けんいちブログ

「渡辺喜美代表はなぜ党首討論に参加できないのか」

2011.11.30

渡辺喜美代表はなぜ党首討論に参加できないのか

54回目の党首討論
 11月30日午後3時から党首討論(クエスチョンタイム)が行なわれる。野田佳彦政権が誕生してから初の党首討論である。党首討論という制度は平成12年2月から始まった。第1回目は小渕恵三首相と鳩山由紀夫(民主党)、不破哲三(共産党)、土井たか子(社民党)の各党首の間での論戦だった。今回の討論は通算で54回目となる。
 さて野田佳彦首相に質疑をするのは谷垣禎一自民党総裁と山口那津男公明党代表の二人になる。渡辺喜美みんなの党代表は入っていない。小政党だから参加資格がないのだろうと思う人もいるかもしれない。しかし実はそうではない。参加資格を満たす議席数は持っているのである。

参加資格の議席数を持つみんなの党
 党首討論の参加資格は“衆参いずれかの院で10名以上の議席を有する野党”ということになっている。このことは制度発足当初の平成12年2月16日の国家基本政策委員会合同審査会両院合同幹事会の申し合わせで決まっている。不破哲三氏や土井たか子氏が参加できたのも当時は共産党、社民党にそれだけの議席があったからである。
 みんなの党は参議院に11名の議員がいるのでこの条件は満たしている。ではなぜ参加できないのか。一言で言えば、民主党の理不尽な妨害にあっているためである。何が起こっているかについて経緯も含めて以下詳しく述べてみたい。

権利はあるが行使できない?
 「党首討論」もしくは「クエスチョンタイム(QT)」という言葉が一般に使われている。ただこれはあくまでも通称であって正式には「国家基本政策委員会合同審査会」という。国家基本政策委員会というのは予算委員会や農林水産委員会と同じように国会にある委員会の一つである。衆参両院に国家基本政策委員会が設置されており、これが合同して委員会を開くので“合同審査会”と呼ばれるわけである。
 委員会というのはそこに所属する委員が発言するという形をとる。例えば私自身は参議院の環境委員会の委員なので、同委員会が開かれると質問に立つ。国家基本政策委員会も委員会である以上、同様である。野党党首は委員になった上で、質疑に参加することになる。
 みんなの党は参議院には11名の議席があるが、衆議院の議席は5名と少ない。そのため残念ながら衆議院国家基本政策委員会には委員の割り当てがない(参議院の同委員会には割り当てがあるが・・)。そうなると衆議院議員である渡辺喜美代表は委員になれず、発言もできないということになっている。いわば参加の権利はあるが、それを行使できない状態といえる。
 ※衆議院国家基本政策委員会の委員割り当て(定数30)
 民主党 19  自民党 7  公明党 1
 共産党  1  無所属 1  欠員  1

委員の交換
 ではどこかの政党が自分の持っている委員の席を貸してくれれば参加できるのだろうか。答えはYesである。具体的には民主党や自民党が渡辺代表の所属委員会(懲罰委員会)と交換に応じてくれればよいわけである。
 実は国会ではこうした交換・差し替えはしばしばある。例えば最近でも沖縄問題にこだわりを持つ社民党が沖縄北方特別委員会の割り当てがない時に、民主党が交換したことがある。同様に拉致問題に熱意を見せるたちあがれ日本が拉致特別委員会に委員がいなければ、自民党が交換に応じている。
 みんなの党は昨年の参議院選で躍進して議席数は11となった。党首討論への参加権があるにもかかわらず行使できないというのはあまりにもおかしい。そこでみんなの党としてはずっと委員の交換を求めていた。しかしそれに応じる党がなかったため参議院選以降3回行なわれた党首討論には参加できなかった。こうしてこの3回の党首討論はいずれも45分の持ち時間を自民党35分、公明党10分と二党だけで分け合うことになった。
 ※昨年の参議院選以降の党首討論一覧
            首相     参加野党党首
 平成23年2月9日  菅直人   谷垣禎一・山口那津男
 平成23年2月23日 菅直人   谷垣禎一・山口那津男
 平成23年6月1日  菅直人   谷垣禎一・山口那津男

委員交換を認めない!?
 変化があったのは最近のことである。自民党が自分たちの持つ衆議院国家基本政策委員会のポストと渡辺代表の懲罰委員会のポストを交換して構わないという姿勢に転じたのである。国家基本政策委員会の委員にさえなれば“衆参いずれかの院で 10名以上”という条件を満たしているみんなの党は党首討論に参加できるのは当然である。
 さらに自民党は持ち時間35分のうち5分を削ってみんなの党の持ち時間にすることも約束した。もちろん自民党側にはみんなの党に好意を示すことで、野党共闘を確かなものにしたいという狙いはあるのだろう。問責決議などでキャスティングボートを握るみんなの党の協力を取りつけたいという思惑もあるのかもしれない。とはいえ自らの持ち時間を削ることになる中で、そうした決断をした度量には感謝している。
 この場合、交換する政党同士がOKといっている以上、何の問題もなく交換されるのが普通である。先に述べた社民党の沖縄北方特別委員会などの場合も他党があれこれ言うことはまったくなかった。
 ところが、である。民主党がこの交換を認めないと言い出したのである。政党間で委員をやりとりする場合、当該政党同士が合意する必要があるのはもちろんだが、一応、議院運営委員会理事会の了承も必要とされている。その衆議院議運理事会で民主党が「認めない」という姿勢をとったわけである。
 衆議院は民主党が圧倒的な議席数を占めている。そこが認めないというのだからどうにもならない。結局「委員でない」→「だから発言権もない」という従来通りの理屈で、今回の党首討論への渡辺代表の参加は見送られた。

機が熟していない?
 しかしこんな馬鹿な話はない。先にも述べた通り、この種の問題が議運理事会にかかった場合、何の問題もなく各会派が「了解」と言うのが慣例である。交換する当事者たちがよいと言っており、なおかつ他党に迷惑をかけるわけでもない以上、当然といえば当然である。まして私たちは民主党に何かを要求したわけでも、譲歩を求めたわけではない。譲歩したとすればそれは持ち時間を削った自民党であって民主党ではない。
 それだけに民主党がなぜ反対するのか、まったく理解に苦しむ。彼らも筋の通った反対論を展開できないので「言ってくるのが遅い」とか「機が熟していない」などの意味不明な主張に終始している。
 もちろん民主党の本音は分かる。「渡辺代表が党首討論に出てくるのが嫌だ」「できるだけ邪魔してやれ」というそれだけのことである。マニフェスト違反や増税路線を舌鋒鋭く追及されるのが嫌なのである。ただ正面切ってそう主張するわけにもいかないので意味不明な言いぶりになるわけである。
 だがこんな理不尽な話はない。参加資格に足りるだけの民意を受けた政党を形式論で門前払いしようというのだから論外である。こうした不誠実な対応には断固たる覚悟で臨む必要があると考えている。
 これまでみんなの党は政策面では民主党政権を厳しく追及する一方で、「反対のための反対」「批判のための批判」とは一線を画してきたつもりである。しかし与党がこうした姿勢である以上、政局面でも違った対応を考えなければいけないのかもしれない。民主党の猛省を促すと共に、次期党首討論への渡辺代表の参加を明確に約束するように求めたい。

ページ上部へ