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けんいちブログ

「再生可能エネルギー買取り法案―後ろ向き修正と前向き修正―」

2011.07.28

「再生可能エネルギー買取り法案
―後ろ向き修正と前向き修正―」

本日、環境委員会で質問に立った。江田五月環境大臣が就任してから初めての審議である(なお江田氏は法務大臣も兼務)。質疑ではいくつかの問題を取り上げたが、その一つが再生可能エネルギーの買取り法案である。この法案は菅首相が突如、成立に熱意を見せ、政局の焦点にもなっている。

 いくら熱意を示してもねじれ国会の中、法案は与党だけでは通らない。そこで民主党では自民党の意見を入れて修正の上、可決・成立という道を模索しているようである。一方、みんなの党も独自の修正要求を出す。

 つまり自民党の“後ろ向き修正”要求を飲んで成立を目指す方法もあれば、みんなの党の“前向き修正”要求を飲んで成立を目指す道もある、ということになる。現状の参議院の議席数を見るとどちらの手法もありえるが、どうやら民主党政権は“後ろ向き修正”の路線を歩もうとしているようである。

 報道によれば自民党の修正要求の一つが電気の大口消費者の負担を減免するというものである(現時点では党として正式にこれを要求しているわけではないようだ。あくまでも自民党内にそうした声が根強くあるというのが正しい表現のようだが)。「コストが高い再生可能エネルギーが普及すると電気代が上がる」→「そうなると電力多消費産業が困る」→「だからそうした企業の負担は軽減すべきだ」という論法らしい。

 電力多消費産業といえば電炉、製紙、化学などである。しかし具体的にどの会社がどれくらい使っているのか。その点を本日の委員会で質問した。実は政府(厳密には経済産業省)は大口需要家の電力使用量を把握している。省エネ法という法律で大口需要家からは電力や石炭や重油の使用量の報告を受けているからだ。

答弁によると「平成20年度の場合、電力使用量が最も多い事業所は大王製紙三島工場で年間31億6千万kwh」ということである。ちなみに環境省が入っている霞ヶ関の庁舎は中央合同庁舎と呼ばれる26階建てのオフィスビルだが、ここが1816万kwhだから、その174倍になる。

 ところが、実はこの大王製紙の工場が全国一とは限らない。なぜならば国がデータを開示していない事業所が多いからである。これらの中にも電気を大量に消費しているところもあるはずである。本日の答弁によると、なんと501もの事業所について使用電力量の開示を拒否している。当該企業が「企業秘密だから不開示にしてくれ」と言うと、その言いなりになっているわけである。

 製品の作り方のノウハウが秘密だというならばまだ分かる。電気使用量がなんで企業秘密なのかよく分からないが、それにしても、どれだけ使っているかというデータさえ示さないまま減免するなどという理屈は通らない。使用量(特に大口の)というのは電力問題を考える上での基礎データである。こうした資料を隠し続ける経済産業省も経済産業省だが、データ開示を求めないまま「業界が困っているから何とかして」と言う自民党族議員も族議員である。

 大口需要家を減免すれば、その分家庭など小口の負担が増える可能性が高い。だからこそ私自身はそもそも大口需要家を特別扱いすること自体に反対である。だが百歩譲って、もしそうするならば徹底した情報開示は大前提である。それも要求せずに業界利益のために出てくる修正案は「後ろ向き修正案」と呼ばざるをえない。

 一方、みんなの党の提唱しているのは「前向き修正案」である。再生可能エネルギー買取りを義務化するなら、同時に電力自由化も推進すべきだというものである。再生可能エネルギーの普及が電気料金アップにつながるのは事実である(電気料金値上げにつながる要因は他にもたくさんあるので、再生可能エネルギーだけをあげつらうのはおかしいと思うが)。それだけに電気料金を安くする施策、つまり自由化や競争の促進も平行して進めるのである。地域独占の打破や発送電の分離の推進ともいえる。

 「後ろ向き修正」と「前向き修正」のどちらの路線を選択するか。菅首相のこの問題にかける本気度が問われている。

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