けんいちブログ

「道路特定財源が一部復活!?(その2)」

2011.10.03

道路特定財源が一部復活!?(その2)
      ~業界の顔色を窺う各政党~

運輸事業振興助成法という業界助成法が成立し9月30日に施行されてしまった。内容は軽油引取税のうち一定部分(全国で合計200億円)は都道府県のトラック協会・バス協会に交付金として渡すというものである。

 ただこの制度は今回まったく突然にできたというわけではない。似た制度は自民党政権下の1970年代から存在していた。それが民主党政権のもとで法制化され補強されたというべきなのである。

 話は軽油引取税に暫定税率ができた1976年に遡る。この時、1リットルあたり15.0円だった軽油の税金は、暫定措置として19.5円に上がることになった。軽油を燃料としているのは主にトラックとバスである。当然、トラック業界、バス業界は「そんなに上げられたら困る」と主張した。そうした中、妥協策として、値上げはするが両業界に還元するということで落ち着いた経緯がある。そして同年11月に自治省(現・総務省)の事務次官が各都道府県知事に「値上げしたうち半分は各都道府県のトラック協会などに交付金として渡しなさい」という通達を出した。

 ところが地方分権の流れの中で、通達の効力が弱くなってきた。2000年に施行された地方分権一括法では通達は単なる技術的助言であり、それに従うかどうかは自治体の判断と位置づけられる。そうなると都道府県の中にも「せっかくの税金をなんでトラック協会などに回さなくてはいけないのか。法律上の義務ならばともかく、中央官庁からいちいち通達で指示される筋合はない」という反発も出てくることになる。現に大阪府の橋下知事はトラック協会などへの交付金を削減して、別の分野に回した。当然のように業界は反発した。

 一方で民主党は野党時代に暫定税率廃止を高らかに唱っていた。これらの業界からすれば大幅な減税になるため期待も高まっていた。しかし政権獲得後はこの約束も反故にされた。民主党からすると期待を裏切ったわけである。

 そうした中で業界を慰撫するために浮上したのが交付金の法制化である。通達だと従わない自治体が出てくるので、今度は法律に明記して義務にしようというわけである(実際の法律では交付金は明確な義務ではなく努力義務になっている)。
野党第一党の自民党は元々業界の支援こそカネと票の命綱だと思っているので当然賛成である。それどころか“努力義務では足りない。明確に義務にしろ”という。例えば国会質疑で同党の片山さつき議員は「実際にはもう本当に義務付けたのと同じような形で運用していただきたいと思います」と述べている(参議院総務委員会・8月23日)。

 前回のブログでも少し触れたが、私はこの交付金が全部悪いと言っているわけではない。たしかに安全対策や環境対策で有意義に使われているものもあるだろう。しかし必要な交付金なら一般財源から出せばよいだけのことである。「この税はこれに使わなければならない」と義務付ける特定財源的なやり方が問題だと言っているだけである。

この法律には別の大きな問題もある。地方分権に真っ向から逆行しているという点である。軽油引取税は都道府県税である。何に使うかは都道府県が判断するのが筋である。にもかかわらず国が法律で“この分は各都道府県のトラック協会・バス協会にまわせ”というのは余計なおせっかい以外の何物でもない。民主党が掲げてきた地域主権のスローガンが泣くというものである。

 要はこの運輸事業振興助成法は筋の悪い法律としか言いようがない。こんな法案がろくに審議もされずに成立してしまった。審議は衆参ともに総務委員会で行なわれたが、その時間は衆議院が約10分、参議院も1時間弱である。このわずかばかりの審議時間の結果、みんなの党以外の全党が賛成する形で法案は可決成立した。

結局、業界の顔色を窺う政党ばかりでは、既得権益は打破できない。それどころか補強・強化されてしまう。しがらみのない、みんなの党の役割がここにもあると思う。

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