国会論戦を避けるな
2013.10.17
10月15日に臨時国会が開会した。6月下旬に閉会してから事実上4か月ぶりの国会である。その間に参議院選挙があり、8月上旬には6日間だけ国会を開いたことがある。ただこれは参議院選挙の結果を受け、新議長や新副議長を選任するためだけに開かれたため実質的な審議は何もなかった。
4か月も事実上休会していれば批判の声が上がるのも当然だろう。「内外共に難問が山積している中、なんで国会はこんなに長い夏休みなのか」という批判である。しかし政府・与党にしてみれば難問が山積しているからこそ国会の召集を遅らせたという面もある。国会で追及されると窮地に追い込まれるかもしれないからである。安倍内閣や自民党が高い支持率を維持している以上、なるべくリスクを避けるという思いもあったのだろう。
問題は論戦を避けようとする姿勢を政府・与党が今後ますます強めていく気配がする点である。最近、与党側は「国会改革」を掲げるようになった。改革というからには国会審議を充実させるための改革かと思いきや、そうではない。むしろ総理大臣や閣僚の国会出席をなるべく短縮することこそ「改革」の主眼になっている。彼らは言う。「諸外国に比べて日本の総理大臣は国会に拘束される時間が長すぎる。だからもっと短くして外国訪問などに時間を割けるようにすべきだ」。必要な外交交渉に時間を割けるようにすることには何の異論もない。しかしだからといって国会審議をおろそかにして良いわけではない。また外国に比べて議会に出席する時間が長いといっても制度の違う国と単純比較してもあまり意味はない。例えばアメリカでは大統領が議会での質疑に出てくるわけではないが、これは大統領制の国なのである意味で当然と言えよう。
では外国でなく日本の国会の過去例と比べるとどうだろうか。総理大臣の衆議院本会議・委員会への出席時間を私が国会に初当選した14年前と昨年を比べると以下の通りである。
平成11年 216時間18分
平成24年 213時間11分
昨年は消費税増税法案関係の審議で、近年のうちでは総理出席が多い年だったにもかかわらず、十数年前に比べれば減っているのである。参議院の場合も本会議への出席回数は平成11年通常国会が33回なのに対し、昨年は18回と激減している。こうした数字を見れば、少なくとも歴代政権が果たしてきたくらいの国会での説明責任は現政権にも果たしてもらいたいと思う。
そもそも国会出席を負担のように考えるのがおかしいのである。自らの政策が正しいと思うならば、国権の最高機関たる国会で堂々と論戦に応じたらどうだろうか。少なくとも国会改革を掲げるならば、総理出席の回数削減よりも議員立法の充実などに力点を置くべきだろう。
さて「国会改革」に関してのもう一つの問題点は議論の進め方である。与党側は自民党・公明党・民主党・維新の会の4党で話し合うつもりのようだ。しかし国会でのルール作りの議論である以上、全党が参加する形で協議すべきである。百歩譲って何らかの足切りが必要だとしても、正式の院内交渉会派にはすべて参加の呼び掛けをするのが筋である。参議院で18議席を持つみんなの党は正規の交渉会派の資格を持つ(共産党も参議院11議席なので同様)。一方、維新の会は衆議院では50数名を擁しているが、参議院議員は9名で交渉会派になっていない。テーマが“衆議院改革”ならともかく“国会改革”である以上、維新の会には交渉を持ちかけて、みんなの党は排除するというのはまったく道理が通らない。
こうした筋の通らないことをする理由は実は明白である。維新の会は「総理の国会出席を減らすべきだ」とまるで与党の代弁者のようなことを言っているからである。要は都合の良いことを言う政党とは話すが、厳しいことを言う政党は排除するというだけのことである。しかし私たちは厳しいことであろうと言い続ける。それが正しいことである限り言い続ける。与党側にも苦言に耳を傾ける度量を期待したい。
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