「なぜ?東京電力だけ環境アセスを免除」
2011.07.26
「なぜ?東京電力だけ環境アセスを免除」
電力不足ならば節電だけでなく電力供給を増やすことも考えるべきだと昨日書いた。ただ新たに発電施設を作る時には環境アセスメントを受けなければならない。
火力発電所ならば15万kw以上の施設は必ず環境アセスの対象になる。
cf.ちなみに地熱発電所ならば1万kw以上、原発はすべてが環境アセスの対象になっている。
ただアセスメントをしっかりと実施するとそれだけで3年くらいの時間がかかる。
それから着工するわけだから急場に間に合わない。そこで環境省は、この際アセスは省略してもかまわないという方針を打ち出した。環境アセスメント法52条2項の「適用除外」の発動である。この法律が1997年にできてから初めてのことになる。
東京電力はいま緊急設置電源として以下の発電所を建設している。
・千葉火力 約100万kw
・袖ヶ浦火力 約11万kw
・姉崎火力 約0.6万kw
・大井火力 約21万kw
・川崎火力 約13万kw
・横須賀火力 約33万kw
・常陸那珂火力 約25万kw
これらの中にはすでに運転開始しているものもあれば、まもなく稼働予定のものもあるが、例えば千葉火力などは33万kwのガスタービン火力を3台設置する。もちろん本来ならばアセスの対象だが、その手続きは省略されている。
火力発電所は周辺に窒素酸化物や硫黄酸化物を撒き散らす可能性がある。だからこそ環境アセスの対象なのである。もちろん国も東京電力も「正規なアセスメントは経なくても環境対策はしっかりとやっており大丈夫です」と言う。この点は、今後もしっかりと監視しなければならないと思う。
私がとりわけ疑問に思うのは、アセス免除の対象が東京電力に限られているという点である。発電所というのは東京電力しか作れないというものではない。新規参入事業者が設置する例も多々ある。しかしこうした新規参入事業者の場合には従来通りのアセスが必要なのである。「東電ならばアセス免除、他の事業者ならアセスが義務」という不公平こそ問題と言わざるをえない。
この問題には二つの考え方があるだろう。一つは「今は非常時だから、発電所の増設こそ急務でありアセスを免除しても仕方がない」という考えである。もう一つは「非常時だからといって環境への悪影響は看過できない。アセスはしっかりと実施すべきだ」というものである。
双方ともに一理はあるが(私自身は後者の考えに近いが)、どちらの立場を取るにしても、東電と他社を差別的に扱う理由は見あたらない。「非常時だからアセス免除もやむなし」というならば新規参入事業者にもそうすればよいのである。「非常時でもアセスはやるべき」というならば東電にも義務付けるべきなのである。
環境アセスメント法52条2項の「適用除外」などというのは細かな話なので、普通はあまり注目をされない。ただ「神は細部に宿る」ともいう。現政権の政策を見ると、こうした細かい点での東電優遇策がちりばめられている。もちろん自民党政権下もそうだった。東京電力が長年にわたって培ってきた政界・官界とのパイプが生きているのだろう。だからこそしがらみのない「みんなの党」がしっかりと言うべきことを言っていく使命がある。
cf.東電だけが環境アセスの適用除外になっていることについては5月20日の参議院予算委員会での私の質疑で菅首相や海江田経済産業大臣に質しました。詳しくは国会会議録をご覧ください。
国会会議録はこちらより検索いただけます→http://kaigi.ndl.go.jp/
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