再就職等監視委員会がようやく発足
2012.03.19
再就職等監視委員会がようやく発足
◆天下りの監視機関
みんなの党が掲げる改革のうち大きな柱の一つが公務員制度改革である。渡辺喜美代表が大臣だった時に天下り問題などに取り組んだことを記憶している方々も多いだろう。渡辺代表が特命担当大臣だった5年前に国家公務員法を改正しているが、それによって設立が決まった新組織がこの3月ようやく正式に発足する。再就職等監視委員会である。今回はそれについて述べてみたい。
みんなの党は天下り根絶を掲げている。だがなにも官僚・公務員は退職後一切就職してはいけないなどと言っているわけではない。まず根絶しなければならないのは役所自身が再就職をあっせんして民間企業などに押し付けることである。民間企業や財団法人の同じポストに指定席のように何代も連続して同じ省庁の人が天下っているのだから政府がいくら「あっせんはない」と言っても誰も信じない。
また天下ったOBが以前の部下に口利きをして公正な競争を歪めることも問題である。こうしたことがあるから企業も官庁出身者を破格の待遇で迎えることになる。
そこであっせんや口利きの禁止が必要になるが、そのためには監視する機関が必要だ。それが再就職等監視委員会である。先に述べた通り、これを設立することは2007年の国家公務員法改正で決まった。ところが実際に立ち上がるのは今年にまでずれ込んだ。その背景には天下り問題に不熱心な民主党と自民党の姿勢があった。
◆監視機関の委員不在が続く
再就職等監視委員会は5名(監察官や事務局を含めれば40人くらいになる)で構成されるが、この5名は国会同意人事である。つまり「政府による人選」→「国会への提示」→「衆参両院が人事案を可決」となって初めて就任することになる。法制定時は自民党政権だった。しかし参議院は民主党が多数のねじれ国会であり、人事案の提示は3回参議院で否決された。そのため委員不在の状況が続き、監視委員会は機能しなかった。
2009年に民主党政権が誕生する。民主党は委員の提示さえ行なわなかった。もちろんその間、天下りがまったくないのであれば監視機関も不要だろう。しかし民主党政権になっても例えば資源エネルギー庁長官だった人が退職後わずか4か月で東京電力に天下るなどということが起きていた(待遇はなんと月給120万円だったが、天下りの2か月後に原発事故が起きたため批判が集中し東電も退職することになった)。
政府が委員の人選さえしないという馬鹿な話はない。本来政府は法律に基づいて行政を行なうのが仕事である。国家公務員法という法律に再就職等監視委員会を設置すると規定しているにもかかわらず、それをせずに放置するというのは政府の怠慢以外の何物でもない。
◆自民党まで反対、そしてようやく成立
私たちもこうした民主党政権の姿勢を強く批判した。それを受けて政府もようやく重い腰を上げて昨年5月に人事案を提示してきた。ところが驚いたことに、今度は自民党が採決に応じないという姿勢をとった。監視機関を作ることは自民党政権下で渡辺大臣の時に決まったにもかかわらずである。要は民主党も自民党も本音では天下り監視はやりたくないということだろう。自民党内でも守旧派の勢力が盛り返しているということかもしれない。
今年になって政府は再度人事案を提示してきた。民主党政権になって3回目、自民党政権以来通算6度目である。ようやく今回は衆参両院で可決され、3月の再就職等監視委員会の発足に至る。
難産であったことは間違いない。ここに至る民主・自民両党の姿勢も理解に苦しむ。しかし発足した再就職等監視委員会がしっかりと監視機能を果たすことを期待するばかりである。
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