「電力使用量のデータを隠すな(その2)」
2011.11.01
電力使用量のデータを隠すな(その2)
~隠蔽事業所数は501~
10月30日のブログに書いた通り、エネルギーを一定以上使った事業所はその使用量を経済産業省に報告することになっている。この報告の対象となっている事業所の数は全国に7804。このうち501事業所分のデータを経済産業省は非公開にしている。
この隠蔽事業所501のリストは明日のブログに掲載しようと思う。なお形式上は情報を隠蔽しているのは企業ではなく経済産業省である。ただ実際にはこれらの会社が同省に「公開しないでください」と頼んでいるので、「隠蔽事業所」と呼んでも的外れではない。
cf.エネルギーというのは電気だけではなく、重油、石炭、LNGなど熱エネルギーもある。そのためこの7804事業所が全国の電気使用量の多い方から上位7804事業所だとは限らない。
「データは全面公開されるべきだ」「電力使用量のデータがないと十分な法案審議ができないではないか」という私の主張については前回触れた。
8月25日の国会質疑では海江田万里経済産業大臣(当時)は公開に前向きな姿勢を示している。それから2か月経ったので「あれはどうなった」ということで10月27日の参議院環境委員会で私が質問をした。
国会では“その場しのぎの前向き答弁”というのに時折出くわす。追及された政府側が「よく検討させてください」「おっしゃることはよく分かるので、関係省庁と連絡を取り合いながら結論を出していきます」みたいな答弁で、その場だけは追及をかわす手法である。
答弁だけは前向きで、実際には何も進まないというのでは困る。それだけに海江田大臣の答弁が実行に移されたかどうかを検証しようと思ったのである
。
以下、10月27日の参議院環境委員会でのやりとりである。
〔水野賢一〕
(前略)経済産業省はそのデータ持っているんですよ。なぜならば、省エネ法という法律に基づいて、一定以上の電気を使っている企業は自分たちがどれだけ電気使ったということの報告を定期報告で経済産業省に上げていますから。で、質問しますけれども、この海江田さんの答弁の後新たに開示されたデータはあるんでしょうか。
〔経済産業省の新原浩朗・省エネルギー・新エネルギー部長〕
お答え申し上げます。その後開示したデータというのはございません。(後略)
〔水野賢一〕
大臣が公開するというように答弁して、その後新たに開示を何もしてこないというのはおかしいでしょう。じゃ、ちょっと聞きますけれども、今現在、幾つの事業所分のデータが公開されていないんですか。
〔経済産業省の新原浩朗・省エネルギー・新エネルギー部長〕
お答え申し上げます。省エネ法に基づき提出された定期報告書のうち直近の平成20年度の場合、エネルギー種類別の使用量等の報告の全部又は一部、一部だけでも不開示にしたものという事業者数というのは501か所でございます。ちなみに、第一種エネルギー管理指定工場が平成20年度の場合7804か所でございますから、7804のうち501か所が一部なりとも不開示になっているということでございます。
つまり答弁から2か月経って、公開はまったく進んでいないのである。このやりとりの中で、経済産業省側は新たな論法を持ち出してきた。「最高裁の判決があるから公開できない」というロジックである。同じ日の質疑でも松下忠洋経済産業副大臣はこう述べている。
〔水野賢一〕
これ、何か電気の使用量を新たに調査しろと言っているわけじゃないんですよ。つまり、持っているんですよ、経済産業省は。その持っているものを公開しますというふうに大臣も言っていながら、その501、公開していないのが現状なわけですね。(中略)これは副大臣、すぐ公開してください。
〔経済産業省の松下忠洋副大臣〕
海江田前経済産業大臣との間でやり取りがあったことは承知しておりまして、水野委員の質問の趣旨もよく分かります。その後、今事務方から答弁させましたけれども、最高裁判所の一つの判断が出てきておりますので、それによりまして、各工場における各種エネルギーの種別ごとの使用量を示す情報は、情報公開法第五条の不開示情報に当たると判断しており、各工場における電気の使用量自体はこれに該当しているため、そのデータ自体を公開することは最高裁の判決と矛盾することになるということで今答弁したことになると、そういうふうに言っているわけですね。
最高裁判決というのは10月14日の判決のことである。これについて少し説明しよう。エネルギー使用量のデータを公開しろと言っているのは私だけではない。同じような主張をしている人たちに環境NPO「気候ネットワーク」がある。この気候ネットワークが2004年にデータを公開するように求めた。政府の持っている情報は原則、情報公開法で公開することになっているため、それに則って公開請求したわけである。
ところが経済産業省は公開しなかった。そこでNPO側が開示を求める訴訟を起こした。一審、二審の判決は合計6回。うちNPOの勝訴(つまり開示しろという判決)が5回、国の勝訴(つまり非開示で構わないという判決)が1回だった。
上告の結果、裁判は最高裁にまでもつれ込み10月にその判決が出たわけである。最高裁は国に軍配を上げた。非開示で構わないということである。そこで松下副大臣も「公開することは最高裁の判決と矛盾することになる」と発言することになる。
そう聞くと、一見「最高裁がそう決めたんだからしょうがないじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかし実際にはそうではない。最高裁が何と言おうと経済産業省がこの情報を開示することは何の問題もない。もちろん違法でもなんでもない。
明日は隠蔽事業所のリストを公開する連載“その3”を掲載する。最高裁判決を口実にすべきでないことは“その4”で報告をする予定でいる。
cf.本稿で7804事業所、501事業所という数字を使ったが、これは第一種エネルギー管理指定工場の中での話であり、第二種エネルギー管理指定工場を含んでいない。そのため厳密に言うと隠蔽事業所数はもっと多い。
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