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安保法制の成立を受けて~やはり政権交代可能な政治が必要~
2015.09.19
安保関連法案が深夜2時過ぎの参議院本会議で自民党・公明党などの賛成多数によって可決・成立した。私は無所属議員なので党議拘束などというものはない。つまり自分自身の信念に基づいて投票したわけだが、青票(反対票)を投じた。法案の中身に問題があり、なおかつ手続きに重大な瑕疵があると思うからである。
昨日(現在午前3時なので厳密には一昨日)の特別委員会で採決された時の議事録を見てみると、以下の通りである。
“理事(佐藤正久君) 起立少数と認めます。よって、本動議は賛成少数により否決されました。鴻池委員長の復席を願います。速記を止めてください。
〔速記中止〕
〔理事佐藤正久君退席、委員長着席〕
委員長(鴻池祥肇君) ……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)
〔委員長退席〕
午後四時三十六分 ”
これが議事録で見る採決時の議事内容だったのである。
つまり“……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)”という中で委員会での法案採決が行われたということになっている。私自身も同特別委員会の委員なので現場にいたが、まさに「聴取不能」な状態であり、そもそも何が採決されたのか、起立が多数なのか、少数なのかといったことなどはまったく分からなかった。
このような委員会採決は無効と言わざるをえない。委員会で正式に採決されていないものを本会議にかけること自体が間違っている。手続き上の重大な瑕疵である。
しかし現実には法案が成立してしまったのも事実である。野党や国民がいくら反対したとしても、自民党の“一強多弱”という政治状況では最後はどうしてもこうなってしまう。だからこそ自民党に対抗できるだけのしっかりとした軸を作りあげていく必要性がある。
国会の採決では敗北した。しかし敗北感に打ちのめされているだけではいけない。自民党が今日のように驕り高ぶった行動をとれば、すぐにでも政権交代が可能という政治勢力を構築する必要性がある。そのことをあらためて実感し、その決意を新たにした瞬間でもあった。
安保法案が強行採決された日の「鴻池祥肇委員長に対する不信任動議への賛成討論」の原稿
2015.09.18
9月17日にいわゆる安保法案が参議院の特別委員会で強行採決された。この日、同委員会では強行採決を押し進める鴻池祥肇委員長への不信任動議が提出され、私自身もそれに対して賛成の立場から討論を行った。以下、その原稿を掲載する。なおここでは法案の中身や是非について触れずに、与党の国会運営の横暴さに焦点を当てているが、それは委員長解任決議案の賛成理由を述べているという事情による。
-以下は討論原稿-
無所属クラブの水野賢一です。鴻池祥肇特別委員長に対する不信任動議に賛成の立場から討論をいたします。
賛成の理由は単純明快です。現在審議中の安全保障関連法案に関して、審議も十分でないまま、強行採決に向かっていることが誰の目にも明らかだからです。
そもそもこの法案は形の上では2本の法案となっていますが、そのうち1本は、内実を見れば10本もの法案を束ねて改正するという盛り沢山の内容のものです。それだけに議論すべき課題がまだまだ数多く残されているじゃありませんか。現に内容を詰めていけばいくほど、防衛大臣が答弁に窮し、速記が止まるというのが委員会審議の実態じゃありませんか。
まして維新の党からは多くの対案が出されています。また民主党と維新の党は共同で領域警備法案も提出しています。後者については先日委員会で趣旨説明の聴取をしたばかりじゃありませんか。さらに報道によれば与党は別の3党との協議で閣議決定とやらまで約束しているそうじゃありませんか。ならば、こうしたことについてもしっかりと審議するのが当然ではないですか。
なぜ、これで締め括り総括質疑なんですか。
なぜ、これで質疑終局なんですか。
なぜ、これで強行採決なんですか。
まったく道理が通りません。
私は昨日午後6時に、もしくは本日朝に締め括り総括質疑を開くことには断固反対の立場でありました。しかしそれは審議そのものを拒否すると言っているわけではないのです。
この状況の中で、審議を締め括ろうとすることに反対をしているのです。
この状況の中で、審議を打ち切ろうということに反対をしているのです。
この状況の中で、採決を強行しようということに反対をしているのです。
与党はすぐに「野党が審議拒否をしている」と言います。しかし会期は27日まであるんです。にもかかわらず早々に質疑を締め括ろうとし、そしてもっと深掘りした議論を拒否しているのは実は与党側ではないですか。
さらに言えば、職権で本日の参議院本会議がセットされています。本会議の定例日でもない本日、しかも採決すべき上がり法案もない本日、何のために本会議を職権で立てる必要があるのでしょうか。委員会での質疑を打ち切って、本会議採決に持ち込もうということは誰の目にも明らかじゃありませんか。こうした与党側の路線を象徴しているのが、残念ながら鴻池委員長であります。
私は法案には反対の立場であります。しかし法案への賛成・反対は別としても、与党・政府側の国会運営には多くの疑問があります。基本的なルールをないがしろにしていることが多すぎるのです。
本日もこの不信任動議の提出後に「なぜ?」と思うことがありました。ちょうど理事会で鴻池委員長への不信任動議、まさにいま議論になっているこの動議の扱いについて議論している頃でした。委員長に対する不信任動議が出ている以上、この委員会における最優先の議題はその動議の扱いであるべきです。委員長としての適格性・正当性に疑問符が投げかけられた以上、その問題を最初に処理するのは当然のことです。
つまり委員長不信任動議が最初の議題になることが分かっているにもかかわらず、中谷防衛大臣と岸田外務大臣が委員会室に、つまりこの部屋に入室し、そこの大臣席に着席していたのです。委員長の適・不適の採決の時、なぜ行政府にある閣僚たちが答弁席に座ろうとしたのでしょうか。要は委員長不信任問題を処理したら、すぐにでも法案の質疑終局にでも持っていきたかったのではないですか。道理にも反する、しかも慣例にも反するこうした行為を平然と行っている政府・与党側に猛省を促したいと思います。
以上、様々に申し上げてきましたが、審議も尽くされずに強行採決することなどは論外ということをあらためて申し上げながら、与党の横暴な国会運営には強く、強く、強く、強く、さらに強く、強く、強く、強く抗議して、委員長不信任への賛成討論といたします。
本日、安保特別委員会で質疑します!
2015.09.14
今週中の強行採決が囁かれている安保関連法制ですが、本日、夕刻には水野賢一が委員会質疑に立ち、安倍総理、中谷防衛大臣との論戦に挑みます。NHK中継もあるので、是非ともご覧下さい。質疑時間は15:48~16:06が目途となっています。
なお国会豆知識を言えば、予算委員会や本日の安保特別委員会などでの委員会質疑というのは通常は「○○さんの持ち時間は13時から13時30分までの30分間ですよ」という具合になっています。つまり自分の質問時間と政府側の答弁時間を合計して何分以内となっているわけです。しかしそのやり方だと政府側が長々と答弁すると、質問者の持ち時間がなくなってしまうということもありえます。質疑に立つ側からすれば「関係ないことを長々と喋らないで下さい。簡潔に端的に答弁して下さい」と言いたくなるわけです。
そこで例外的に“片道方式”という質疑方法が採られる場合があります。この方法は質疑者の話す時間が例えば10分間と決まっており、答弁者がどれだけ話そうが、それは関係ないというものです。この“片道方式”は衆議院の委員会では採用されておらず、参議院でのみ時々実施されます。
安保法案をめぐっては、かねてから安倍総理や閣僚の答弁が長すぎるという批判がありました。政府側からすれば「丁寧に説明しているんだ」ということかもしれませんが、野党側からすれば「冗長に答弁することで野党の質疑時間を奪っている」という印象を持つわけです。そこで野党側は参議院質疑では“片道方式”も使うべきだと主張し、本日の質疑はそのやり方で行うことになりました。
普段のように「13時から13時30分までの30分間」というならば登場時間はだいたいそのタイムスケジュール通りになりますが、片道方式の場合だと、政府答弁が長いか短いかによって変わってくることになります(だいたい平均すると答弁者は質疑者の質問の1.5~2倍くらい話すので、片道の持ち時間が10分間ならば答弁と合計で25~30分間くらいになるのが通例ではありますが)。
さらに今国会では政府側が答弁に窮して審議が中断することも多々あるので、なおさら時間が読めなくなります。そのため上記の15:48~16:06というのはあくまでも目安に過ぎないことを御了解下さい。
なぜ政府答弁は基本的なことで揺れ動くのか?~安保法制:「存立危機事態」の認定について~
2015.08.21
◆存立危機事態とは
本日、参議院安全保障特別委員会で質疑をした。とはいえ持ち時間はわずか8分だったので細部に深入りした質疑をするだけの時間はない。
そこで集団的自衛権に関して、かなり基本的なことを質問した。私の質問内容について説明する前に、現在、国会で審議されている安保関連法案の仕組みを概観してみる。
この法案では政府が「存立危機事態」だと認定した場合には集団的自衛権を行使することもありえるとしている。図式的に表せば、
“存立危機事態の認定”→“集団的自衛権の行使”
となるわけである。
では存立危機事態とは何かと言えば、日本が直接武力攻撃を受けたわけではないが、日本の存立が脅かされる場合のことだという。
◆集団的自衛権行使と「要請」
一方で政府は、集団的自衛権を行使するには攻撃を受けている他国からの要請が必要ということも再三答弁している。要請もないのに集団的自衛権を行使するのは国際法違反であるとも言っている。
確かにどこからも要請もないのに、日本が「これは集団的自衛権だ」と言い張って海外派兵をすれば、それは自衛ではなく単なる侵略になりかねないのだから、これは当然のことだとは思う(そのわりには法案には要請が必須とは明記していないのだが)。
上の表記にならっていえば、
“密接な関係にある他国からの要請”→“集団的自衛権の行使”
という形になると政府は繰り返しているわけである。
◆存立危機事態の認定と「要請」
ここでよく分からないのは、存立危機事態の認定にも要請が必須なのかどうかということである。つまり
“密接な関係にある他国からの要請”→“存立危機事態の認定”→“集団的自衛権の行使”
という図式になるのかということである。
そこで私は「政府が存立危機事態と認定するにあたっては他国からの要請が必要なのか」ということを本日の質疑で尋ねたわけである。
ところが答弁はまったく分からなかった。矛盾と意味不明な言説の繰り返しだったといって過言ではない。中谷防衛大臣は「必要だ」と言ったかと思えば「不要」とも取れる言い方もした。さらにはあまり関係のない話をいろいろとしていた。結局、8分の質疑時間のうち7分間くらいは中谷大臣の答弁の揺れ動きが続いた感じがする。もちろん私としてはこの答弁に満足することはできない。政府としてきちんとした統一見解を出してもらう必要がある。
私はなにも細かなことを問い質したわけではない。これは集団的自衛権行使の手順という極めて基本的な話である。根幹に関わる議論と言って間違いない。なぜこのような基本的なところで答弁が揺れ動くのだろうか。要は法案の中身が詰まっていないとしか言いようがないのである。
◆条文はどうなっているか
ちなみに要請が必要か否かを改正法案の条文から見てみると以下のようになっている。「存立危機事態」という概念は今回の法改正案で初めて登場する。法律上は、この用語の意味は事態対処法の改正案の第2条で定義されている。その条文は以下の通りである。
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう」
これを読む限り、存立危機事態と政府が認定するにあたって他国の要請が必要であるとは一言も書いていない。また法律の他の条文や政府が昨年7月に閣議決定した「武力行使の新三要件」を見ても要請の話はまったく出てこない。
ではこれまでの国会答弁ではどうなっているのか。横畠内閣法制局長官は、存立危機事態の認定基準として昨年7月14日の衆議院予算委員会での答弁で、以下のものをあげている。
①攻撃国の意思及び能力
②事態の発生場所
③事態の規模、態様及び推移
④日本に戦禍が及ぶ蓋然性
⑤日本国民が被ることとなる犠牲の深刻性及び重大性
これらを客観的・合理的に判断して政府が存立危機事態と認定するというわけである。ここでも攻撃を受けた他国からの要請の有無には触れられていない。
常識で考えてみても、日本の存立危機事態なのである。他国からの要請の有無に関係なく認定できると考える方がすっきりするだろう。
しかし本日、防衛大臣の揺れ動く答弁を聞いてみても、まったく煮詰まっていないというのが実感である。
なお誤解を避けるため付言しておくと、私は「他国の要請など不要だ。日本独自の判断でどんどん存立危機事態と認定しろ」と言っているわけではない。それはそれで問題があると思っている。
◆本日の感想
本日の質疑を終えた私の感想を一言で言えば、上述した通りこの安保関連法案には煮詰まっていない点が多すぎるということである。審議すればするほどそれが明らかになってきている。すでに私は7月29日付のブログでも「この法案には致命的な欠陥がある。そのような法案は撤回・出直しをすべき」という旨を書いている。本日の政府答弁が混乱し、右往左往した原因は、やはり提出されている法案そのものに欠陥があるからだと思う。政府が「集団的自衛権の行使には他国からの要請が必須」と言いながら、それについて法案では一言も触れていないことも混乱に拍車をかけているとも思う。
こうした欠陥法案を強行採決したり、衆議院の3分の2を利用して再可決をするなどは論外である。本日の質疑時間は、わずか8分間だった。しかし「この安保関連法案については撤回・出し直しが必要だ」との思いをあらためて強くしたところである。
安保法制の致命的な欠陥~政府も認めた以上、法案は撤回・出直しを~
2015.07.29
◆国外犯処罰規定の新設
現在参議院で審議中の安保法制の中では自衛隊法を改正して国外犯処罰規定を新設することにしている。この規定を設けることについては私も一定の評価をしている。それどころかこうした規定を作るべきだと主張してきたのはこの私である。
自衛隊員であっても犯罪を起こす可能性はある。当然、海外派遣中に犯罪をおかす可能性もあるのである。海外でおかした犯罪は不問に付すというわけにはいかない。それだけに、これまでのように自衛隊が海外に派遣されているにもかかわらず国外犯処罰規定がなかったことの方がおかしかったといえる(自衛隊法が制定された頃は海外派遣などは想定していなかったため国外犯処罰規定が無かったと考えられる)。
◆不当な武器使用がなぜ裁かれないのか
ところが今回新設の国外犯処罰の条項には決定的に重要なものが抜け落ちている。自衛隊法の罰則には「武器の不当使用」(118条1項4号)の規定がある。そのため国内で「武器の不当使用」をすれば当然罰則がかかってくる。ところが新設の国外犯処罰の規定からこの部分はすっぽりと抜け落ちている。その結果、海外で武器を不当に使用しても、罰則はまったくかかってこないのだ。
自衛隊の武器使用というのは細心の注意を払うべき問題である。だからこそ「こういう場合には武器が使用できる」、「こういう場合は正当防衛や緊急避難の時だけ使用できる」といった規定が細かく定められている。しかしどんなに規定をきちんと定めてもこれでは無駄と言わざるを得ない。その規定を破ったとしても何の罰則もないのだから。
◆仏作って魂入れず
では政府は自衛隊法に国外犯処罰規定を新設していったい何を罰しようとしているのか。法案をよく読むと自衛隊員が海外でストライキやサボタージュをした時に処罰するといった話が出てくる。他にも睡眠や酩酊で職務を怠った者なども刑事罰の対象にしている。確かにそうした自衛官は処罰の対象にすべきだろう。そのことには私も異存はない。
しかしこの問題の本質は、海外(国内でも当然だが)で自衛隊が勝手に部隊を動かしたり、勝手に武器を使用するようなことは絶対に許さないということにあるはずである。こうした勝手な行動を容認してしまえば満州事変のような戦前の軍の暴走につながりかねないからである。この一番肝心な部分に触れないまま国外犯処罰規定だけを新設しても「仏作って魂入れず」と言わざるを得ない(部隊の不法指揮は国外犯の対象になっている。これは一定の評価はできるが罰則が軽すぎるという問題は残っている)。
◆欠陥があるなら法案撤回を
本日(7月29日)の委員会質疑でこの問題について安倍総理、中谷防衛大臣に質問をした。二人とも「確かにこれは問題がある」とは思ったのだろう。それはそうだろう。海外派遣中の自衛隊が勝手に発砲しても、命令以外の武器を使用しても罰則は何もかかってこないという法案に対しては問題だと思う方が常識である。
そこで二人ともこの課題は別途考えていく、別途対策を講じるという趣旨の答弁をした。「別途」というのは現在審議中の安保法制とは「別途」ということである。分かりやすく言えば、水野賢一の指摘は確かにもっともな指摘なので対応策は取らなくてはいけないが、それは安保法制の成立後に追い追い実施するということである。
しかしそんな逃げ口上は許されない。総理や担当大臣が「別途」対策を講じる必要があると認めたということは法案には欠陥があるということである。それならば欠陥法案は撤回すべきである。そしてどうしても国会審議をしたいというならば欠陥や不備を直してから国会に出直すのが筋ではないだろうか。
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