けんいちブログ

野田首相の答弁ぶり

2011.11.05

野田首相の答弁ぶり
     ~ちょっと政府に甘すぎる感想?~

 野田佳彦首相の答弁が安全運転すぎるという批判がある。低姿勢には違いないが、答弁書を棒読みするだけで情熱も覚悟も伝わってこないという指摘である。

 今週は衆参両院の本会議で代表質問が行なわれた。私も参議院の代表質問をずっと聞いていたが、確かにその指摘には頷ける点も多い(なお参議院では女性議員が2名登壇したが、その時だけはアドリブが入ったような感じもしたが、気のせいだろうか?)。政治理念やTPPなど多くの質問者が取り上げるテーマには判で押したように同じ答弁が繰り返された。

 もっともそれも分からないでもない。同じテーマについてある人に答えたことと別の人に答えたことが違えば、それはそれで問題になりかねない。ある人にはそっけなく簡略に答弁して、他の人には詳細かつ丁寧に答えれば、簡略に答弁された方は怒るだろう。「面白みがない」と言われようと模範解答を繰り返すのは仕方のない面もある。

 本会議での質問というのは一問一答ではない。数十分質問して、だいたい同時間政府側が答弁するという一方通行のやりとりである。例えば今週の代表質問の場合、みんなの党からは福島県出身の小熊慎司議員が登壇し、原発事故問題を中心に取り上げたが質問枠は20分だった。自民党の枠は85分だったので3人で割って40分、25分、20分としていた。民主党の持ち時間は60分で、25分、20分、15分に三分割した。公明党は一人が30分の範囲で質問した。

 これだけの時間があれば、当然質問も数十問はある。それだけにすべてを覚えて、即興で的確に答弁するというのは無理な話である。だから前日までには質問の全文を通告し、その通り質問をする慣例になっている。形式的と言えば形式的だが仕方がない面もある(各委員会は一問一答なので、大まかな通告はするが全文通告でその通り読むというわけではない)。

 また質問した事項を一つでも飛ばして答えれば野党もすぐに「答弁漏れだ」と言い立てる。これも棒読みを助長することになる。
 小泉純一郎首相などはアドリブ答弁が比較的多い方だったが、それでも郵政や構造改革の話の時に限られていた。それまで淡々と答弁書を読み上げるだけだったのが、郵政の話になると突如として身振り手振りを交えて熱弁をふるったものだった。だがその話題が終わるとまた普通に答弁書を読み上げていた。

 「メモを見ずに自分の言葉で語れ」というのは口で言うのは簡単だが、実際にはそう簡単ではない。現に質問者も原稿を読んでいる。しかも質問側は十分に練習を積んできた上で、本会議場に臨むのだから答弁側にだけ即興でメモも見ないで答えろというのはちょっと酷であろう。

 それにしても総理大臣というのは大変だと思う。総理だからと言って森羅万象に通じているわけでもない。またその必要もない。そのために各大臣や官僚がいるのである。しかし聞く方は何でも総理に聞きたがる。しかも質問者は入れ替わり、立ち替わりで、多種多様な問題を提起するのである。そういう点では、総理というのは大変な仕事だなあと敵方(私は野党なので)ながら思う。週明けから衆参で予算委員会が始まれば、ますます心労も増えるだろうといささか同情の思いもある。

 今日は随分と政権側の都合に理解を示すことを書いたように思う。野党議員としては政府に対し寛容すぎたかもしれない。ただあらためて思うのは総理大臣を評価する時に大切なのは答弁の巧拙よりも政策の良し悪しである。そして実際に何を実行するかである。
その政策の部分で野田内閣にはかなりの懸念を持っている。特に増税一直線の路線にはみんなの党は断固反対である。今後、この点は大いに路線論争をしていきたい。

 なお本日未明、西岡武夫参議院議長が逝去された。心からお悔やみ申し上げたい。一週間余り前にお電話をいただいたのが私にとっては最後になってしまった。議長の逝去については項をあらためてまた触れたい。

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