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けんいちブログ

成人年齢の引き下げをどう考えるか

2008.05.01

「成人年齢の引き下げをどう考えるか」
~国民的な合意を得ることが必要~

成人年齢を引き下げるべきかどうかの議論が浮上している。この問題についてどう考えるか水野賢一衆議院議員に聞いた。

Q1 今の法律の中には20歳で大人扱いするものと18歳で大人扱いするものが両方ありますね。

水野:20歳を基準としている代表的なものが民法と公職選挙法です。民法第4条は「年齢二十歳をもって、成年とする」としていますし、公職選挙法では20歳になると選挙権が与えられます。一方、18歳で分けている法律としては、例えば普通免許の取得を18歳以上としている道路交通法があります。また児童福祉法、労働基準法も18歳を基準としていますね。最近は民法や公職選挙法の年齢制限も20歳から18歳に引き下げるべきかどうかの議論が起きています。

◆年齢に関するその他の法律
有名な“タバコとお酒は20歳から”というのはそれぞれ未成年者喫煙禁止法、未成年者飲酒禁止法という法律で決まっている。一方、風俗営業法はパチンコ店への入店を18歳以上としている。

◆民法の成人年齢が引き下げられると・・
民法は未成年者は親権者の同意なく契約(ローンなど)や結婚はできないとしている。そのため成年が18歳に引き下げられると18歳で自分自身の意思だけで契約行為や結婚が可能となる。
 
Q2 どうして引き下げの議論が浮上してきたのですか?

水野:直接のきっかけは07年に国民投票法という法律が成立したことです。この法律は憲法改正の是非を問う国民投票を実施する時には原則18歳以上を有権者とすると定めました。そして法律の附則には成人年齢を20歳と定めた民法の規定や選挙権年齢を20歳以上とした公職選挙法の規定を3年以内に再検討すると書かれています。ここから議論が急浮上してきました。

◆国民投票法とは
日本国憲法を改正する時には「衆参両院のそれぞれで3分の2の賛成→国民投票で過半数の賛成」という手統きが必要である。実際にはこれまでこの国民投票が実施されたことはなく、投票のルールさえ决まっていなかった。これを定めたのが07年に成立した国民投票法である。有権者について与党は20歳以上を主張していたが、民主党が18歳以上(例外的には16歳以上も)を唱え、結局、原則18歳以上で与野党合意した。
 
Q3 今後3年以内に民法の成人年齢などを引き下げるということですか?

水野:引き下げると決まっているわけではありません。今の段階で決まっているのは検討するということであって、その結果必要ならぱ引下げもありえるというだけです。そこで例えば法務省も民法の成人年齢を引き下げるべきかどうか審議会に諮問して今年中に答申を得ることにしています。ただ国民生活に深く関わることですから、審議会のー部の人たちだけの意見で決めるのではなく国民の間での幅広い議論が必要だと思いますね。
 
Q4 水野さん自身はどう考えていますか?

水野:議論は大いに結構だと思いますね。「18歳は精神的にまだ未熟だ」として引き下げに反対の意見もあるでしょうし、逆に「自覚や責任を促すためにも引き下げるべきだ」という声もあるでしょう。こうしたことを広く国民の間で議論すべきだと思います。ただ20歳が成人年齢というのは民法が1896年に制定されて以来、ずっと続いていることですから定着しているのも事実です。それを変えるというのであれば、社会的な合意も必要だと思います。大多数の国民が知らないうちにいつの間にか決められてしまった、などということは避けるべきでしょう。

◆諸外国の成人年齢
諸外国の成人年齢は以下の通りである。
15歳・・・イラン
18歲・・・イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ(大半の州)、中国
20歳・・・韓国、タイ、ニュージーランド
21歳・・・マレーシア
 
◆昔の日本は・・・
昔の成人式ともいうべき「元服」の慣習は奈良時代に始まったが15歳前後で元服するというのがー般的だった。なお選挙権年齢は1890年の第1回衆議院選挙は25歳だった(ただし当時は高額納税の男子のみだった)。20歲に引き下げられたのは戦後である。
 
Q5 この話は民法以外にも波及する可能性がありますよね。

水野:大いにあります。年齢条項を含んだ法律は民法、公職選挙法をはじめとして191本もあります。それだけに法律ごとに丁寧に見ていく必要もありますね。例えば少年法では20歳未満は「少年」として犯罪を犯してもかなり保護されていますが、これは18歳に引き下げてもよいのではないかと思います。逆に健康を考えれば飲酒喫煙年齢は引き上げることもありえるでしょう。いずれにせよ国民生活に深く関わる問題ですから幅広く検討することが必要ですね。

◆少年法とは
少年法は少年が非行を犯した時のことについて規定している。例えば少年犯罪は一般の刑事裁判ではなく非公開の少年審判によって処分を決めることなどを定めている。なお犯罪少年を実名報道しないことは少年法61条に定められている。

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