1999年の論文
2010.06.20
上海万博は万博史上最大規模という触れ込みで始まりました。入場者数の目標も過去最大だった1970年の大阪万博の6400万人を上回る7000万人となっています。
これまでのところ入場者数は予想に比べて低調なようですが、中国としては威信に賭けてもこの万博を成功させようとするのは当然でしょう。
中国での大イベントとしては2年前の北京オリンピックが思い出されます。この時、中国政府は「五輪を政治利用するな」と盛んに言っていました。
五輪直前にチベットで暴動があり、中国がこれを強権的に弾圧したために各国で抗議が相次いだ時のことです。
「ジェノサイド・オリンピック反対」という批判のうねりが起き、聖火リレーが各国で抗議の標的になりました。
注)ジェノサイドは民族虐殺のこと
日本でも長野で聖火リレーがありましたが、抗議グループと大挙長野に押しかけてきた中国人グループが衝突したことが報じられました。
「五輪を政治利用するな」というのは「五輪をきっかけに中国を批判するな」ということで、実は一番政治利用していたのが中国自身でした。
北京五輪こそ最高の国威発揚の場となったわけです。そして今回の万博もそうです。史上最大の万博を成功させることで躍進する中国を強く印象付けようとしています。
隣国が経済発展すること自体は決して悪いことではありません。しかしそれによって、言うべきことも言えなくなるのは困ります。
現在の中国にはチベット・ウイグル問題や民主化運動に対する激しい人権弾圧があります。
こうしたことに対しては当然、国際的な批判があるわけですが、中国が経済発展するにつれ、各国とも批判を差し控えるようにもなりがちです。
下手に刺激して巨大なマーケットから締め出されたらかなわないと思うのでしょう。
それに加えて日本の場合は過去の歴史問題があるだけに「中国には負い目がある」として、さらに批判を自粛しがちな人もいます。
しかしこうした「位負け外交」ではいけないと思います。
私が1999年に衆議院議員に初当選した直後に、当時所属していた自民党の機関紙『自由民主』に「外交と人権について」という文章を寄稿しました。
その文章は以下のように結びました。
「人権は民主化の押し付けは望ましいことではない。しかし無関心というのはもっと悪いのではないだろうか」。
今でもそう思っていますし、五輪や万博を見るにつけその思いを強くしているところです。
*「外交と人権について」の全文は本ホームページの「賢一の主張」の1999年の部分に掲載しています。
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