私たち若手議員が考えた 「北朝鮮制裁法案」の意義
2004.04.01
「私たち若手議員が考えた 「北朝鮮制裁法案」の意義」
特定船舶入港禁止法の中身について分かりやすく解説。月刊誌「正論」04年5月号に掲載
◆はじめに
北朝鮮とどう向きあうかは日本外交の最も大きな課題である。同時に重大な安全保障上の問題でもある。なにしろ相手は「軍事優先政治」を堂々と公言している国である。現に飢餓に苦しむ国民を横目に核やミサイルの開発に突き進んできた。また罪もない日本国民をいきなり拉致するという犯罪行為も繰り返してきた。
日本政府は「対話と圧力」という方針を掲げている。基本的にはこれは正しい。対話は重要である。しかし話せば分かるという相手でもない。圧力をかける用意も必要である。ただ問題はこれまでは圧力をかけようにもかけることさえできなかったことなのである。圧力としてまず思い浮かぶのが経済制裁である。だがその実施には国連決議などを待たなければならなかった。裏を返せば日本単独の判断では発動しえなかった。今までの法律が不十分だったためである。
そこで今年の通常国会で法改正が行なわれた。第一弾が外為法の改正である。これによって必要があれば日本単独の判断でも経済制裁が可能になった。第二弾として北朝鮮船の入港禁止法案も議論の俎上にあがっている。これらの法案は議員立法として進められてきた。私も当初から策定に関わってきた。本稿ではまずこれまでの経緯を概観してみたい。続いて現在成立に向けて鋭意努力中の入港禁止法案について内容を詳しく見てみたい。
◆対北朝鮮外交カードを考える会
北朝鮮に対しては甘い姿勢を取ることで軟化を促すという考え方があった。韓国の「太陽政策」はその典型である。 日本もかつてその考えに立っていた。90年代のコメ支援がそれである。コメ支援は95年から2000年にかけて5回にわたって行なわれた。北朝鮮に供与した政府米は合計117万トンである。とりわけ2000年10月の支援は要請量をはるかに超える50万トンという大規模なものだった。
自国民を飢えさせて他国に支援を頼み、一方で核を開発するなどという馬鹿な話はない。その上、支援している国をミサイルの射程に捉えるなどということがあって良いはずがない。ところが現実にそういうことが起きているのである。それにもかかわらずあえて支援したのは善意で接することで融和を図ることができると考えたからである。だがそれは幻想だった。せっかくの支援は北を増長させることは
あっても拉致問題などの解決にはつながらなかった。 この点はあらためて反省してみるべきだろう。
「対話と圧力」という言葉を政府が使うようになったのはここ1年ほどである。俗にいえばアメとムチを両方準備するということである。これは決して間違っていない。 対話の窓口は開けつつも圧力もかけられるようにしておく。対話を進めるためにもこれは必要である。圧力をかけなければ対話にさえ応じない相手だからである。 こうして圧力という掛け声が上がるようになった。だが実際に日本政府が取りうる手段は限られていた。例えば98年にテポドンを三陸沖に打ち込まれた時に抗議として行なったことは、①チャーター便の運航停止、②KEDOへの協力の見直し、③食糧支援の凍結 というくらいである。このうち①と③は支援を止めただけのことである。つまりアメを与えなくなっただけでムチではない。
この程度の対応しか取らなかったのは当時の政府に毅然とした姿勢が欠けていたというだけではなく、法律上それ以上のことができなかったためでもある。本格的な経済制裁は不可能だったのである。 法律に不備があれば直せばよい。まして北朝鮮が拉致事件などで不誠実な態度を取り続ける以上なおさらである。だが政府からはその熱意が感じられなかった。それならば議員立法という方法がある。そう思った自民党の衆参若手議員が02年12月に集まって「対北朝鮮外交カードを考える会」を結成した。メンバーは山本一太、菅義偉、河野太郎、増原義剛、小林温の各氏と私の6名である。会の名称は山本氏がつけた。法整備をすることが北朝鮮という厄介な相手との交渉カードになるという思いが込められている。
◆二つの制裁法案
この会が準備した法案は二つある。外為法の改正案と船舶入港禁止法案である。外為法というと円高ドル安などの法律と思う向きもあるかもしれない。もちろんそれも含まれる。だが「外国為替及び外国貿易法」という正式名称が示す通り、対外取引全般を管轄している。送金や貿易の制限といった経済制裁もこの法律に規定されている。ただ従来は発動要件が厳しかった。国連決議もしくは多国間の合意があってはじめて発動できる形になっていた。国際社会が協力してどこかの国に制裁を加える時は日本もそれに参加できるということである。逆に言うと日本単独の判断での発動はできなかった。先のテポドン発射の時には国連決議はない。そうなると制裁は行なえない。そこで我々の改正案では発動要件を緩和した。国際社会全体として実施する時に参加できるのは当然のこととして、それに加えて日本の平和と安全のために必要があれば単独での制裁も可能とした。
もう一つの船舶入港禁止法は例えば万景峰号を入港させないということである。拉致や工作に関係したこの船が自由に行き来していることは国民感情としても納得しがたい。現行法では止めることができないので新法を準備した。外為法がモノとカネの流れを規制できるのに対し、こちらはヒトの往来も止められる。モノとカネについても、いくら外為法で制裁を発動しても船舶が往来している限り不正輸出や不正送金の可能性がつきまとう。すべての荷物を厳重に検査することは不可能だからである。なにしろ現在外国貿易のために開かれている港は国内に120もある。 制裁を実効性あるものにするためには運搬手段を元から絶たなければ駄目である。外為法による経済制裁を担保するためにも入港禁止法が求められている。
なおどちらの法案も成立したらすぐに発動されるというわけではない。必要があれば政府が経済制裁や入港禁止を行なうことができるというのが法律の趣旨である。北朝鮮がまともな国になれば発動しないという余地は十分に残されている。
議論が先行したのは外為法の改正である。入港禁止法が新法だったのに対し、外為法が改正だったという面もある。「外交カードを考える会」では03年2月に外為法の具体的な改正案と入港禁止法の骨子を発表した。拉致問題に携わる議員らとも相談の上、まずは熟度の高い外為法改正に全力を注ぐこととした。残念ながら党内手続きをしているうちに昨年の通常国会は会期末になってしまい提出には至らなかった。しかしその動きが無駄になったわけではない。
秋の衆議院総選挙で「拉致被害者家族会」「救う会」がアンケートを行なった。その結果当選者の実に81%が外為法改正に、76%が入港禁止法制定に賛成した。このことが法案成立に大きく弾みをつけることになった。今年1月に開会した国会では冒頭に外為法改正が取り上げられた。自民・公明・民主の各党ともに総論では賛成だったので、三党間で細部の詰めの作業を行なった。こうして自民党原案を一部修正の上、三党共同の議員立法として提出することになる。私も提出者として国会答弁に立った。 共産党だけが反対したが、2月9日に成立した。
◆入港禁止の対象船舶(当初の案)
改正外為法が成立した以上、今度は入港禁止法案に力を傾けなければならない。ここからは「外交カードを考える会」が練り上げた入港禁止法案の内容について見てみよう。
どの船を禁止の対象にするかは法律の根幹である。当初は「怪しい外国船」は入れないということを考えていた。昨年2月に法案骨子を発表した時は拉致・監禁・スパイ行為などに関係した船舶は入港させないという形になっていた。船の怪しさに着目したわけである。最大の不審船である万景峰号が念頭にあったのはいうまでもない。
だが議論の中でこの考えは根本から見直すことにした。 怪しい外国船を止めるという場合、怪しさを証明する必要がある。拉致やスパイ行為に関与したことを立証しなければならない。確かに万景峰号がこうした目的で使われた証拠・証言は集められるだろう。しかし日本に出入りする北朝鮮船は万景峰号だけではない。本当に不正行為を行なっているのは一見普通の貨物船だとも言われている。しかも万景峰号の出入りする新潟港はかなり厳重な警戒が敷かれているのに対し、貨物船は警戒の甘い他の港に出入りしているため不正の実態は捕捉しづらい。こうした貨物船が拉致・監禁などに関わっていたことを証明するのは至難である。そうすると入港は野放しになってしまう。
海上保安庁の調べによると一年間に国内の港に入港する北朝鮮船は01年が1225回、02年が1344回、03年が991回である。この数字はのべ数である。一隻の船が往復して10回入港すれば10回と数えている。うち万景峰号のこの3年間の入港回数は21回、21回、10回である。実は万景峰号は氷山の一角にすぎない。一般の貨物船まで対象にできないとザル法になりかねない。
さらに言えば、怪しい外国船を止めるという形では万景峰号でさえ止められるかという疑問まで出てくる。この船が過去に不正行為に関与していたことは明らかである。しかし例えば5年前に船内で謀議がこらされたことがいくら証明できても、それが現時点で入港禁止にする根拠になりうるだろうか。現在工作員を乗せていることが立証できるならともかく、過去に犯罪に利用されたことを入港禁止事由にするのは難しい。船が悪事を働くのではない。乗っている人間や背後にある国家組織が悪事を働くのだ。船が怪しいから止めるというやり方にはどうも無理があるようである。
◆入港禁止の対象船舶(現在の案)
そこで法案を大きく改めた。万景峰号のみならず北朝鮮船を一律に規制できるようにした。船の怪しさから国の怪しさに着眼点を変えたともいえる。入港禁止とする船舶はまず第一に特定の国籍をもつ外国船である。この場合は北朝鮮船ということになる。だが北朝鮮船だけを対象にしても大きな抜け道ができてしまう。便宜置籍船である。便宜置籍船とは税金対策などのために船の国籍だけを他国に置くことをいう。税金の安いパナマ、リベリアなどに移すことが多い。北朝鮮船だけに限ると税金逃れならぬ入港禁止逃れのために便宜置籍されるとどうにもならない。他国船をチャーターすることも抜け道となる。いまのところ北朝鮮籍以外の船が日朝間を往来することはほとんどないとされる。それは北朝鮮船でも自由に往来できるからである。やはり入港禁止逃れの道は塞いでおかなければならない。
そのため北朝鮮に寄った船も入港禁止の対象とした。パナマ船だろうと中国船だろうと米国船だろうと日本船だろうと北朝鮮に寄港すれば入港禁止となる。ただし過去に寄港したことがある船をすべて締め出すわけにもいかない。遡及はさせない。日本政府が入港禁止を決定したにもかかわらず、それでもあえて北に寄った船を対象にした。北朝鮮に寄港する限り日本船といえども例外ではない。そこで法案の名称も「特定船舶入港禁止法案」に変更した。それまで「特定外国船舶入港禁止法案」と呼んでいたが、「外国」を抜いたわけである。
すぐに出てくる疑問は北朝鮮に寄港したかどうか分かるのかということである。船が入港する時には入港届など様々な書類を提出する。現在の入港届は直前に出港した港を記入するだけで、それ以前にどこに寄っていたのかまでは分からない。ここを改正して最近数か月間のすべての寄港地を報告させるべきだという考えもあるだろう。だがその考えは採らなかった。日本に入港する外国船は年間11万隻ほどある。 日本船も含めれば数はさらに増える。その99%は北朝鮮と何の関係もない。そうした船舶に新たな義務を課すのは大きな反発を招きかねない。そうなると法案そのものの成立さえ危うくなってしまう。
わざわざ報告させなくても十分効果はある。北に寄った船の入港を違法だとしておくこと自体に意味がある。違法行為である以上、疑わしい船舶に対しては海上保安庁法に基づいて海上保安官が立ち入り検査できる。検査の結果、違法性が明らかになれば罰則もかかってくる。ちょうど車の無免許運転の取り締まりと似ている。運転している人が全員免許証を持っているかどうかは外見では分からない。 それでも無免許運転を違法行為としておくことで、必要があれば警察官が免許証の提示を求めることができるのと同じである。
◆航空機はどうなのか
航空機は対象にしないのかと思われる方もいるだろう。 我々の案では飛行機について触れていない。なにも空路は手つかずのままでよいと考えているわけではない。航空機は現行法でも止められるのであえて新法に盛り込むまでもないということである。日朝間に定期便はない。定期便を飛ばすためには普通二国間の航空協定を結ぶ。飛ばしたくなければこれを結ばなければよい。チャーター便はかつて年間80便以上も飛んでいたことがある。02年を最後に途絶えているが、今後申請がないとはいえない。しかしこれも航空法に基づく許可が必要である。空路を止めたければ許可を与えなければよい。テポドンが発射された98年にはチャーター便を認めない方針を打ち出し、翌年まで不許可が続いた。83年にソ連が大韓航空機を撃墜した時には日ソ間の定期便・チャーター便を一時停止したこともある。航空機は現行法でも止めることができ、現に実施したこともある。そこで新法に盛り込むのは蛇足と考えた。
なお現在、東京都などで北朝鮮船の入港禁止を狙って港湾条例を改正しようという動きがある。都民の生命・身体・財産を害する恐れのある船には港湾を利用させないという条項を設けるわけである。意図することは理解できる。 だがこれは船の怪しさに着目している。この場合、入ろうとする船が都民の生命・身体・財産を脅かしていることを証明するのがかなり難しい気がする。
◆発動要件
ではどのような場合に入港禁止措置を発動するのか。法案にあるのは「我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるとき」という表現である。これは外為法の日本単独での経済制裁の発動要件と同じにしてある。
北朝鮮が核実験やミサイル発射など平和を直接脅かす行動をとれば当然入港禁止を実施できる。薬物密輸の横行で国民生活の安全が脅かされていると判断した時も同じである。 拉致はどうか。「我が国」という場合、国民も含まれる。日本国民を拉致しておきながら、その解決に誠意ある態度が見られない時も発動要件は満たす。要するに圧力をかけなければ物事が進展しないと政府が判断したならば発動できるのである。
他方、乱用も戒めなければならない。入港禁止を行なう時は必ず閣議決定を経ることとした。これも改正外為法と同じである。入港禁止というのはかなり大胆な措置である。
平和と安全という高度な判断が求められる。単独の大臣の決定で実施すべきことではない。港のことだからといって国土交通大臣だけの判断で発動するというのはかえって不自然である。内閣全体として取り組むべき課題である。
また事後の国会承認も必要とした。 閣議で定めるのは発動対象の国、並びに入港禁止の期間などである。例えば「北朝鮮船及び北朝鮮に寄港した船舶は今後6か月間は入港させない」ということを決めることになる。期間は極めて重要である。というのもこの法律は発動すれば北朝鮮船は一律に入港禁止となる。この船は良くてこの船は悪いという選別はしていない。選別する合理的な根拠がないためである。すべて入港を認めるか、すべて認めないかで中間はない。段階的な発動というのは入港禁止の期間で調節するしかない。仮に年間1000隻が来るとして、入港禁止期間を3か月とすれば250隻が止まることになる。半年ならば500隻で、1000隻すべて締め出したければ1年間を通じて発動すればよい。もちろんこれは船舶が平均的に往来すればという仮定に基づく話だが、期間の長さによって圧力の強弱を調節するわけである。
期間内に相手が誠意を見せるということもありえる。 この場合は入港禁止措置を解除できる。逆に期間が終わってもまだ必要性が残っていることもあろう。その時は延長も可能にしてある。なお法案では遭難などの場合の入港は容認している。また閣議で特に定めればその他の例外もありえる。大地震が起こった時の支援船やKEDOで働く日本人技術者の帰国のための船などがこれにあたる。
◆国際法との関係
ところで他の国はこのような法律を持っているのだろうか。実はそれほどでもない。少なくとも特定の国の船舶を入港禁止にするという法律は多くはない。一番近いのはアメリカのトリチェリ法だろう。これはキューバ制裁の一環として1992年に成立した法律でキューバに180日以内に寄港した船は米国に入港させないというものである。 例が多くないからといって入港禁止法が国際法上問題があるというわけではない。むしろ北朝鮮のような無法国家が近くにない国はわざわざ制定する必要がないということだろう。ここで一般国際法との関係を見てみたい。まず領海については無害通航権が国際法で確立している。北朝鮮船だからといって日本領海を通るだけならそれを阻止することは難しい。だが港や内水(瀬戸内海など)の場合は違う。入れるかどうかは主権国家の裁量に任されている。 入港禁止法を作るかどうかはその国の判断といえる。
では日本が締結した条約との関係はどうだろうか。最も関係が深いのは1923年に成立した「海港ノ国際制度ニ関スル条約及規程」である。日本も1926年に加盟している。この条約は締約国に他の締約国の船舶に対し均等な待遇を与えることを義務づけている。そこだけ見ると特定の国の船舶を狙い撃ちして入港させないのは問題となりそうである。だがこの規程も第16条で安全保障上の理由での例外を認めている。それを持ち出すまでもなく北朝鮮はこの条約に加盟していない。仮に今後加盟したとしても日本は北朝鮮を国家承認していないので、本条約は日朝間には適用されない。要するに北朝鮮に発動する限り問題は生じない。
二国間条約との関係はどうだろうか。日本は約40か国と通商航海条約や海運協定を結んでいる。アメリカ、イギリス、中国、韓国、ロシア、オーストラリアなど日本の主要貿易相手国はほぼ網羅している。ここでは相手国の船舶に対し差別的な取り扱いをすることを禁じている。こうした国々に対して発動するのは条約を破棄しない限り無理だろう。しかし北朝鮮とそのような条約があるはずもない。 確かに入港禁止法が発動されれば条約を結んでいる国々の船舶も入港禁止にはなりうる。例えば北朝鮮に寄港した中国船は日本に入れなくなる。だがこれは決して差別的な取り扱いにはあたらない。中国船だろうと米国船だろうと日本船だろうと同じことをすれば入港禁止となるからである。
つまり北朝鮮を対象にする限り国際法にも条約にもなんら抵触するものはない。ただ海洋国家日本としては船舶の自由往来は重要な原則である。日本が妙な法律を作ったと第三国に思われるのも得策ではない。そこで法案の第8条に「この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意しなければならない」と入れておいた。あらぬ誤解を招かないための入念規定といえる。
◆入港禁止法の成立に向けて
この案が正式に自民党内で議論され始めたのは今年の1月29日である。安倍晋三幹事長も極めて前向きである。 自民・公明両党の間では通常国会で成立させるという大筋の合意もある。成立すれば当然北朝鮮は反発するだろう。「強硬には超強硬で対抗する」などというお決まりの声明が出てくるかもしれない。だが自らが勝手なことをするだけしながら圧力はかけるなという理屈は通らない。
国内にも反対や慎重の声はある。圧力でなく対話で解決すべきだという論調である。私も対話は重要だと考えている。とはいえ善意だけで通じる相手でないことは歴史が証明している。圧力の用意も必要である。また船が止まると海産物など日朝貿易で生計を立てている人たちに影響があるという指摘もある。影響を受ける人がいるからといって法律そのものが不要だということにはならない。発動の際には予算面などで一定の配慮を考えた方がよいというだけのことである。
そうした中「わざわざ新法を作らなくても現行法で対応できないのか」という声もある。最後にこれについて触れてみたい。現在の法律では北朝鮮船だからといって入港を阻止することはできない。 ただ今年の通常国会で油濁損害賠償保障法という法律が改正される。これによって無保険船の入港を禁止することができるようになる。背景にあるのは座礁船舶の問題である。座礁した船を撤去する責任は船主にある。だが船が保険に入っていないため船主にその資力がなく結局は放置されるということが頻発した。一昨年に茨城県沖で座礁したまま捨て置かれた北朝鮮船チルソン号はその一つである。そこで法改正して保険への加入が義務づけられ、今後は無保険船は入港禁止となる。北朝鮮船の保険加入率は際立って低い。日本に入港する外国船の保険加入率が平均73%なのに対し、北朝鮮船はわずか3%にすぎない。こうなると多くの北朝鮮船は実態としては締め出される。だから新法は不要ではないかという声も一部にはある。その考えには疑義がある。これはあくまでも保険の有無で入港規制をしているにすぎない。どこの国の船だろうと保険に入れば入港を認めざるをえなくなる。 やはり別途、「特定船舶入港禁止法」は必要なのである。
私たちが用意している入港禁止法が成立すれば日本外交の選択肢が広がる。北朝鮮というのは一筋縄ではいかない相手である。外交カードは多いほどよい。しかも圧力をかけうるということは抑止にもつながる。彼らがこれ以上の無法行為を自制することも期待できる。幸いこの法案には国民の強い支持もある。読売新聞の世論調査では80%の人が賛成している。これに応えるのが立法府の責務でもある。 私自身も立法府の一員として成立のために全力を尽くしていきたい。
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