「成田新高速鉄道の予算が計上」
たゆまぬ努力の中、ついに予算を確得。2010年開業に向け大きく前進させる
◆成田新高速鉄道の予算がつく
平成14年度予算の編成も終わった。私にとって特筆すべきことはこの中に成田新高速鉄道の関連予算が新たに含まれたことである。この鉄道の整備については昨年の衆議院選挙でも公約として掲げた。ホームページやチラシでも数回にわたってその必要性を訴えてきた。予算が獲得できたことにより2010年開業という目標に向け、大きく前進したことになる。心から喜ぶとともに関係者の御尽力に感謝申し上げたい。
この鉄道が完成すると成田空港と都心は36分で結ばれることになる。これまで同じ区間を京成スカイライナーが51分かかったのに比べると15分の短縮である。新東京国際空港公団が今年発表した日本人旅行者対象のアンケート調査によると、成田空港への満足度は施設の清潔さなどでは高いのに対し、空港へのアクセスについては世界の主要25空港中ワースト1になっている。都心から遠いというのが成田空港の弱点だった。それがこの鉄道によって改善されることになる。空港から1時間以内の昼間人口も288万人から1114万人に増えるという。さらに忘れてはならないのが千葉ニュータウンの利便性が高まることである。現在は都心との交通があるだけで袋小路になってしまっているこの地域から成田にも容易に行けるようになる。
◆画期的な補助率の嵩上げ
実はこの鉄道の構想を運輸省(現・国土交通省)が打ち出したのは昭和59年のことである。だがその後長い間、事実上なんの進展もないまま放置されてきた。鉄道建設には莫大な資金が必要である。その資金調達の目途が立たなかったからである。そこで国による補助が求められていた。今回、画期的だったのは成田新高速鉄道に限って補助率が嵩上げされたことである。成田空港のようにアクセス改善が求められている部分には重点的に公的助成をすべきだという主張が受け入れられた。これまでの仕組みでは空港にアクセスする鉄道の場合、建設費の36%を国と地元が補助するようになっていた。それがこの成田新高速鉄道に限っては国と地元で合計3分の2の補助をすることになったのである。これによって建設に弾みがつくことになる。
私も補助率の引き上げを求めて昨年4月に国会質問をした。成田の利便性を高めるために国が責任を持つ必要があると考えたからである。ただその頃はまだ、補助率嵩上げはとても無理といった雰囲気だった。アクセス鉄道の必要性を十分に理解してくれる人の中でさえ諦めの感が漂っていた。財政難の中、補助率を引き下げることはあっても引き上げなどは夢のまた夢という反応だった。 それを振り返ってみると我ながらよくここまできたという思いもある。また開業時期についても当時は2015年と言っていたが、現在では2010年を前提に話が進むようになったことも感慨深い。
もちろんまだまだ越えるべき山は多い。例えばこの路線は印旛沼の上を通過することになるので環境アセスも大きな課題である。また資金面一つをとってみても地元負担という場合の千葉県と市町村の負担割合もこれからの折衝になる。今後もこうした諸問題を一つずつ解決していく努力が必要である。
◆アクセス改善で都市再生へ
政治の世界では「我田引水」ならぬ「我田引鉄」という言葉が使われる。 政治家が地元への利益誘導として鉄道を引っ張ってくるという意味である。整備新幹線などでよくみられる光景である。これは今に始まったことではない。
大正期の平民宰相・原敬が露骨な「我田引鉄」によって政友会の党勢拡張を図ったことは有名である。成田新高速鉄道も地元の利益になることは間違いない。だがそれは決して単なる地域エゴではない。空港の利便性をよくすることは成田に空港を建設することを決定した国の責務である。また空港と都心を速く結ぶということは地元のみならず多くの国民や旅行者の利益にもつながる。今になって初めて予算が採択されたというのはむしろ遅きに失したといえるくらいであろう。
先に述べた通り、この鉄道の構想は以前からあったものの長らく凍結状態にあった。建設に向けての機運が加速度的に高まってきたのは昨年からのことである。私自身も多少はその気運を醸成するのに寄与しえたと自負している。だが最後の決め手になったのは今年になって千葉県において堂本知事が誕生し、国において小泉内閣が誕生したことだと思う。堂本知事は就任後、真っ先にこの鉄道の必要性を訴え、国に対しても働きかけを続けた。 また小泉政権は「都市再生」を大きな政治課題として掲げた。こうして都市住民の生活利便性を向上させるためにも空港アクセスの改善が必要だという雰囲気が盛り上がってきた。こうした追い風が予算獲得につながったといえる。
◆調査なくして発言権なし
私自身もこの問題に取り組むことは大いに勉強になった。補助率の引き上げなど難しいとされていた課題が多かっただけに、徹底的に調べ上げる必要があった。また地域エゴではないことを分かってもらうためにも部外者を説得できるだけの材料も揃えなければならなかった。そうした中で痛感したのは、政治家が自分で物事を調べていくことの重要性である。同僚の議員たちの中にも、よく知らないことや単なるその場の思いつきを平気で得々と語る人もいる。だがそうした議論には説得力がない。現実を動かすだけの力もない。
『毛沢東語録』に“調査なくして発言権なし(没有調査、没有発言権)”という言葉がある。私は毛沢東を尊敬するどころかむしろ批判する側に立つが、少なくともこの言葉は真実を衝いていると思う。調査をすることで発言にも重みが増す。調査なくして政策立案能力を高めることもありえない。
成田新高速鉄道の実現に向けては一つの区切りがついた。しかし今後の政治活動にあたっても徹底した調査とそれに基づく説得力ある提言を続けていきたいと自戒を込めながら考えている。
cf.成田新高速鉄道については「水野賢一ホームページ」の“水野賢一の主張”欄の2000年6月8日、01年2月4日、01年8月17日でも取り上げている。ご参照いただきたい。
〔参考資料〕
◎成田新高速鉄道の総事業費
新線区間 917億円
北総・公団線区間改良 295億円
空港駅改良(インフラ外部) 74億円
空港駅改良(インフラ部) 281億円 合
計 1567億円
◎財源スキーム
空港内インフラの281億円は空港公団が整備
残りの1286億円のうち、
・負担金 261億円…地元と空港公団が負担
・出資金 205億円…地元、空港公団、その他で出資
・補助金 461億円…国、地元が230億円ずつ
・借入金 359億円…線路使用料収入から充当
(以上、国土交通省資料より作成)
cf.補助率は3分の2だがあくまでも補助対象事業費の3分の2のため1286億円の3分の2にはならない。