各種世論調査によると安倍内閣の支持率が上昇している。伊勢志摩サミットやオバマ大統領の広島訪問などが好感されたようだ。私も野党議員の一人だがとりわけ後者については画期的なことだと思っている。
野党の仕事というのは政権与党に難癖をつけることではない。与党の成功や得点に対しては謙虚に受けとめ、そこから学んでいくくらいの懐の深さを持たなければ政権獲得などできないと思う。
もちろん与党を批判するななどと言っているわけではない。論理的な批判は大いに結構だが、誹謗するだけでは駄目だと言っているだけのことである。
私自身、これまでの国会論戦では厳しい批判や追及を繰り返してきた自負もある。例えば昨年の安保法制審議では私が取り上げた海外派遣中の自衛隊の武器の不正使用の話では政府側も答弁に窮していた。また今年の予算委員会での消費税、原発問題での追及でも同様のことがあった。これらは自民党政権に対する厳しい批判ではあったが決して誹謗ではなかった。今後もこうした姿勢を貫いていきたい。
医療機関が人材確保に苦労している。人材確保のためには好条件を提示していく必要もでてくる。ある医療関係者と話していてなるほどと思ったのは、診療報酬制度のもとで医療機関は収入は統制経済になっている一方、給与・人件費などの支出は自由経済の中にあるから大変だという話だった。では「両方とも統制経済でやろう」とか「両方とも完全に自由化しよう」というほど単純な話でもなさそうだ。現場を踏まえた政策が求められている。
日本を含む世界180か国以上が加盟している国際労働機関(ILO)関係の条約の中で、特に重要な8つの条約が基本条約と呼ばれる。日本はそのうち2条約を批准していない。具体的に言えば、強制労働の廃止を定めた105号条約と雇用や職業面での人種・性別・宗教などによる差別を禁止した111号条約が未批准のままになっている。
世界中のほとんどの国が締結している条約を先進国たる日本が批准しないというのはまったく理解に苦しむことと言わざるをえない。
G7サミットが伊勢志摩で開幕した。1975年に始まったG7サミットの日本での開催は6回目となる。一方、これとは別にG20サミットというのもある。こちらは先進国だけでなく新興国も合わせた主要20か国(注)の首脳会議のことで、G7とは別途に毎年開催されている。G20の方は2008年から始まったので今年が11回目となり、中国の浙江省杭州で9月に開かれる。ちなみに日本での開催はまだない。
中国のGDPが日本を抜いて世界第2位になってから数年がたつ。存在感を高める中国の台頭を前提としながら、しっかりとした外交安全保障、経済政策を立てていく必要がある。
注)G20の参加国は日本、米国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、EU、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンとなっている。
本日の参議院本会議で一つの決議案が全会一致で採択された。「我が国の国連加盟六十周年にあたり更なる国際平和の構築への貢献を誓約する決議案」という名称で、賛成229、反対ゼロでの可決だった。その決議の一節に「世界連邦実現への道の探求に努め」という文言がある。
「世界連邦」という言葉は久しぶりに聞いた気がする。私も学生の頃には興味を持って世界連邦構想の歴史などを少し調べたことがある。哲学者カントの『永遠平和のために』に目を通したり、“憲政の神様”と呼ばれた尾崎行雄の取り組みなどを調べたことを覚えている。
もちろん現時点で世界連邦がすぐに実現するなどというのは夢想だろう。また「そんなものを目指していくと日本の独自性が損なわれる」という批判もあるだろう。ある程度文化的統一性があるヨーロッパ内でさえ、英国内などでEUに対し根強い反発の声があるのだから、世界連邦となれば一筋縄でいかないのは想像に難くない。
しかしそれでも世界連邦によって「世界は一つ」、「永久平和」を追求するとの理想は掲げるに値すると思っている。政治は現実に立脚しなければならないし、とりわけ外交安全保障はそうである。世界連邦という言葉に酔って現実を忘却してはいけないにしても、一方で高邁な理想を掲げることも政治の大きな役割だと思っている。
5年前の3月11日に東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原発事故が発生した。その4日前の3月7日に私は参議院予算委員会で東京電力への天下り問題を追及した。前年(2010年)8月まで資源エネルギー庁長官だった人が、この年(2011年)の元旦に東京電力顧問に天下っていたからである。「顧問」というからアドバイスだけをするのかと思いきや月給120万円というのだから、とんでもない天下りである。しかも資源エネルギー庁長官から東京電力なのだから所管業界ど真ん中への天下りだった。
この時は民主党政権だったので「野党時代にはあれだけ天下りを批判していた民主党がこんな露骨な天下りを容認しては駄目ではないですか」というトーンで追及をした。しかも天下りを監視するために再就職等監視委員会という組織を設置することが法律上決まっているにもかかわらず、この時点では政府が委員を任命していなかったために監視機能が働いていなかった。そこでこの問題も取り上げた。
この質疑の4日後に大震災と原発事故が発生したわけである。当然のこと経済産業省(資源エネルギー庁は経済産業省の外局)と東京電力の癒着は批判の対象となり、この「顧問」は4月末をもって退職することになった。また再就職監視委員会もその後、委員の任命が行われた。
そこでこの時の質疑の一部をここに掲載しておく。
***********
〔参議院予算委員会:2011年3月7日〕
○水野賢一君
(前略)今年も元旦早々からとんでもないことが起こった。去年の8月まで資源エネルギー庁の長官だった人、石田徹さんという方ですけれども、この方が辞めてたった4か月の今年の元旦付けで東京電力の顧問になった。しかも報酬付きだという。これ自民党時代よりもひどい天下りじゃないですか。何でこんなことが許されるんですか、総理。
***********
なおこの問題は同年5月20日の参議院予算委員会でも再び取り上げた。
〔参議院予算委員会:2011年5月20日〕
○水野賢一君
(前略)去年の8月まで資源エネルギー庁の長官だった人が何と今年の元旦付けで東京電力に天下ったんですね。これ、自民党よりひどいですよ。自民党政権時代は曲がりなりにも2年間は民間企業に原則天下れなかったんですから。まあ抜け道がいろいろあった、それは問題があるんだけれども。しかし、民主党政権は、これは天下り根絶、全面廃止というふうに言っていたにもかかわらず、2年はおろかたったの4か月で、所管業界ど真ん中ですよ、資源エネルギー庁の長官だった人が東京電力ですから。こんなことが許されるのかというふうに、言行不一致そのものだというふうに思いますが。
では、東京電力にお伺いしますけれども、この天下り官僚の石田徹氏、在職中、東京電力でどのぐらいの報酬受け取っていたんでしょうか。
○参考人(武藤栄君)
まずは、福島第一原子力発電所の事故によりまして、多くの方々に大変に御苦労、御不便をお掛けし、また皆様方に大変な御迷惑、御心配をお掛けいたしましておりますことを深くおわびを申し上げたいと思います。申し訳ございません。
御質問の件でございますけれども、報酬につきましては月額120万円程度をお支払いしておりました。賞与は支給しておりません。
注)武藤栄氏は東京電力副社長。
〔現時点での水野賢一の感想〕
2009年に民主党政権が発足するにあたっては「従来のしがらみにとらわれずに天下りなどの政官業の癒着にメスを入れてほしい」という国民の期待があったと思う。残念ながらこの原発事故時点ではこの天下り問題への取り組みは甘かったと思う。ただ枝野官房長官や福山官房副長官らの答弁には「こうした癒着を放置してはいけない」という気持ちは滲み出ており、こうしたことがこの「顧問」の4月の退任につながったのだろうとは思う。
また3月7日の菅直人首相の答弁を機に再就職等監視委員会の人選が進むようになったのは良かったと思っている。いずれにしても思い出深い質疑の一つである。
本日は東京都心の最高気温が今年初めて30℃を超えた。30℃以上の日を「真夏日」と呼ぶので、今年初めての真夏日となった。真夏日(最高気温30℃以上)、夏日(最高気温25℃以上)という言葉は以前からあるが、気象庁は2007年から35℃以上の日を新たに「猛暑日」と呼ぶようにし始めた。夏になると当たり前のように30℃を超えるようになってしまい、単に「真夏日」と言うだけでは毎日が真夏日になってしまうために、とりわけ暑い日のために新たな分類を作ったわけである。
これも温暖化の表れの一例といえるだろう。待ったなしでの対策が求められている。
衆議院の場合は千葉県内の選挙区は1区~13区までに13分割されている。一方、参議院議員は全県が選挙区となっている。そのため私も千葉県選挙区選出の参議院議員として全県をまわっているが「千葉県は広い」と実感している。
とはいえ47都道府県を面積で比べると千葉県の広さは28位、つまり平均よりはやや狭い県ということになる。最大なのは北海道で千葉県の約16倍、最小なのは香川県で約3分の1となっている。
その点では北海道選挙区や全国を選挙区とする比例区の参議院議員や候補者はもっと大変なのかもしれないが(移動に時間が掛かるためにその間に休めるという話も聞くが)、それにしても「千葉県は広い」とあらためて実感する毎日である。
「これだけ温暖化防止が叫ばれている中で極めて強力な温室効果ガスであるフロンをわざわざ商品として製造することは問題ではないか」という視点から5月2日の本会議質疑を行った(このことは5月11日のブログでも報告している)。
そして本日の参議院環境委員会で採択された附帯決議の中に以下のように盛り込まれた。
“五、強力な温室効果ガスであるフロン類については、回収・破壊や漏えい防止に努めるとともに、生産にも適切な規制を行っていくこと。また、人工的に合成された物質であるという点に鑑み、回収・破壊などにおいては生産者責任にも留意した政策の検討を進めること。”
私も十数年前に国会に議席を得てから重要な政策課題として環境問題に取り組んでいるが、以前はフロンガス(特にオゾン層を破壊しないHFCのような代替フロン)に関して生産者責任が問題になることはなかった。「製造してもきちんと回収・破壊をすれば問題ないのだ」という考えさえあった。確かに100%回収して大気中に放出しないのであれば問題ないのだが、実際にはそんなことは不可能なのである。使用中の漏えいも無視し得ない量に上る。さらにいえばスプレーのように最初から大気への放出を前提とした商品もある。だからこそ生産そのものに規制をしなければ根本的な対策にならないと言い続けてきた。また生産者責任についても一貫して言い続けてきた。
今回の附帯決議は私の属する民進党のみならず自民党、公明党、日本を元気にする会、無所属クラブの共同提出となり、これらの会派の賛成によって可決された。多くの政党・会派に同意してもらったことに感謝すると同時に、正しいと思うことは言い続けることの大切さをあらためて胸に刻んだ。
cf.共産党のみが附帯決議に反対だったが、推察するにこのフロンの生産者責任の部分に反対だったのではなく、他の部分に反対だったのだろうと思う。ちなみにこの附帯決議は5項目から成っており、フロンに関しては5番目の項目に触れられている。
社民党、おおさか維新、生活の党、新党改革、こころといった諸政党は議席数の関係で参議院環境委員会に委員を出していない。
昨日のブログで報告した通り高評価をいただいた2014年2月6日の参議院予算委員会質疑のハイライトを議事録から引用してみる。この質疑では「天下り問題」を取り上げた。
***************
○水野賢一君
次の話題に移りますが、天下りの問題について伺いますが、安倍内閣になってから天下りはないんでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君)
再就職監視委員会において指摘された事案が1件あったと承知いたしております。
○水野賢一君
つまり、もう天下りあっせんは基本的に禁止しているわけですよね、禁止しているけれどもそれに違反したのが1件あったと、そういう理解でいいですか。
○国務大臣(稲田朋美君)
天下りの禁止に関しては、公務員制度改革の一環として、平成19年の第1次安倍内閣において、御党の代表である渡辺喜美大臣の下、規制をいたしました。そして、その法律に従って監視委員会が指摘した事案が1件あるということでございます。
○水野賢一君
まさに今大臣がおっしゃったように、天下りあっせんが認定されたのは1件、まあ本当に1件だけなのかという気はしますけれども、1件あったのは事実ですよね。これ、じゃ、あっせんした人、これは国土交通省の事務次官までやった人ですけれども、これ何か処分を受けたんでしょうか。
○国務大臣(太田昭宏君)
退職をしておりましたものですから、注意ということをし、さらに、再発を防止しなくてはいけないということで、現在の職員そしてOBのメンバーに対しても再度このことについて徹底をさせていただいたというのが昨年の3月26日の決定から私どもがやったことでございます。
○水野賢一君
今いみじくもおっしゃられたように、退職後に、事務次官辞めた後にその人のことを注意したんですよ。はっきり言って痛くもかゆくもないわけですよね。
これ、稲田大臣にお伺いしますけど、各省庁の幹部がこういう行為をしたときは、今のように痛くもかゆくもないようなことになっちゃっているんだから、現実に、刑事罰とかそういうことは検討していないんですか。
○国務大臣(稲田朋美君)
不正行為の見返りとして天下りのあっせんをしたときには刑事罰が規定をされております。それ以上に、あっせん行為そのものだけについて刑事罰を規定することについては様々な議論がありまして、刑事罰を科して犯罪とするまでのことであるか、ほかの刑事罰との整合性というか、そういったことも検討されて、現時点で刑事罰を科すということは考えておりません。
○水野賢一君
先ほど、天下りあっせんが認定されたのは1件だけという話ですけど、これ、安倍政権が発足後に早期退職勧奨というのは、まあ最近これは、やまったようですけれども、中央省庁の官僚のうちどれだけに早期退職勧奨があってどのぐらいの人が拒否したとかという数字ありますか。
○国務大臣(新藤義孝君)
安倍政権が発足した平成24年の12月26日、そして本年の2月の5日までに各府省庁、委員会の内部部局の職員に対して退職勧奨を行った人数は324人です。そして、そのうち退職勧奨を拒否したのはゼロということであります。
○水野賢一君
いや、これが、まさに天下りが、あっせんがあるだろうと疑われることのそのものじゃないですか、今おっしゃったのは。だって、3百何人に肩たたきをして、それで何にもあっせんしないで、次の就職先の面倒も見ないで肩たたきをして、それで誰も拒否しなかったなんて、そんなことは常識で考えて、それ通用すると思いますか。総理、そう思いませんか。あっせんはあるんじゃないですか、水面下で。
***************
〔水野賢一の感想〕
現在、国家公務員法が定めているのは「天下り」そのものの禁止ではなく「天下りあっせん」の禁止である。逆に言えば省庁のあっせんを受けずに自分で再就職先を見つけたならば、官僚時代の所管業界に再就職してもOKということになっている。
それだけに甘いのではないかという批判もあるわけだが、質疑でも明らかになった通り、現行法でも禁じられている違法な天下りあっせんも1件認定されている。しかも当事者は「注意」しか受けていない。現行法には刑事罰の規定がないからである。刑事罰はなくても行政処分を受ける可能性はあるが、上記の事案の場合には、あっせんした国土交通省幹部は発覚時には退職していたために行政処分の対象にさえなりえなかった。そこで私は「(それでは)痛くもかゆくもない」と追及したわけだが、政府側はあまり問題意識を感じてはいないようだ。
天下りの問題に関しては、福島第一原発事故の2か月前にも資源エネルギー庁長官だった人が東京電力顧問に天下っていた。これも国会では追及したが、それは次回の「ハイライト引用(天下り・その2)」でご報告。