けんいちブログ

再生可能エネルギー買取り法案の質疑

2011.08.30

再生可能エネルギー買取り法案の質疑

 本日午前、菅直人内閣が総辞職した。菅首相が退陣条件の一つとして挙げていたのが、再生可能エネルギー買取り法案だった。同法案は衆議院段階で自民党・公明党の要求を入れた形で修正された。その上で両院で全会一致で可決され、今月26日に成立した。それに

よって退陣条件が整ったとして菅内閣の総辞職に至ったわけである。
本ブログでもこの法案については7月28日、8月2日の項で触れた。原案にも修正案にも一部問題はあると思うが、再生可能エネルギーを普及させるという基本線には大賛成なのでみんなの党も賛成票を投じている。

 この法案については、私自身が8月24日に党を代表して参議院本会議で質疑に立ったので、その時の質問原稿を以下に掲載する。党と私のこの問題についての考え方の基本線を網羅しているつもりである。
実際に登壇した時は、原稿とは微妙に違った形で話しているので、細部では議事録とは違うかもしれないが、基本的に原稿通りの質問を

している。また政府側の答弁については議事録を参照していただきたい。

なお本会議質疑は、委員会質疑のような一問一答ではない。持ち時間の範囲内で、壇上で演説風に質問をして、あとは答弁を聞くという形式である。以下に掲載する質問の場合は、持ち時間は10分だった。また太字になっている部分が質問部分である。

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再生可能エネルギー特措法案・電気事業法等改正案
についての本会議質疑〔全文〕(平成23年8月24日)

みんなの党の水野賢一です。

再生可能エネルギーが環境面で優れていることは言うまでもありません。また輸入に依存しないわけですから、これをうまく普及・発展させれば明治以来資源小国とされてきた日本を資源大国に生まれ変わらせる可能性もあります。

 ですから私たちみんなの党も再生可能エネルギーの促進には大賛成ですし、固定価格買取り制度はそのための極めて有効な手段だと考えています。

 その上で法案についてお伺いします。衆議院段階での修正部分については本来修正案提出者に聞きたいところですが、本会議のルールに則って政府側に見解を質してまいります。

 修正については評価できる点もあります。例えば再生可能エネルギーの種類や規模によって買取り価格を変えるようにしたことです。こうしたきめ細かな配慮をする一方で、他方では丁寧さに欠けた修正もあります。附則第7条で集中的な導入期間を一律3年とした点です。導入を促進するために集中的な期間を設けるという発想は分かります。しかし一口に再生可能エネルギーといっても太陽光パネルのように設置しやすいものもあれば、地熱・風力のように環境アセスを実施するため時間がかかるものもあります。そうした特性を考慮せずに一律3年とするのが果たして適当なのでしょうか?見解を伺います。(質問1-経済産業大臣)

 しかしなによりも修正部分の最大の問題は電力多消費産業に特例を設けたことです。平均よりも8倍以上電気を使う事業者の電気料金は大幅に軽減するというのでは、平均の6倍~7倍使っている企業は、もっと電気を消費してこの制度の恩恵にあずかろうとするのではないですか。国民には節電を呼びかけながら、一方で電力無駄使いを助長するような制度に正当性があるのでしょうか。省エネ努力を求めないまま、ただ単に電気をたくさん使っているからといって配慮するという条項が正しいのですか。少なくとも運用にあたっては省エネ努力を厳しく求めていくなどの留意が必要ではないですか。お伺いします。(質問2-経済産業大臣)

 そもそも一部の業界に配慮する前に、政府がまずやるべきことは、どこの企業、どこの事業所が、どれだけの電気を使っているかのデータを公表することです。政府はそのデータを持っているのです。省エネ法という法律によって電気やガス、さらには石炭、天然ガスなどを一定以上に使った事業所は経済産業省に報告することになっているからです。

しかし国は企業秘密だとして、そのデータを十分に開示していません。製品の作り方のノウハウならばいざ知らず、なんで電気の使用量が企業秘密なんですか。データがなければ十分な議論さえできないじゃないですか。本来、政府が持っている情報は国家機密や個人情報を別とすれば情報公開法の対象のはずではないですか。

 このデータ開示をめぐっては裁判にもなっています。情報公開請求を受けても開示しようとしない国のことを環境NPOが訴えたからです。これまで地裁・高裁レベルで6回判決が出ていますが、その結果は国の方からみて敗訴・敗訴・敗訴・敗訴・勝訴・敗訴です。つまり国の1勝5敗です。現在、最高裁に係属していますが、こんなものは裁判で争う前に公開すればいいんです。

 民主党は口では情報公開を言っていたはずではないですか。口先でもっともらしいことを言いながら政権をとると実行しない例はこれまでにも多々ありますが、これもまたその典型例です。有意義な国会審議のためにも電気使用量のデータは即座にすべて開示すべきではないですか。(質問3-経済産業大臣)

 さて買取り義務化を実施すれば電気料金は上がります。電気料金が上がる要因は他にもたくさんあるので再生可能エネルギーだけを、ことさらにあげつらうつもりはありませんが、上がること自体は事実です。

 それならば電気料金を下げる政策、つまり電力自由化・地域独占打破・総括原価方式見直しなどとセットにして行なうというのが筋じゃありませんか。この点についての見解を伺います。(質問4-経済産業大臣)

 これまでにも電力自由化は形の上では部分的に進んできました。しかし実態として新規参入事業者のシェアは1%台にすぎず、越境供給もほとんどありません。結局、送電線を持っている既存電力会社が、圧倒的に優位な立場に立つため本当の競争は行われないのです。だからこそ発送電の分離が必要なのです。見解を伺います。(質問5-経済産業大臣)

 私たちみんなの党は規制緩和を強く主張していますが、弱者を守るための規制というならばまだ分かります。しかし強者中の強者、大企業中の大企業である東京電力などを守る規制には何の合理性もないと断言します。

 再生可能エネルギーで発電しても送電網に接続してもらわなければ、どうにもなりません。法案第5条では一応、接続を義務化してはいますが、例外の余地が大きすぎます。

海江田大臣は電力会社の対応に問題があれば、経済産業相が勧告・命令をかけられるから大丈夫と言いますが、その経済産業省幹部が今年も東京電力に天下ったのですから、信用できるはずがありません。経済産業省から電力会社への天下りが横行してきたことへの率直な反省と今後は断固許さないという決意を伺います。(質問6-経済産業大臣)

これに関して言えば、天下り監視機関である再就職等監視委員会を設置することは国家公務員法上の義務であるにもかかわらず、民主党政権が発足以来、長らく人選さえ進めてきませんでした。この怠慢ぶりについて本会議でも正式に謝罪すべきだと思いますが、官房長官の見解を伺います。(質問7-枝野官房長官)

なお政府も遅ればせながら5月末に同意人事案を国会に提示しましたが、それまで私たちと共に「提示すべきだ」と言っていたはずの自民党が、いざ提示されると、今度は採決に応じないという姿勢をとっているのは理解に苦しむものであり、政府の怠慢に続く、国会の怠慢として強い批判に値することも申し添えます。

さて、この法案が成立をすると電気料金への上乗せ分は“外出し”の形で電気料金の明細書に載るようです。それは良いとしても、一方でなぜ原子力発電の再処理費・最終処分費はそうなっていないのでしょうか。原発の再処理費・最終処分費もすでに電気料金に上乗せされていますが、こちらは明細書に明示されることなく“こっそり”と上乗せされています。こんな姑息なことでよいのですか。これまでに再処理費・最終処分費として累計何兆円が電気料金に上乗せされてきたのかその金額も合わせてお答えください。(質問8-細野原発担当大臣)

 さて、再生可能エネルギーを普及させるためには無用な規制の撤廃も必要です。例えば風力発電用の風車も高さ60m以上だと建築基準法で高層住宅と同様の審査が必要になります。耐震性が重要であることは否定しませんが、人里離れたところにある風車と人間が住む住宅が同じ基準である必要があるのですか。こうした過剰規制も見直すべきではないですか。(質問9-国土交通大臣)

最後に、エネルギーという時には電気だけでなく熱もあります。太陽熱利用、バイオマス熱利用といった熱の分野にも固定価格買取りのような制度を導入することも今後の課題として検討すべきだと思いますが、見解をお伺いして質問を終わります。(質問10-経済産業大臣)

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