予算委員会質疑のハイライト引用(天下り・その2)
2016.05.24
5年前の3月11日に東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原発事故が発生した。その4日前の3月7日に私は参議院予算委員会で東京電力への天下り問題を追及した。前年(2010年)8月まで資源エネルギー庁長官だった人が、この年(2011年)の元旦に東京電力顧問に天下っていたからである。「顧問」というからアドバイスだけをするのかと思いきや月給120万円というのだから、とんでもない天下りである。しかも資源エネルギー庁長官から東京電力なのだから所管業界ど真ん中への天下りだった。
この時は民主党政権だったので「野党時代にはあれだけ天下りを批判していた民主党がこんな露骨な天下りを容認しては駄目ではないですか」というトーンで追及をした。しかも天下りを監視するために再就職等監視委員会という組織を設置することが法律上決まっているにもかかわらず、この時点では政府が委員を任命していなかったために監視機能が働いていなかった。そこでこの問題も取り上げた。
この質疑の4日後に大震災と原発事故が発生したわけである。当然のこと経済産業省(資源エネルギー庁は経済産業省の外局)と東京電力の癒着は批判の対象となり、この「顧問」は4月末をもって退職することになった。また再就職監視委員会もその後、委員の任命が行われた。
そこでこの時の質疑の一部をここに掲載しておく。
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〔参議院予算委員会:2011年3月7日〕
○水野賢一君
(前略)今年も元旦早々からとんでもないことが起こった。去年の8月まで資源エネルギー庁の長官だった人、石田徹さんという方ですけれども、この方が辞めてたった4か月の今年の元旦付けで東京電力の顧問になった。しかも報酬付きだという。これ自民党時代よりもひどい天下りじゃないですか。何でこんなことが許されるんですか、総理。
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なおこの問題は同年5月20日の参議院予算委員会でも再び取り上げた。
〔参議院予算委員会:2011年5月20日〕
○水野賢一君
(前略)去年の8月まで資源エネルギー庁の長官だった人が何と今年の元旦付けで東京電力に天下ったんですね。これ、自民党よりひどいですよ。自民党政権時代は曲がりなりにも2年間は民間企業に原則天下れなかったんですから。まあ抜け道がいろいろあった、それは問題があるんだけれども。しかし、民主党政権は、これは天下り根絶、全面廃止というふうに言っていたにもかかわらず、2年はおろかたったの4か月で、所管業界ど真ん中ですよ、資源エネルギー庁の長官だった人が東京電力ですから。こんなことが許されるのかというふうに、言行不一致そのものだというふうに思いますが。
では、東京電力にお伺いしますけれども、この天下り官僚の石田徹氏、在職中、東京電力でどのぐらいの報酬受け取っていたんでしょうか。
○参考人(武藤栄君)
まずは、福島第一原子力発電所の事故によりまして、多くの方々に大変に御苦労、御不便をお掛けし、また皆様方に大変な御迷惑、御心配をお掛けいたしましておりますことを深くおわびを申し上げたいと思います。申し訳ございません。
御質問の件でございますけれども、報酬につきましては月額120万円程度をお支払いしておりました。賞与は支給しておりません。
注)武藤栄氏は東京電力副社長。
〔現時点での水野賢一の感想〕
2009年に民主党政権が発足するにあたっては「従来のしがらみにとらわれずに天下りなどの政官業の癒着にメスを入れてほしい」という国民の期待があったと思う。残念ながらこの原発事故時点ではこの天下り問題への取り組みは甘かったと思う。ただ枝野官房長官や福山官房副長官らの答弁には「こうした癒着を放置してはいけない」という気持ちは滲み出ており、こうしたことがこの「顧問」の4月の退任につながったのだろうとは思う。
また3月7日の菅直人首相の答弁を機に再就職等監視委員会の人選が進むようになったのは良かったと思っている。いずれにしても思い出深い質疑の一つである。
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