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けんいちブログ

原子力発電について

2012.05.24

原子力発電について
~トイレなきマンションとは?~

◆経営責任はどうなる?
 昨年に続いて2年連続で電力不足の夏になりそうだ。とはいえ昨年と今年では違いもある。昨年の供給力不足の原因は東日本大震災で発電所が甚大な被害を受けたことだった。そのため電力使用制限令が出されたのは東京電力と東北電力の管内だった。それに対して今年最も深刻な電力不足が叫ばれているのは直接の被災地ではない関西電力管内である。原子力発電所がすべて停止したためである。原発は関西地域だけでなく全国すべてで停止しているが、関西電力はとりわけ原発依存度が高かった。そのため電力需給が特に逼迫しているわけである。
 「だからこそ原発再稼働が必要だ」という声も上がっている。しかし「ちょっと待った」と言いたい。そもそも原子力発電というのはリスクが高い電源である。それを知りながら積極的に導入していたのが関西電力である。今回、それが裏目に出たことになる。そうである以上、経営者の判断が正しかったのかどうかが問われるのは当然だろう。東電幹部が事故の責任を問われるべきならば、関電幹部は経営責任を問われるべきなのである。現に原発を一基も設置していない沖縄電力は昨年も今年も電力不足とは無縁である。そうした中、安価な電源だから(本当に安価かどうかはかなり疑問があるが)と多くの原発を立地したのが関電だった。この責任を明確にしないまま再稼働の必要性だけを力説しても説得力に欠けると言わざるを得ない。

◆原発からの廃棄物
 さて関電の話から離れて今後の原発政策全体を考えてみたい。みんなの党は脱原発を打ち出している。もちろんその背景には事故の危険性ということもある。だが事故だけが原発の問題ではない。仮に安全に操業したとしても原発の稼働は確実に将来に大きなツケを残すことになる。放射性廃棄物というツケである。私自身はむしろこの点こそ原子力発電の最大の弱点だと考えている。
 原子力発電の燃料は基本的にはウランである。しかし燃料である以上、当然のことながら使えば減る。そこで約1年ごとの定期検査の時に順次取り換えている。問題はここで取り出した使用済みの燃料をどうするかである。使用済み燃料の中にはまだ利用できる有用な物質も含まれているので、それを抽出するということもありえる(これを再処理という)。それでもすべての部分が再利用できるわけでないため、いずれにしても捨てざるを得ない部分は出てくる。つまり捨て場所を確保しなければならない。
 捨てるといっても簡単な話ではない。高レベル放射性廃棄物と呼ばれる極めて強い放射性物質だからである。再処理した場合でいうと、廃棄物は液体なのでそのままにしておくのは危険である。そこでまずはガラスで固める。ちょうどステンドグラスの中の染料が何百年も色落ちせずに、外に漏れ出さないのと同じ状態にするわけである。そしてガラスで固めた放射性物質はキャニスターと呼ばれる高さ1.3mくらいのステンレス製の容器に入れて廃棄することになっている。

◆決まらない捨て場所
 問題はこの捨て場所である。キャニスターの表面近くにいると約20秒で致死量の放射線を浴びるため、とても普通に捨てるわけにはいかない。結局、地下深くに埋めて隔離することまでは決まっている。2000年に成立した「特定放射性廃棄物最終処分法」では深さ300mよりも深いところに埋めることを定めている。
 ところが肝心のどこに埋めるかが決まっていないのである。近い将来に決まる見込みもまったくついていない。普通のゴミ処理場でも建設反対運動があるのだから、放射性廃棄物となれば当然だろう。この最後の行き場にまったく目途がついていないという点こそ原発の最大の泣き所である。このことはちょうど「トイレなきマンション」のようなものだと指摘されている。安全に操業していても必ず出てくるにもかかわらず、その捨て場が決まっていないのだから言い得て妙である。
 しかも廃棄物の危険は極めて長期にわたって続く。代表的な放射性物質であるプルトニウムの半減期は2万4千年である。子や孫の世代どころか何百世代後の人たちにまでツケを残すわけである。野田政権は「子どもたちにツケを残さない」といって消費税増税を企図している。しかしその一方で放射性廃棄物というツケを残すことへの反省はないようである。
 実は“捨て場所探し”は仮に原発をいますぐ全廃したとしてもやらなければならないことではある。日本で原発が稼働し始めてから今年で46年である。その間に溜まってきた放射性廃棄物があるからである。今はこの分は捨て場が決まらないまま溜めている状態である(放射性廃棄物は発熱するため埋める前に数十年は冷ます期間が必要だという面もあるが)。
 再稼働するということはこの核のゴミをさらに増やすということと同義である。しかし原発事故から1年余り、この処理については何の前進もない。この問題に何の目途もつけないまま「電気が足りないので再稼働させてください」というのはいかにも拙速ではないだろうか。

日曜討論に出演

2012.05.03

水野賢一事務所です。
水野賢一が『日曜討論』に出演いたしますので、
ご案内申し上げます。
2012年5月6日(日)9:00~10:00
NHK総合・ラジオ第1「日曜討論」

《主な内容》
○後半国会 今後の審判について
○社会保障と税の一体改革について
○重要法案の審議について
                     …など
ぜひ、ご覧ください。

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