鮮訪問などはその最たるものである。それではなぜ台湾の場合には、課長級でさえ駄目なのか。理由は実に簡単である。中国が怒るからというだけのことである。 私は以前、外務大臣政務官在職中に台湾訪問を希望した。だが中国に遠慮する外務省当局によって認められなかったため、それに抗議すべく辞任した。課長の訪台さえ認めない外務省からすれば政務官訪台など論外というところだったのだろう。

そこで私は11月22日の衆議院外務委員会でこの内規について取り上げた。答弁の中で外務省側は内規の改定を約束した。これで将来的には閣僚級の訪台への道も拓けることになった。従来の内規が定められたのは昭和55年である。20年以上経った今、時代は大きく変わった。改定は当然である。遅きに失したとはいえ一歩前進と評価できる。

だが他の部分では中国への過度の遠慮が今なお続いている。慶応大学の学園祭で講演しようとした李登輝前総統にビザを発給しなかったこともその一例である。 日中関係は大切である。だが台湾との関係もまた重要である。しかも台湾は自由や民主主義という価値観の点でも日本と共有する点が多い。東アジアの民主国家同士として今後の関係強化が求められている。
※平成14年11月22日の衆議院外務委員会の議事録を参照いただきたい。

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