ガソリン税をどう考えるか
2008.02.01
「ガソリン税をどう考えるか」
~道路にしか使えない現状を打破すべき~
ガソリン税をめぐる議論が活発になっている。この問題についてどう考えるか水野賢一衆議院議員に聞いた。
Q1:ガソリン税が話題になっていますが、どういう税金なのですか?
水野:ガソリンには消費税以外にも1あたり53.8円の税金がかかっています。これがガソリン税です。同様に軽油には軽油引取税という税金が32.1円かかっています。ガソリンスタンドで軽油の価格の方が安いのはかかっている税金が安いからなのです。ちなみにタクシーなどで使われるLPガスに石油ガス税が課されています。消費税以外はいずれも道路整備のためだけに使われてきたので道路特定財源と呼ばれています。
Q2:民主党はこのガソリン税を下げるべきだと主張していますね。
水野:ガソリンは約25円、軽油は約17円引き下げるべきだと言っています。一方、自民党の道路族や国土交通省は「まだまだ地方では道路が必要だ。都市部でも開かずの踏切対策や渋滞対策に道路整備が必要だ」として税率の維持を主張しています。私はそのどちらともちょっと違う考えですね。
Q3:民主党案には問題があるということですか。
水野:税率を下げると国と地方合計で年間2.7兆円もの減収になります。財政赤字を膨らませるのは無責任なことですし、そのツケは結局消費税アップで回ってくるだけです。一方、道路にしか使えないというこれまでの仕組みも改めるべきです。せっかくの税金である以上、福祉・教育・環境・治安などその時々で国民が求めている分野にも回せるようにすべきです。もちろん必要な道路建設に使うことは否定はしませんが、「道路にしか使えない」として道路を聖域にすることはおかしなことです。
Q4:道路にしか使えないという法律を作ったのは田中角栄元首相だったそうですね。
水野:ガソリン税は昭和24年にできましたが最初は何に使ってもよかったのです。それを昭和29年に当時まだ若手議員だった田中角栄氏が主導して全額を道路に使うという議員立法を行ないました。その時代は戦後復興期ですからこうした法律を作ったこともまあ理解できますが、それから50年以上たった今では制度改革が必要です。ようやく今年から与党も税の一部を道路以外にも使うことを認めましたが、こうした改革をもっと推進していくべきです(注)。
(注) 税収の全額を道路整備に使うことを定めた道路整備費財源特例法という法律は平成20年に改正される。しかし改正後も”道路が優先、余った分は他にも使う”というものであり、より徹底した改革が求められている。
◆暫定税率とは
ガソリン税は揮発油税法などによって128.7円とされている。これを本則税率という。ところが道路整備を推進するため昭和49年以来、5年ごとに租税特別措置法という法律で暫定措置として税率を53.8円に引き上げてきた。これが暫定税率である。たまたま平成20年3月末でこの5年の期限が切れるので、存続するかどうかが大きな議論となる。
◆諸外国に比べて高くない日本の税率
ヨーロッパ諸国は消費税が高いことに加え、ガソリンにかかる税金も高いので1200円を超える国も珍しくない。
◆地球温暖化とガソリン税
ガソリンの税率を下げるということは、ガソリンを使いやすい社会を作ることにつながる。そのため二酸化炭素排出を増やし地球温暖化を加速するという指摘もある。環境省の試算ではガソリン25円・軽油17円の値下げは国内の年間二酸化炭素排出量を2200万トン増加させるとしている。
◆自動車燃料にかかっている税金(平成19年度)
暫定税率による上乗せ分
ガソリン税(153.8円)/31521億円/14698億円
軽油引取税(132.1円)/10360億円/5519億円
石油ガス税(117.5円)/280億円/上乗せはなし
・細かくいうとガソリン税というのは揮発油税(48.6円)と地方道路税(5.2円)の総称だが、いずれもガソリンにかかってくる。
・この他に自動車を取得する時にかかってくる自動車取得税、自動車を保有している時にかかってくる自動車重量税の大半も道路特定財源となっており暫定税率による上乗せ分もある。
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