『地球温暖化を防止するために』
地球温暖化対策は待ったなしの状況になっている。取リ組みの第一人者 · 水野賢一衆議院議員に話を聞いた。
Q1 水野さんは地球温暖化問題に熱心に取り組んでいますがどうしてですか?
水野:人類を含む地球上の多くの生物の存続に関わる重大問題だからです。気温が1℃上昇するとマラリアなどの感染症で死亡する人が30万人増加し、水不足で苦しむ人が5000万人増えると予測されていますが、このままだと最悪の場合、今世紀末までに気温が6.4℃も上昇するとされています。もちろん経済的な打撃も深刻です。温暖化によって世界のGDPは5~20%減になると危惧されています。こうした悪影響を食い止めるためには病気と同じで早めの対策が必要だと思います。
(注)気温上昇の予測や被害の予测はIPCC第4次許価報告書やスターン · レビューによる。
◆温暖化と生物多様性
地球上には6000種の哺乳類をはじめ昆虫 · 植物 · 菌などを合計すると175万種の生物が確認されている。未確認のものを含むと500~3000万種の生物が生息していると見られるが、近年は毎年4万種も絶滅していると推定されている。そのすべての原因が温暖化だとはいえないにせよ大きな影響を与えていることは問違いない。最近では温暖化の影響でホッキョクグマの絶滅が危惧されており、現にカナダのハドソン湾では海水面積の滅少によりホッキョクグマが狩りができなくなり平均体重が295kg(1980年)から230kg(2004年)になってしまったという研究報告もある。
Q2 二酸化炭素(C02)の排出が問題になっていますね。
水野:大気の中の二酸化炭素(C02)濃度はわずか0.04%弱にすぎませんが、この微量なC02濃度が徐々に上昇していることが地球温暖化を引き起こしています。C02は石炭や石油といった化石燃料を燃やす時に発生します。それだけに化石燃料の消費をできるだけ抑制することやCO2を出さない新エネルギーを普及させることが大切です。
◆大気の成分
大気の成分は
窒素 78.08%
酸素 20.95%
アルゴン 0.93%
二酸化炭素 0.04%
※0.04%とは400ppmのこと。二酸化炭素濃度は250年ほど前に産業革命が始まる以前は280ppmだったが、現在では380ppmにまで上昇している。
◆他の温室効果ガス
温暖化を引き起こすガスとしては二酸化炭素以外にもメタン、一酸化二窒素、代替フロンなど多くあり温室効果ガスと総称される。ただ日本の場合、温室効果ガスの95%が二酸化炭素である。これに対しニュージーランドでは羊や牛のげっぶに含まれるメタンが温室効果ガスの35%を占めている。
Q3 政策として何をすべきですか?
水野:これさえやればすぐに解決という特効薬はないので総合的な取り組みが必要ですが、例えば自然エネルギーの普及はーつの柱でしょう。福田首相も国内での太陽光発電の導入量を2020年には現在の10倍、2030年には40倍にするという目標を発表しましたが、こうした政策を後押ししていきます。他にも森林はC02を吸収するので、その保全にも努めなければなりません。また東京都は2010年から大量排出源に対して排出制限を独自にかけ始める予定ですが、国としてもこうした規制策を全国的に実施する必要があります。
Q4 水野さんは環境派の急先鋒としてずいぶんと経済産業省や産業界と対決してきましたね。
水野:国内の二酸化炭素排出を見ると8割が企業からで2割が家庭からです。そこで私は大口排出企業の二酸化炭素排出量を公表すべきだとかねてから主張していました。データがなければ効果的な対策も取れませんから。ところが経済産業省やー部産業界は「企業秘密だ」として隠そうとし続けました。まったく後ろ向きの姿勢と言わざるをえません。結局、私が党の環境部会長だった時に排出量公表を義務化する法律を成立させましたが、今後も反対があっても必要な政策は毅然として推進していくつもりです。もちろん省エネに真挚に取り組んでいる企業に対しては評価を惜しみませんよ。
◆温室効果ガスの大口排出事業者(06年度)
①JFEスチール 6029万トン
②新日本製鉄 5934万トン
③住友金属工業 2214万トン
日本全国の06年度の温室効果ガス排出量が13億4千億トンなので上位3社で11%を占めていることになる。
(注)単位はいずれも二酸化炭素トン
Q5 地球環境は日本が国際的にリーダーシップをとっていくべき分野ですね。
水野:その通りです。温暖化防止は地球全体の問題ですから他国にも働きかけ力を合わせて取り組まなければなりません。そのためにもまず京都議定書で約束した6%削減という約束を確実に達成しなければなりません。日本が議長国になってまとめたこの条約を日本自身が守れないようでは発言力をなくしてしまいますから。
◆京都議定書とは
温室効果ガスの排出を削除するために1997年に京都で結ばれた国際条約。先進国の二酸化炭素排出量を1990年に比べて2008~12年に5%削減することを狙いとしている。日本は同期間で6%削減することを約束しているが、実際には06年度は90年比で6.296増加してしまっている。