江田憲司氏らの離党届提出を受けて
2013.12.09
※12月9日に書いたブログに、特に後半部分にかなり加筆訂正したものを12月10日に掲載しました。
◆14人の離党届
本日、江田憲司衆議院議員をはじめ14名の国会議員がみんなの党に離党届を提出した。いままで同志として共に活動をしてきた仲間たちなので大変残念なことである。私はいま党政調会長兼参議院国対委員長という役職についている。にもかかわらず、こうした事態を防げなかった点については、我が身のいたらなさを反省するしかない。
あらためて書くまでもないことだが、私の去就についても一言触れておきたい。私自身はみんなの党の一員として、党の立て直しと日本の改革に邁進していく決意を新たにしているところである。
◆記者会見を見た感想
夕方、江田氏の離党記者会見をテレビ中継で見ていたが、理解できる部分と違和感・疑念を持つ部分があった。理解できる部分から言うと、江田氏が自公政権の数の暴走を厳しく批判し、それに歯止めをかける勢力作りを力説した点である。今年1月の党大会で採択された運動方針にも「数をたのんだ暴走にはしっかりと歯止めをかけていく」と明記されている。先日閉会した臨時国会での与党の国会運営の横暴ぶりを見れば、これに歯止めをかけたいという思いは十分に共感できる。
しかし今回の離党に対しては違和感の方がより大きいのも事実である。以下、その違和感について述べてみたい。小さな問題から本質的な問題までいろいろあるが、以下箇条書きに、まとめておく。
①「自分からは離党しない」と言っていたのではないか?
江田氏は「新党準備行動はしていない」「自分からは離党しない」と言っていたはずである。しかし本日の行動は「自分からの離党」である。党としては江田氏に対しまだ何らの処分(例えば離党勧告など)はしていないからである。この点では、いままでの言説との整合性に疑念を感じざるを得ない。
②なぜ代表選に立候補しなかったのか?
江田氏がかねて渡辺代表の党運営に不満を抱いていたことは知っている。しかしそれならば自ら代表選に立候補すべきだったのではないだろうか。昨年秋には渡辺代表の任期満了に伴い代表選が行われた(実際には渡辺代表が無投票再選された)。私の記憶によれば、この時点でもうすでに江田氏は代表の党運営に対してかなり批判的だった。それならば代表選に立候補して、自ら党改革に当たろうとするならばまだ分かる。
ところが実際には立候補するどころか、江田氏自身が渡辺代表の推薦人になったのである。また今年の夏にも渡辺代表が「私は党首を辞任して代表選をやり直してもよい」と言ったことがある。なぜこの時に代表選に応じて、党改革などを掲げて勝負に出なかったのだろうか。少なくともいきなり年末に新党を立ち上げるよりは、その方が筋の通った行動ではないかと思う。
③政策・理念は一致しているのか?
いま最大の焦点となっている政策課題といえば特定秘密保護法である。江田氏と共に離党した人たちを見ると、法案採決時の対応は三者三様に分かれている。
賛成・・・畠中光成、井坂信彦ら
反対・・・井出庸生、川田龍平ら
欠席・・・江田憲司ら (敬称略)
このメンバーで新党を結成するというのである。最近20年くらいの政治史を見てみるといくつもの新党ができては消えた。しかし結党時から法案の賛否がまったく分かれている政党というのは珍しいのではないか。例えば昨年、民主党から小沢一郎氏らが離党して「国民の生活が第一」という新党を結成した。この人たちは消費税増税法案に反対をして民主党を離党したわけである。2005年には郵政民営化法案をめぐって「国民新党」という政党が結成された。これは同法案の採決で造反した自民党議員によって作られた。いずれの場合も出発点では新党メンバーの投票行動は一致していたのである。
それに対して今回の場合は、最初から採決行動がバラバラだった人たちによる集団離党である。これにはやはり違和感を覚える。江田氏自身が常々「政策や理念の一致が必要」と言っていることに反するのではないだろうか。
(なお江田氏が記者会見で語った政策・理念のうちほとんどはみんなの党が掲げている政策・理念そのものだった。それらについては私も当然ながら賛同している。)
④与党にすり寄っているのはどちらか?
江田氏は「今のみんなの党は自民党にすり寄っている」と批判している。確かに特定秘密保護法案ではそう見えたかもしれない。法案を修正すれば賛成するという姿勢を取ったのは事実だからである。
しかし法案によっては時に与党と同一行動をとることがあるのは当然ではないだろうか。みんなの党は“何でも反対”の政党ではない。是々非々である。そうである以上、政府提出法案に“是”という姿勢をとることがあるのは何らおかしなことではない。
また江田氏が幹事長だった頃からみんなの党は「クロス連合」を掲げている。ある政策では自民党と組んで、別の政策では民主党と組み、さらに他のテーマでは維新の会と一緒に議員立法を提出するというわけである。個別法案で自民党に協力したとしても、それはクロス連合の一貫にすぎない。少なくとも「与党へのすり寄り」という批判はちょっと行き過ぎだろう。
「すり寄り」というならば一番ひどいのは日本維新の会である。維新の会は会期末の12月6日に採決された安倍内閣不信任案に反対したのである。これは野党としては驚くべき行動と言わざるをえない。内閣不信任案というのは個別法案ではない。内閣そのものを支持するのかしないのかの指標である。これに賛成するか反対するかは与党と野党を分けるメルクマールといっても過言ではない。しかしその不信任案の採決で維新の会は与党と同一行動をとったのである。これでは「あなた方は本当に野党なのですか」「事実上、閣外協力ですか」と言われても仕方あるまい。ちなみにみんなの党は当然のことではあるが、不信任案に賛成した。(江田氏らも同様に賛成したが、「江田新党」に合流すると言われている柿沢未途氏はどういうわけか与党に同調した)。
維新側は与党と足並みを揃えたことを正当化するために、妙な手続き論を展開しているが、そんな理屈は部外者にはまったく分からない。維新の会が実際の投票行動で自公政権を信任する立場にたったという事実は拭えないのである。みんなの党が与党にすり寄ったと批判する前に、維新の会が自民党の補完勢力だという事実を直視するべきである。「江田新党」はその維新の会にすり寄ろうとしているように見受けられる。いわば補完勢力の補完勢力になろうとしているのではないか。これではどちらが与党にすり寄ろうとしているのかという気がする。
(恐らく江田氏は「維新の会丸ごとと組むつもりはない」と言うのかもしれないが、疑念は尽きない)。
なお参考のために先日閉会した臨時国会での各党の投票行動に関する数字を掲げておきたい。10月から12月まで開会していた臨時国会では27本の政府提出法案が成立した。これらの採決時に各党が何本の法案に反対したかを比べてみよう。
みんなの党 8本
民主党 3本
維新の会 2本
共産党 19本
自民党 0本
自民党は与党なのだから政府提出法案に反対ゼロなのは当たり前のことである。だが維新の会もわずか2本に反対しただけである。しかも不信任では与党と歩調を合わせている。これこそ補完勢力と呼ばれるのにふさわしいだろう。その勢力との連携を模索している人たちから「みんなの党は自民党にすり寄った」と悪罵を投げかけられるのは残念なことである。
⑤比例選出議員の離党は許されるのか?
今回離党届を提出したのは江田氏を含め14人である。そのうち江田氏を除く13人が比例代表選出議員である。比例代表制というのは基本的には党に対する投票である。だからこそ比例選出議員の政党間移動は法律で原則禁止となっている。
ただし法律には例外がある。新党に対する移籍だけは許されているのである。つまり離党して、新党を結成するというのは法律上は許容されている。しかし違法行為ではなくても脱法行為に近いのは間違いない。
そのことは江田氏自身が認めている。昨年みんなの党所属の参議院議員3人(いずれも比例代表選出)が維新の会に移るために離党届を出してきたことがある。その折に当時幹事長だった江田氏は9月25日の記者会見でこう述べている。
「3名に対しまして、みんなの党として議員辞職勧告をするという決定をいたしました。理由は申すまでもございません。全国比例選出議員が、任期半ばを迎える前に離党し、その議席をもって新たに結党される政党の議席とする行為は我が党支持者は言うまでもなく、社会一般の倫理観からは容認できないということでございまして、この3人につきましては議員辞職勧告をするということでございます」
まさにその通りである。比例代表とは政党への投票が基本の制度である。そこで当選した議員が自分の都合で政党を渡り歩くことは有権者の意思を踏みにじるものであり「社会一般の倫理観から容認できない」のである。それゆえに新党に行くならば議員辞職をした上で行くべきなのである。
恐らく離党組は「みんなの党の方が変質してしまった。自分たちこそ党に投票した人たちの意思に忠実だ」とでも言うのだろうが、そんな御都合主義の理屈が通用するはずもない。もしそう主張するのであれば、議員辞職した上であらためて選挙に出馬して有権者の意思を確かめ直すべきである。
◆結び
以上、5点にわたって私の感じた違和感や疑念を述べてきた。誤解もあるかもしれない。しかし今感じていることを正直に述べてきたつもりである。
今回の件はみんなの党にとって結党以来最大の試練かもしれない。しかし残ったメンバーによってこの荒波を乗り越えて進んでいきたい。
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