千葉県内にある8千ベクレル超の指定廃棄物の処分場として環境省は千葉市中央区蘇我にある東京電力敷地を候補地として挙げている。環境省の説明によれば、683か所の土地を安全の観点から20点満点で点数化して比較考量してみたら、そこが16点で最高点だっただけのことであり、東京電力の敷地というのは偶然だということになる。しかし「たまたまそうだった」と言われても簡単に首肯できるはずもない。「最初から東電用地という結論先にありきだったのではないですか」という疑念が出てくるのは当然である(この点については6月19日のブログにより詳しく記している)。
そうした立場から国会質疑の中で環境大臣に対して「では他の682か所はどこだったのか、それは何点だったのかといった資料を全部出すべきではないか」と追及した。こうした資料のないままに単に最高点でしたと言うだけでは説得力に欠けるからである。そして環境省側が22日になってこの資料(文末参照)を出してきた。黒塗りがあるので、完全なものとは言えないが一歩前進には違いない。
しかし問題の本質は「結論先にありきだったのではないか」という点である。別の言い方をすれば、安全だからそこを選んだのではなく、地権者が放射性廃棄物を受け入れてくれるからそこに決めたのではないかという疑念である。そこで私は同じ委員会質疑で環境省と東京電力のこれまでのやりとりの一切合切の情報開示を求めた。
政府の保有する情報は本来、情報公開法によって開示請求があればすべて公開されることが原則である(個人情報など例外はあるが)。まして国権の最高機関である国会で取り上げられた問題であり、住民の関心の高い問題でもある。公開が当然であると考えるが、この点については環境省からまだ回答がない。誠意ある回答を待ち望んでいる。
■6月22日 環境省から公表のあった「総合評価結果一覧表」
環境省 情報公開_1
環境省 情報公開_2
環境省 情報公開_3
環境省 情報公開_4
環境省 情報公開_5
環境省は千葉県内にある8000ベクレル超の指定廃棄物約4千トンの埋設場所として千葉市中央区の東京電力敷地を選定した。東京湾に面しているこの場所に対しては「埋立て地なのに地盤は大丈夫なのか」「液状化の恐れがあるのではないか」といった懸念が上がるのは当然だろう。
環境省は安全面を検討してここが一番の適地だったと説明するが果たして本当なのだろうか。実際には「放射性廃棄物など誰も受け入れる人はいない。しかし東京電力は責任者だから嫌とは言えないはずだ。だからその土地に埋めてもらおう」と考えたのではないかとの疑念が浮かんでくる。
私も東京電力が加害企業であり責任者だという思いには変わりはないが、放射性廃棄物の埋設地というのは「そこがゴミを受け入れてくれるからそこに埋める」というのではなく「そこが一番安全だからそこに埋める」というのでなければいけないと思っている。安全面をないがしろにして埋めやすいからそこに埋めるというのでは本末転倒である。
もちろん環境省も場所の選定にあたっては安全第一で考慮したとは言っている。同省の説明は以下のようなものだ。
「千葉県内で最初に約5千か所を検討して、それを683か所に絞りました。この683か所については水源地から離れているかなど4つの指標で採点をしました。それぞれ5点満点で点数化したので合計20点満点ですが、たまたま中央区の東電敷地が16点で最高点でした。ですから東電敷地という結論が先にあったのではなく、たまたまそこが一番安全面で優れているというだけのことです」。
しかし疑念は拭いきれない。そもそも4つの指標という時に液状化などの尺度は入っていないのである。しかも東電敷地以外の682か所がどこだったのかといった情報も開示されていない。そこで私は6月11日や16日の参議院環境委員会でこの問題を追及した(詳細は会議録を参照)。
指定廃棄物の処分場建設というのは、要は他人の土地に「ゴミ捨て場を建設させて下さい。そこに放射能が含まれているゴミを埋めたいと思いますので」とお願いするということである。普通だったら地権者には「ふざけるな」と怒られるのがオチであろう。地元住民や地元議会・首長の理解を得る以前に地権者の了解を得るだけでも一苦労になってしまう(だから千葉県以外では国有地に建設する方針になっている)。
ところが「ふざけるな」とは口が裂けても言えないのが東京電力である。言うまでもなく放射能汚染の原因となった原発事故の責任企業だからである。それだけにここに頼めば地権者の了解という大きな壁は突破できる。そうした考えの下に東電先にありきで話が進んだというあたりが真相ではないのか。
そうした疑念が誤解だというのであれば、環境省にはしっかりと選考過程の情報を公開してもらう必要がある。それが無い限り、この問題は引き続き追及せざるをえない。
放射能を帯びた廃棄物(主に焼却灰)がすでに存在しているのは事実である。これらをどこかに処分しなければいけないのは間違いない。原発への賛否は別として処分地の選定は喫緊の課題ではある。しかしそれだけに処分場の選考過程においてはきちんとした説明責任を果たすことが国には求められている。
昨日の環境委員会では政府が提出している「水銀による環境の汚染の防止に関する法案」と「大気汚染防止法改正案」の審議が行われた。私を含めてどの党も法改正には基本的に賛成している。
その中で、私が聞いたポイントの一つは「濃度規制」だけで十分なのかという問題。有害物質の排出を規制する時の普通のやり方は、例えば排水ならば「カドミウムは1リットル当たり0.03mgまで」という具合に濃度で規制する。
しかし濃度規制には弱点がある。希釈して薄めてしまえばクリアしやすくなるという点だ。そこで「総量規制」という考え方もある。薄めようが薄めまいが総量で何グラム以上は出してはいけないというやり方だ。現にそうした手法を使った規制も環境関連法制の中にはいくつもある。
今回、政府が水銀の大気排出について考えているのは「濃度規制」。これまで何の規制も無かったことに比べれば濃度規制の導入も前進ではあるが・・・。