けんいちブログ

中選挙区の一部復活案に反対する

2001年10月31日

「中選挙区の一部復活案に反対する」

またぞろ浮上してきた中選挙区制の復活案。目先の政局のための理念なき選挙制度いじりを撃つ。

選挙制度の話ほど政治家の目の色が変わる問題も少ないだろう。制度の改変は政治生命にかかわるから当然ともいえる。 今また政治家が浮き足立つような案が浮上してきた。10月24日、与党三党の幹事長が衆議院の選挙制度を変える案で大筋一致したのである。現在の300小選挙区を270の小選挙区、12の二人区、2つの三人区に変えるというものである。要は都市部は複数区にして、地方は小選挙区のままにしようということである。これほど筋の通らない話はない。一貫性もなければ整合性もない。なぜ都市部は複数区で、地方が小選挙区なのか理由はどこにもない。野党が「理念も哲学もない」として強く反発するのも当然である。野党だけではない。自民党内でも反対の声が大多数である。

先に「理由はどこにもない」と書いたが、実はこの案が出てきた理由は明々白々なのである。公明党が強く要望しているからである。公明党には熱烈な支持者が多い。だが支持者以外の間には強い公明党アレルギーが広まっている。そのため公明党候補は支持者からの票は確実に得られるが、それ以外に支援の輪を広げることが難しい。これでは小選挙区では勝ち残れない。しかし複数区ならば組織票を固めさえすれば当選の確率はずっと高まる。そこで公明党は基盤の強い都市部での中選挙区制復活にこだわってきた。

確かに公明党の立場にたてばそうだろう。中選挙区で行なわれた昭和61年、平成2年、平成5年の総選挙では公明党はそれぞれ56議席、45議席、51議席を確保した。しかし昨年の総選挙では31議席である。それも小選挙区で勝ったのは7つに過ぎず、ほとんどは比例区での当選である。この間、党勢そのものがさほど減衰したわけでもない。「議席が減ったのは選挙制度のせいだ。だから中選挙区を復活しろ」と言いたい気持ちは分からないでもない。

だが選挙制度とは一党一派への配慮で考えるべきものではない。選挙制度は各党の消長に直接関わってくるのは事実である。 それだけにこの問題を論ずる時には党利党略に偏らないように節度が求められる。自分や自党に有利か不利かを計算するのは人間の常だろう。それはやむをえない。しかしそれでもやって良いことと悪いことがある。今回の改革案はその限度限界を超えていると言わざるをえない。

理念よりも各党への配慮が先に立った改革案としては「小選挙区比例代表連用制」というのが思い起こされる。この案は平成5年4月に民間政治臨調が提案した。中選挙区を廃止して小選挙区を導入しようという機運が高まっていた頃である。しかし各党の案には隔たりがあった。自民党は単純小選挙区制を主張し、当時第二党の社会党と第三党の公明党は小選挙区比例代表併用制を唱えていた。これに対し、民間政治臨調は第三の案として連用制を提示する。この案の最大のポイントは各党の当時の議席がほぼ維持されることだった。直前の衆議院選の結果をもとにした試算によると連用制を導入した場合の各党の獲得議席数は次の通りである。

 

連用制導入 当時の現有議席

自民党   287    274

社会党   131    141

公明党    41     46

共産党    29     16

民社党    12     13

 

つまりこの制度は導入しても大きな議席の変化がないように配慮されていた。どの党にとっても当たり障りがないために折衷案として浮上してきたともいえる。しかし配慮が先に立っていただけに分かりにくいことこの上ない制度だった。連用制の内容を記せば「小選挙区と比例区からなるが比例議席の配分をドント式で行なう時に各党の小選挙区獲得議席に1を加えた数を除数とする」ということになる。何のことやらよく分からないが、要するに小選挙区で多数を獲得した党には比例でハンデを与えるということである。ともあれ奇怪な案だったことは間違いない。こうした案が採用されなかったのは国家百年のために良かったと思っている。だがこの案でさえ今回の改革案よりはましである。全政党に配慮していたからである。今回の中選挙区制一部復活論は特定の政党への配慮がすべての出発点になっているのである。普通の感覚の持ち主であればこういう案を出すこと自体、恥ずかしいと思うべきである。

そもそもいま選挙制度の見直しが必要なのだろうか。どれだけの国民がこれを求めているのだろうか。日本政治の優先課題が選挙制度の問題のはずがない。テロ対策、景気回復などやらなければならないことは山ほどある。ところが選挙制度の話がひとたび出ると政治家の関心はそこに集中してしまい、他の問題はおろそかになってしまう。誰でも我が身が大切だからこれは仕方がない面もある。だからこそこういう問題を扱うべき時ではないのだ。

連立を組んでいる友党への信義はもちろん大切である。妥協も必要かもしれない。だがそれをもってすべてが許されるわけではない。選挙制度とは民主主義の出発点である。政治に妥協は付き物とはいえ出発点から妥協というわけにはいかない。道理がある妥協ならばまだしも、特定の政党のために「勝てる選挙区をつくる」などというのはとんでもないことである。選挙制度には最低限、理念や整合性が必要なのである。説明のつかない制度を作るべきではない。

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