安保法案の参院論戦を前にして
2015.07.17
昨日、安保関連法案が衆議院を通過した。政府案では改正する法律は自衛隊法や周辺事態法など10本に上っている(他に1本の新法制定がある)。では10本の改正にそれぞれ賛成・反対を投じるために10回採決をしたのかというと、実は採決は1回で終わっている(他に維新の党の対案の採決はあったが)。なぜかというと1本の法案によって10本の法律をまとめて改正する“束ね法案”という形を取っているからだ。
これだと「A法、C法、D法、F法の改正は絶対反対、一方でB法とE法の改正には賛成できる、G法の改正は判断材料が不足しているので棄権したい」というような投票行動ができなくなる。束ねられている以上、A法からJ法まで一括して賛成か反対か棄権の選択肢しかないことになる。丁寧な議論が必要な安全保障の問題で、こうした乱暴なやり方をしてはいけない。
報道を見ていると「衆議院で116時間も審議した割には議論が深まっていない」という論調が多いが、その背景にはこのような政府の法案の提出の仕方もあると思う。これだとどうしても細部にわたった丁寧な議論がしにくくなる。その結果、違憲か合憲かといった入り口の議論に終始してしまった感がある。だが実際には10本もの法律を改正するのだから、詳細に内容を見るとPKOの話、在外邦人の保護、米軍以外への支援など様々な内容が盛り込まれている。中にはほとんど議論が煮詰まっていないものも多い。それだけに今後、始まると見込まれる参議院での審議では、私自身もできる限り細部にも気を配った質疑・追及をしていきたいと思っている(別にあら探しをするつもりはないが、見過ごされてきた論点が将来、大問題となる可能性は十分あるので)。
なお私としては今回の法案の中には、理解できる部分もあれば、あくまでも反対だという部分もある。もちろん審議の中で政府答弁を聞きながら考えていきたいという部分もある。評価できる部分を挙げれば、例えば私が以前から予算委員会などで指摘し、ブログにも書いた「海外で犯罪を犯した自衛隊員にはなぜ自衛隊法の罰則が適用されないのか」という問題に改善が見られている点である。改正案では自衛隊法にも国外犯処罰規定が新設している(それでも罰則が軽すぎるという問題はあるのだが)。
しかし前述した通り、“束ね法案”である以上、残念ながら“ここは賛成だが、ここは反対”という意思表示はできなくなっている。総体として、賛成か反対かを意思表示せざるをえない。そうである以上、採決時には反対票を投じるということも決めている。来たるべき参議院審議の中では、その理由や根拠なども示しながら、問題点を具体的に指摘して論戦を行っていきたい。
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