取り調べの可視化
2010.06.22
私が衆議院議員だった時の選挙区は、佐倉市、四街道市、八街市、千葉市若葉区でした。この千葉市若葉区貝塚町に千葉刑務所という刑務所があります。
全国に刑務所は62か所あります。千葉県内には、千葉刑務所と市原刑務所(こちらは俗に交通刑務所と呼ばれる)の2か所です。
この千葉刑務所が昨年注目されました。足利事件の犯人とされた菅家利和さんが、ここに服役しており、冤罪だったことが判明したために昨年6月、釈放されたからです。
当然のことですが、冤罪があってはなりません。私が法務副大臣だった時にも富山県の氷見事件という冤罪事件が問題となりました。
「無実の人を罪に問うこと」「真犯人を取り逃がすこと」は、いずれもあってはならないことです。こうしたことが再発しないように努めなければなりません。
冤罪防止の具体策として「取り調べの可視化」を主張する人もいます。
強圧的・強引な取り調べが偽りの自白の温床になるので、取り調べを録音・録画しようという考えです。
結論から言えば私はこの「可視化」には慎重・反対です。捜査の足枷になり、犯罪、特に組織犯罪などを助長しかねないと考えるからです。
氷見事件、足利事件などが繰り返されてよいはずがありませんが、羹に懲りて膾を吹くのが正しいとも思えません。
可視化すべきだという論者にもいろいろなタイプがいます。
まずイデオロギー的な立場から捜査を邪魔しようという可視化論者もいます。これは論外です。
他方、取り調べを適正化するための真摯な立場の可視化論もあります。こうした真面目な可視化論をきちんと議論するのは決して悪いことではないと思います(とはいえ、前に述べた通り私は可視化に反対ですが)。
ところが近年は政局絡みで「可視化」を唱える人たちが出てきました。小沢一郎・民主党幹事長の政治資金問題の捜査中のことです。
可視化には警察・検察は反対しています。ですから民主党内で「そんな捜査をするなら可視化の法案を出すぞ」というような圧力まがいの動きがあったのです。
そんな不純な動機で可視化を唱えるなど、驚くべきことと言わざるをえません。
司法手続きというのはあくまでも法と証拠に基づいて進められるべきです。「起訴すれば法案も出すぞ。起訴しなければ法案提出も取り下げる」と言わんばかりの手法など、何をかいわんやです。
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