けんいちブログ

羽田国際化問題

2001.07.26

「羽田国際化問題」 ー亀井静香発言は不見識ー

◆党内実力者に対しても言うべきことは言う。筋を通す男・水野賢一が本領発揮の痛快傑作。

◆羽田国際化への私の意見
羽田空港を国際空港として使おうという声がある。この問題をめぐっては東京都と千葉県が対立してきた。東京都が羽田国際化こそ首都圏住民の利便性向上だと推進論を主張すれば、千葉県側は騒音被害は千葉が受けるとして反発を強めている。  この羽田国際化に対しては、私もホームページの本年2月4日の項をはじめ、たびたび意見を述べている。一言でいうならば、羽田国際化慎重論である。なにも私は「羽田からは一便たりとも国際線を飛ばすな」と言っているわけではない。しかし羽田を国際空港として利用する前に、やるべきことがいくつかあると思っている。まず一つは成田への交通アクセスの改善である。成田が「遠くて不便」というなら「近くて便利」なようにアクセスを充実させるべきである。二つ目には羽田を利用する飛行機が千葉県に騒音をもたらさないように飛行ルートを見直すべきである。こうした問題が解決されないまま、ただ羽田国際化という言葉だけが一人歩きする事態には懸念をいだかざるをえない。

◆ 亀井静香発言とは
羽田国際化論の代表者といえば、石原慎太郎都知事や亀井静香前自民党政調会長である。この亀井静香氏がつい先日も成田市内で行われた会合で羽田国際化の必要性に言及した。亀井氏は言う。「私が政調会長だった時に、千葉県の議員たちが羽田国際化反対の申し入れで、党本部の政調会長室にやってきた。そこで私は言ってやった。『あなたたちは羽田が国際化されると千葉県に騒音がくるといって騒いでいるけど、成田の飛行機だって千葉県にきているじゃないか。成田の飛行機はうるさくなくて、羽田の飛行機だけがうるさいとでもいうのか』。そうしたら彼らはギャフンとなってグウの音もでなくなった」  亀井氏はこの発言をテレビを始め、各地で行なっている。つまりお得意の論法なのである。しかしこれは根本的に認識が間違っている。詭弁ですらある。

◆ 亀井論法のおかしさ
確かに亀井氏が言う通り成田空港を利用する飛行機は千葉県上空を通過する。成田が内陸にある以上、千葉県上空を通らない限り離着陸できないのだからやむをえない。だがこれは騒音という空港の負の部分を千葉県が引き受けていることに他ならない。

問題は羽田空港を発着する飛行機である。当然のことだが羽田空港は東京都にある。では羽田を利用する飛行機は東京の上空を飛んでいるのだろうか。答えはNoである。 ではどこを飛んでいるのかといえば、千葉県の上空なのである。例えば羽田から北に向かって離陸した航空機はすぐに右に旋回して千葉県の浦安・市川の上空を目指して進む。

わざわざ東京上空を避けた飛行ルートを設定しているためだ。もちろん都民に騒音がふりかからないためである。東京都は空港の利便性だけは享受して、負の部分は外に押しつけているともいえる。 この事実はあまり知られていないが重要な問題である。 大都市と地方の関係を考える点でも興味深い。ちょうど東京で排出された産業廃棄物が地方に持ち込まれていることと相通じるものがあるような気もする。

亀井氏の論法は「千葉県は成田の騒音を引き受けている」→「だから羽田の騒音も引き受けろ」というふうにしか聞こえない。しかしこんな馬鹿な話があるだろうか。「千葉県は成田の騒音を引き受けている」→「だからせめて羽田の騒音は東京都が引き受けよう」という考え方のほうがよっぽど自然ではないだろうか。

◆飛行ルートの見直しを
現状においても羽田を利用する飛行機はこうしたルートで飛行している。国際便になれば機体はさらに大型化し、騒音はますます大きくなる。それでもまだ騒音は千葉県が甘受しなければならないのだろうか。私はこれを機に飛行ルートを見直すべきだと考えている。はっきり言えば東京都上空も飛行すべきである。現に世界の大都市では上空を飛行機が通過する例はいくらでもある。東京都の姿勢こそ世界の非常識だといえる。  空港問題とは騒音問題である。「都民を騒音から守る」と言えば聞こえは良い。しかしその結果、騒音を他県に輸出しているのである。空港の負の側面である騒音は引き受けないで、利便性だけは享受しようというのは東京のエゴである。もし千葉県が東京都のような姿勢をとっていたならば、成田空港は存在しなかっただろうし、首都圏の空港機能は麻痺してしまったはずである。今こそ東京都には美濃部知事以来のこうしたエゴは捨ててもらわなければならない。

◆子供騙しの現行制度
実をいうと、こうした至極当然の批判を受けて、昨年7月からは羽田を離陸して東京上空を飛ぶ飛行経路も運用されるようになった。しかしこの飛行経路は一日5便だけである。羽田を発着する飛行機は現在、一日に702便もある。702便中のわずかに5便にすぎない。さらにこの5便はすべて中小型機に限られている。ジャンボ機は今なお千葉県上空を飛び続けているのだ。これでは不十分極まりない。子供騙しと言われても仕方がないだろう。

いま求められているのは、子供騙しではない抜本的な飛行ルートの見直しである。「羽田空港から国際便を」という場合には、騒音問題から目を背けてはならない。千葉県にのみ騒音を押しつけている現状を改善する必要がある。あらためて言おう。「飛行ルートの見直しなくして羽田国際化なし」なのである。

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