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新版・北朝鮮経済制裁法案とは何か (外為法篇)
2003.06.14
「新版・北朝鮮経済制裁法案とは何か (外為法篇)」
◆はじめに
北朝鮮に経済制裁をすべきだという声が高まっている。この独裁国家は日本国民を拉致しておきながら、解決に向けてなんら誠意ある態度を示していない。それどころか我々の危惧を無視して、核開発やミサイル開発を進めている。こうした国には制裁を加えるしかないと多くの人が考えるのも自然なことである。対話の努力は続けていくにせよ、一方で圧力を加える構えも示さなければ北朝鮮のような国との交渉は成り立たない。
日本では経済制裁は外為法(外国為替及び外国貿易法)によって発動される。ところがこの法律には大きな不備がある。我が国単独の判断では制裁が発動できないのである。国連決議などによって国際社会が経済制裁に乗り出す時には日本もこれに参加できる。現に日本が経済制裁に加わった例は対イラク、ユーゴ、アンゴラなど多数ある。だが現行法は単独制裁を認めていない。これは主権国家として大きな問題である。さらに対北朝鮮政策を進める上でも足枷となる。現時点では北朝鮮を制裁すべきとの国連決議はない。このままでは経済制裁が必要な事態が生じたのに法律の要件を満たしていないため実施ができないということも起こりかねない。
国際社会が一致協力して制裁に踏み切る時に日本として協力することは当然である。だがそれに加えて、必要があれば我が国単独でも行なえるようにすることが求められる。そこで自民党若手有志議員が集まって外為法の改正案を作成した。今年2月のことである。この法案については私は3月に自らのホームページ上に『北朝鮮経済制裁法案とは何か』と題した拙文を書いている。だがその後、党内論議の中で法案にいくつかの修正点が加わった。そこであらためて最新の法案について解説を書いてみた。なお前稿では外為法改正案に加え北朝鮮船の入港阻止法案についても触れたが、本稿では外為法改正案のみを取り上げる。
◆経済制裁と外為法
経済制裁とは送金や貿易に規制をかけることである。また資産凍結や投資制限なども含まれる。北朝鮮を念頭に置くととりわけ送金規制や貿易制限は重要である。北朝鮮は核やミサイル開発の資金と部品を日本で調達しているといわれるからである。亡命した元技師の証言によれば、この国が開発している大量破壊兵器やミサイルの部品の9割は日本製だという。 いわば日本のカネとモノで日本攻撃の準備を進めているようなものである。これほど馬鹿げた話はない。カネとモノの流れに規制を加えるのはむしろ当然のことともいえる。 財務省の統計によると平成14年の日本から北朝鮮への輸出は165億円、輸入は294億円である。輸出の中心は自動車、繊維品、電気機器、機械類であり、輸入の主役はアサリなど魚介類となっている。この数字は日本の全貿易額から見れば微々たるものである。だが北朝鮮にとっては日本は中国に次ぐ第二の貿易相手国なのである。 また日本から北朝鮮への送金は14年度の場合、金融機関を通したものが3億7700万円、北朝鮮への渡航者が携帯して持ち出したものが35億9800万円、合計約40億円である。これらは届け出られている数字なので、実態はこれを大きく上回るだろうということは容易に想像がつく。こうしたカネとモノの流れが北朝鮮の命綱になっている。それだけにここに規制を加えることは北朝鮮とっては痛手になる。逆に日本にとっては交渉の切り札となるわけである。
経済制裁の規定は外為法に盛り込まれている。送金の規制ならば外為法第16条である。第21条では資産凍結・投資制限といった資本取引の規制が、第25条では役務取引の規制が定められている。 さらに輸出の規制は第48条、輸入の規制は第52条が扱っている。これらの発動が日本単独の意思ではできない点こそ問題なのは上述した通りである。この背景を理解するためにもまず外為法の成り立ちをみてみよう。
◆外為法の歴史
外為法の前身は昭和7年に成立した「資本逃避防止法」である。この法律は翌8年には廃止され、新たに「外国為替管理法」が制定された。さらに昭和24年に名称が変更され「外国為替及び外国貿易管理法」となった。従来は為替管理に限られていたのが、ここから貿易についても同法の対象となる。当時は対外取引は厳重な管理の下に置かれていた。原則として禁止・制限されており、特に認められた場合にのみ行なってよいという形になっていた。 それが根本から変わったのが昭和55年の外為法大改正である。この改正で対外取引は原則自由となった。法目的を定めた第1条にも「この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし」とうたわれた。ただいかなる時も自由というわけにはいかない。もちろん例外も存在する。経済制裁もその例外にあたる。送金・投資・貿易などの対外取引は原則として自由になったが、一定の場合にはある国に対しては許可や承認を受けない限り行なえないようにした。これが経済制裁である。 つまり制裁の発動とは本来自由であるはずの取引を許可制・承認制に切り替えるということなのである。もちろん制裁時には、ほとんどの取引は許可・承認されないことになる。
ではどういう場合に許可制が敷かれるのか。送金について定めた第16条を見てみよう。昭和55年改正では「我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行のため必要があると認めるとき」という条件が付されていた。例えば国連安保理決議で特定の国に経済制裁を実施することが決まれば、その国際約束を誠実に履行するために日本も制裁を発動できるというわけである。 その後、金融自由化の中、外為法は平成10年に再び大改正される。この改正で法律名も現在と同じ「外国為替及び外国貿易法」となった。「管理」の二文字が消えたわけである。全体としては自由化されたが、経済制裁に関してはより機動的に発動できるようになった。従来は「国際約束の誠実な履行のため」に発動が限られていた。これは法的拘束力のある国際約束がある場合と解されている。結果として、事実上、国連決議の存在があって初めて日本も制裁を実施できることになっていた。これに対し平成10年の改正では「国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき」という要件が加わった。こうして国連決議はなくとも発動する道が開かれた。この改正の背景には、かつてイラクがクウェートを侵略した時に、安保理決議が出るまで日本だけが法律に基づいた経済制裁を発動できず行政指導で対応せざるをえなかったことへの反省があった。またこの時までに送金以外の取引にもだいたい同じような条項が導入された(輸出入を除く)。
平成10年の改正の結果、以前よりは柔軟に経済制裁が発動できるようになった。それでも制裁を行なうことができるのは、あくまでも「国際的な努力」があった場合に限られる。日本単独では経済制裁ができないことに変わりはない。これこそ現行法の問題点なのである。
◆議員立法に向けて
法律に不備があるならば政府自らがそれを正すべきである。だが残念ながら政府内には外為法改正の具体的な動きはなかった。それならば議員立法という手段がある。そこで昨年12月に自民党の衆参若手有志議員が集まって「対北朝鮮外交カードを考える会」を結成した。メンバーは山本一太、菅義偉、河野太郎、増原義剛、小林温の各議員と私である。この会では外為法の改正案と万景峰号などの入港阻止法案の二本の法案作りを始めた。会の名称はこうした法律を整備することこそ北朝鮮と交渉する上での外交カードを増やすことになるという我々の思いに由来する。 実は議員立法というのはそれほど簡単なことではない。日本の法律のほとんどは内閣提出という形で作られている。議員立法もあるにはあるが、その多くは公職選挙法や政治資金規制法の改正のような議員自らを縛るための法律である。それに対し役所の権限に関わるような法律が議員立法されることは少ない。こうした法律は各官庁間で綿密にすりあわせをした上で内閣から提出されるのが常である。 そういう意味ではこの会の動きはかなり異例のことだったかもしれない。だがこれだけは成し遂げなければいけないとの思いの中、まず外為法改正案を今年2月にまとめた。入港阻止法案はより広範な検討が必要なため骨子のみの発表となった。相談の上、まずは先行している外為法の改正に全力を尽くすことになった。 法案が完成している以上、すぐにでも国会に提出したいところだが事はそうは簡単ではない。国会法では議員立法は21名以上集まれば提出できる。この人数を集めるだけならば、さほどの難事ではない。 ところが実際には人数要件を満たしただけで法案が提出できるわけではない。所属政党の了解を得ないと受理されないという慣行があるのだ。まず自民党内で了承される必要があるわけである(現実には連立与党を組んでいる以上、自民・公明・保守新党の了承が求められる)。
自民党は党内手続きとして部会・政調審議会・総務会の三段階の審査がある。まず部会で了承し、それが政調審議会に上がり、最後に総務会で承認されて党の決定になるのである。そこでまず部会で取り上げてもらわなければならない。外為法は財務金融・経済産業・外交の三部会に密接に関係するため、その合同部会で審議された。5月14日に合同部会での議論の俎上に始めて乗せられた。2月に法案ができてから時間がかかってしまった背景にはイラク戦争、統一地方選などが間に挟まったことがある。結局6月4日の合同部会で了承となった。 ここでの議論を踏まえていくつかの修正を原案に加えた。単独制裁を可能にするという根幹はまったく変わっていないが、他の法律との整合性など細かな点ではより充実したものに仕上がったと考えている。
◆外為法改正案の内容
自民党合同部会で了承された外為法改正案の骨子は、必要があれば我が国単独の判断で経済制裁を発動できるようにしたということである。具体的には外為法に新たに第10条を設け、我が国の平和と安全の維持のために必要がある時は経済制裁発動の閣議決定を行なえるようにした。この閣議決定を受けて送金ならば第16条、輸出ならば第48条という個別の条項に基づいて特定の国との取引が許可制・承認制にされる。ちなみに外為法は第73条まであるが、第10条から第15条までは平成10年の改正で削除されていたので、この部分に第10条という新たな条文を立てたことになる。
現行法では国際社会と共同して制裁を行なう時は閣議決定は不要である。実態としては発動時に閣議了解をしていることも多いのだが、法律上必須のものにはなっていない。つまり送金ならば財務大臣、貿易ならば経済産業大臣のみの判断によって規制が行なえるわけである(送金規制の場合は外務大臣も意見を陳述できる)。だが日本の平和と安全を判断するのが一部の大臣だけというのはやはりおかしい。そこで改正案では単独で経済制裁を発動する時には必ず閣議決定を経るようにした。
党内の議論の中では、閣議ではなく安全保障会議にしたらどうかという意見もあった。ただ安全保障会議の出席者は閣議の構成員の一部であり、やはり国事の最高決定機関である閣議の方がふさわしいと判断した。また安全保障会議設置法には同会議に諮るべき事項が列挙されているが、経済制裁などはもちろん入っていない。つまり安保会議にこの役割を担わせれば、こちらの法律まで改正しなければならなくなるという点も考慮した。
細かい話だが輸出入を規制する第48条と第52条だけはやや違った改正点もある。現行の二つの条文には国連決議などに基づいて制裁を発動する場合の規定が明記されていない。第16条などにはすでにある要件がなぜか欠けている。そのため国連決議が出た時などは輸出入規制だけはかなり強引な解釈によって発動せざるをえない。そこで今次の改正で、現行第16条などと同じ表現をここにも盛り込んだ。こうした改正に合わせて第1条の法目的にも「我が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期し」との文言を挿入した。なおこの法案は北朝鮮を狙い撃ちしたものではない。もちろん改正案の背景に北朝鮮という不気味な国の存在があることは否定しない。だが法案のどこにも北朝鮮という文言は入っていないことを付け加えておく。
◆政府の解釈変更
この改正案を自民党部会で議論していた頃、政府は現行外為法の解釈変更を打ち出した。5月19日の記者会見で福田康夫官房長官は、日米二国間の合意があれば北朝鮮への送金は停止できるという見解を示した。外為法第16条では送金停止ができるのは、国連決議がある場合と「国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与する」場合である。 後者の要件は平成10年の改正で付け加えられた。ところが何か国が参加した時に「国際的な努力」というのかは必ずしも明確ではなかった。ただ一般的にはG7諸国の多くが協調することを指すのだろうと漠然と考えられていた。それを今回政府は日米二か国であっても「国際的な努力」に該当すると明言したわけである。
こうなると現行法のままで北朝鮮に対し制裁が発動できるかもしれない。わざわざ外為法を改正するまでもないという気運につながりかねない。それだけにこの時期に政府が新解釈を提示したのは改正案を潰す狙いがあるのではないかという指摘も出た。私はそこまでは言わない。また解釈変更も必ずしも悪いこととは思わない。北朝鮮という無法国家の横暴が目に余る中、政府が現行法の枠内で成しうることを最大限考えることは決して責められるべきではない。 だがそれでも法改正は必要である。現行外為法ではどんなに解釈を変更してもやはり単独での制裁は不可能だからである。今回の新解釈でも日米二国の合意は必要としている。「国際的な努力」とうたっている以上、最低でも二か国は参加しないと発動しえないのだ。さらに言えば法治国家においては法律を改正するのが筋である。解釈変更が絶対に不可とは言わない。しかし法改正こそ王道である。また法律を改正してこそ北朝鮮への強いメッセージになるはずである。解釈変更の有無にかかわらず外為法の改正は推進すべきなのである。
◆批判への反論
外為法改正に対しては批判もあろう。主な反対論とそれに対する私の意見を述べておこう。まず考えられるのが「北朝鮮に対しては制裁よりも対話でのぞむべきだ」という声である。私も対話は重要だと考えている。 金正日政権というのは信ずべからざる相手であるが、それでも対話の努力は放棄すべきではない。だが大切なことは経済制裁というのは決して対話と相反するものではない。十分両立しうるものである。そもそも経済制裁というのは戦争によらず国際紛争を解決する手段である。軍事制裁という破局を避けながら問題解決を図る現代の智恵なのである。平和的解決のための一つの手段ともいえる。少なくとも日本のカネとモノが無制限に北朝鮮に流れている現状を放置して、彼らに戦争の準備をさせる方がよほど危険だと私は考える。
次に単独制裁をしても実効性がないという批判がある。いくら日本だけが送金規制をしても第三国経由で北朝鮮に流れてしまう可能性がある。抜け穴だらけの法律では意味がないという論法である。確かに迂回の危険性はある。だがそれでも制裁を打ち出すことは意味がある。経済制裁には実効性の他に象徴的な意味もある。毅然とした姿勢を示すことそのものが重要である。その上、迂回送金の心配をしだせば単独制裁の場合に限らない。主要国の協調で制裁を実施する時でも抜け穴は残りうる。単独制裁の場合のみ、実効性がないと言い立てるのは的はずれではないだろうか。 もちろん迂回送金を極力防ぐべく情報収集能力を高めることが必要なのは言うまでもない。また資金は迂回しやすいが、貿易などは単独制裁でも効果があることを指摘しておきたい。
◆結びに
我々の外為法改正案というのは要は経済制裁の発動要件を緩和するというだけのことである。自国の判断で制裁を行ないうるというのは主権国家として当然すぎるほど当然のことである。諸外国も皆そうしている。 経済制裁の規定は国によってかなり異なるが、自国の判断で発動しうる点は共通している。その点で、至極常識的な法案だと考えている。
この法案が成立したからといってすぐに制裁が発動されるというわけではない。必要があればいつでも発動できるようになるということである。必要がなければ発動しなければいい。つまり日本外交の選択肢が広がるのである。本当に重要なのはこの点である。そうした中で拉致・核といった北朝鮮が引き起こした諸問題が解決されるきっかけになればと思っている。
法案成立までの道は確かに険しい。党内手続き一つをとってみても部会の了承が済んだところにすぎない。まだ第一段階といえる。しかしそれでも国家として必要な法律である。「法案」から「法律」に呼び名が変わる日が近い将来必ず来ると信じている。
参考資料1) 3月時点の法案と6月4日に自民党部会で了承された最新法案の相違点の主なものは以下の通りである。
*変わっていない部分
必要があれば我が国単独の判断で経済制裁を発動できるようにした点
*修正を加えた部分
我が国単独の判断で経済制裁を発動する場合の条項を第10条として設け、これを第2章「我が国の平和及び安全の維持のための措置」として独立させた点。
3月当時の案では単独経済制裁が第9条の2によって発動されるだけでなく、第16条、第48条などの条文によって主務大臣(この場合は財務大臣や経済産業大臣)の判断によっても発動しえた。しかしこれに対して「我が国の平和と安全の維持のために経済制裁の必要があるか否かを判断するのが、なぜ限られた一部の大臣なのか」という疑問が出された。 そこで今回の案では我が国単独の判断で経済制裁を行なう時は、必ず第10条に基づく閣議決定を経るようにした。 また制裁時の輸出規制は3月の案では第48条第1項に基づいて行なうようになっていた。これを今回の案では第48条第3項で発動するようにした。それに伴って第3項に修正を加えた。
産廃特措法が成立へ
2003.05.17
「産廃特措法が成立へ」
不法投棄撤去の新法とは何か。その中身と課題をわかりやすく解説。 「エコケミストリー」誌掲載
現在開会中の通常国会で産業廃棄物の不法投棄に関する二法案が成立する。政府はすでに二法案を国会に提出している。会期末の6月までには成立する見込みである。不法投棄を取り締まる法律はこれまでも存在した。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」である。この法律は不法投棄に厳しく対処するために平成3年、9年、12年に改正されている。頻繁な改正はそれだけ対策が後手に回っていることを意味している。 法律を厳しくしても不法投棄を行なう側は抜け穴を見つけ出し、それを塞ぐためにまた法律を改正するということが繰り返されてきた。
今回の二法案の一つはこの廃棄物処理法の改正である。平成になってから四回目の改正になる。今度の目玉は不法投棄に未遂罪を新設したことである。さらに国の立ち入り検査権の創設も盛り込まれている。 もう一つが「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法」という新しい法律である。名称が長いので産廃特措法と略されることが多い。この新法はすでに不法投棄されてしまったゴミの山を片付けるための法律である。廃棄物処理法が将来の不法投棄の未然防止を狙っているとすれば、こちらは過去の負の遺産を清算するための法律といえよう。同法は堆積している不法投棄を平成15年度から24年度の10年間でほぼ一掃することを目指している。なぜこの法律が必要なのか。それを理解するためにも、不法投棄された産業廃棄物がどのような手続きで撤去されているかをやや詳しく見てみよう。
◆年々溜まっていく不法投棄
環境省の調べによると平成13年度に不法投棄された産業廃棄物は全国で24万トンだった。前年の40万トンに比べれば大幅に減少したが、ある推計によると実際の投棄量はこの100倍にも達するという。100倍もあるかどうかはともかく、実態が24万トンという数をかなり上回っているのは事実だろう。このままでは日本列島はゴミの列島になってしまう。 しかも不法投棄は有害物質を含んでいることが多い。 投棄現場では高濃度のダイオキシンや鉛・水銀・カドミウムなど多くの危険物質が検出されている。こうした物質は近隣住民の健康被害に直結する。地下水汚染の心配もある。 さらに不法投棄は悪臭や自然発火なども引き起こす。 大変深刻な環境問題なのである。 それだけに不法に捨てられてしまった産業廃棄物は一刻も早く撤去される必要がある。だが年間に不法投棄された24万トンのうち原状回復、つまり撤去が始まったのはわずか14万トンにとどまっている。残り10万トンは投棄されたままということになる。これでは年々不法投棄のゴミの山が溜まり続けていってしまう。
◆誰が撤去するのか
では誰が撤去すべきなのか。当然、不法投棄の原因者が行なうべきである。法的にもそれが大原則になっている。不法投棄があった場合、まず都道府県は投棄の実行犯ら原因者に対し撤去を求めて行政指導する。産業廃棄物行政を司るのは都道府県だからである。原因者がそれに従わなければ撤去するように命令を出すことができる。これを措置命令といい、法的拘束力もある。措置命令をかけられる対象者が廃棄物処理法第19条の五で定められている。これによれば措置命令は不法投棄を行なった者、一定の要件に該当する排出事業者、その他不適正処分に関与した者などにかけることができる。 自らが投棄した者はもちろんのこと、直接投棄したわけでなくても処理委託基準を満たさなかった排出事業者やさらには土地所有者の責任も問えるのである。土地所有者と一口に言っても自分の土地に勝手にゴミを捨てられた純然たる被害者もいるだろう。逆に裏面で不法投棄に関与している地主も多い。後者のような場合には措置命令をかけられる。こうして不法投棄の関係者が自ら撤去するのが原則になっている。
平成13年度の不法投棄24万トンを例に取り、誰が撤去したかの内訳を見てみよう。
不法投棄量 24万1675トン
うち撤去に着手されたもの14万1472トン
撤去の実施者は
投棄実行者12万1949トン
排出事業者 8506トン
土地所有者等 4198トン
地方公共団体1972トン
その他 1972トン
(トン以下は切り捨て)
◆都道府県の代執行とは
このように現在も原因者によって原状回復が行なわれてはいる。ただ一方で手付かずのものが多いのもまた事実である。撤去が進まない理由は何だろうか。これも平成13年度の場合を例に見てみたい。同年度に投棄された24万トンのうち撤去が未着手のものは、10万0203トンに上る。その理由は以下の通りである。
投棄者不明3万4909トン
指導に従わない 2万2246トン
資力不足 1万0528トン
行方不明・連絡不通 1万0402トン
回収不能 32トン
その他1万0402トン
最大の理由は投棄者が分からないことなのである。こうした場合には行政が指導しようにも、措置命令をかけようにも手の打ちようがない。また犯人は分かっているが撤去するだけの資力がないということも多い。無い袖は振れないというわけである。こうした時にはどうするのか。 原因者による撤去を待っていてはいつまで経っても埒が明かないということもある。そこでやむをえない時は都道 府県が自ら撤去に乗り出すことができる。これを行政の代執行という。上の例で平成13年度に地方公共団体が1972トンの不法投棄を原状回復とあるのがこれにあたる(実際には1972トンのすべてが法律上の代執行の手順を踏んでいるわけではない)。
ともあれ現在でも最後の手段として都道府県が産廃を処理するという手立てはある。だが都道府県はこの最後の手段に訴えることに消極的だった。一つには産廃処理はあくまでも投棄者などの責任であり、税金で処理するのは筋が通らないという理屈による。最後は税金で処理するのでは捨てた人間の「捨て得」を許してしまう。さらに費用があまりにも大きいということもある。日本最大の不法投棄現場である青森・岩手の県境の産廃を処理するには数百億円かかると見積もられている。これだけの額を県が負担するのは確かに厳しい。そこで都道府県はこの最終手段をなるべく回避してきた。しかも悪いことに措置命令に踏み切ることにさえ躊躇しがちだった。措置命令をかけた以上、相手がそれに従わなければあとは代執行するしかなくなる。つまり自らの負担に道を開くことになる。これを恐れるあまり、毅然とした姿勢が示せなかったわけである。
◆都道府県への国の支援
代執行を行なう時、都道府県だけが負担をするのでは彼らが尻込みするのも無理はない。そこで国が資金面で補助する仕組みが作られた。平成9年の廃棄物処理法改正で都道府県が代執行をする時は「産業廃棄物適正処理推進センター」が支援することになった。同センターが総額の4分の3を出すので都道府県の負担は4分の1だけですむ。同センターにはそのための基金があり、原資は国と産業界が1:2の割合で拠出している。つまり全体の負担割合は国が4分の1、産業界が4分の2、都道府県は4分の1ということになる。これによって代執行に至ったとしても都道府県の負担はかなり軽減される。後顧の憂いなく措置命令もかけられるというわけである。
だが問題はある。同センターの支援は平成10年6月以降に捨てられた産業廃棄物を撤去する時に限られている。 平成10年6月ということに特別の意味はない。平成9年6月に改正された廃棄物処理法が1年後に施行されたというだけのことである。ところが実際には多くのゴミの山はそれ以前に捨てられた産廃の名残なのである。環境省の平成13年6月の調査によると全国の不法投棄産廃1214万トンのうち平成10年6月以前のものが85%を占めている。
そこで10年6月以前の産廃を撤去する時にも国は補助を出すようにした。しかしこれは法律に基づく補助ではない。あくまでも毎年の補正予算で補助金を工面しているにすぎない。法的には10年6月以前の産廃撤去の支援策は空白なのである。
◆新法の内容と今後の課題
今回成立が見込まれている産廃特措法はこの空白を埋 めることを狙いとしている。古い産廃であっても都道府県が撤去に乗り出す時は国がきちんと支援を行なうためのものである。同法は10年6月以前に不法投棄された産業廃棄物を「特定産業廃棄物」と定義して、これを今後10年間(平成24年度まで)で集中的に撤去することを目指している。そこで法律自体も平成24年度末までの時限立法になっている。
肝心の国の補助率は有害物質が含まれている産廃で2分の1、そうでないものは3分の1となる。数値そのものは法律成立後に政令で定められる。この結果、投入される国費は10年間で総額400億円ほどと見積もられている。 残りは都道府県が負担するが、これも起債で対応できるようにした。ちなみに産業界の負担は想定されていない。
よく産廃特措法によって今後10年で全国の不法投棄が一掃されるという言い方がされる。さすがにそれは幻想である。この法律はあくまでも都道府県が原状回復に乗り出す時の国の財政支援を定めたものである。法律が成立すれば都道府県は産廃撤去に前向きになるだろう。だからといってすべての不法投棄の撤去に踏み切るわけではない。恐らく全体の3割ほどが撤去されるにとどまると見込まれている。
それでも新法の制定は大きな前進である。危険性が高く撤去が喫緊の課題になっているような不法投棄の除去はほぼ完了するだろう。だがこれで事足れりとしてはいけない。別の問題が顕在化している。平成10年6月以後の新しい産廃の撤去支援策が破綻しつつあるのだ。支援母体の産業廃棄物適正処理推進センターの基金に資金が集まってこない。産業界の拠出が遅々として進まないためである。この問題については紙数の関係上ここでは詳しく述べられないので、拙稿『不法投棄撤去のために』(水野賢一ホームページに掲載)をご参照いただきたい。
産廃特措法は10年6月以前の古い産廃に絞って処理策を打ち出している。それは新しい産廃はすでに対策済みだという前提があったからである。ところがそこにほころびが見えてきた。このままでは新しい産廃ほど処理が進まないという逆転現象が起こってしまう。いま産廃行政は曲がり角にさしかかっている。とりわけ撤去のための財源は従来の方式では行き詰まってきた。関係者からの強制的な徴収や産廃税による充当なども含めて抜本的な見直しが求められているともかく強制を想起させるあらゆることに反対するのだからたまらない。
不法投棄撤去のために
2002.12.24
「不法投棄撤去のために」
許すまじ不法投棄!その撤去に向けて産廃投棄全国ワースト1位の千葉からの提言
◆産廃撤去のための議連発足
「若手議員による廃棄物不法投棄撤去を推進する会」という議員連盟が11月に発足した。不法投棄は全国各地で大きな社会問題になっている。そこで若手議員が立ち上がった。政界で若手という場合、年齢ではなく当選回数を指すことが多い。この会には衆議院 当選1~2期、参議院当選1回の自民党議員が参加している。 代表には奥谷通・前環境大臣政務官(衆議院2期)、幹事長に木村太郎衆議院議員(2期)、事務局長に松野博一衆議院議員(1期)が就任し、私も創立メンバーの一人になっている。現在までのところ27名の議員が入会している。
これまでにも廃棄物問題に関する議員の会はあるにはあった。だがそれは関係業者との意見交換などを狙いとするものだった。今回発足したこの会の特徴は、力点を不法投棄の撤去に置いた点である。
◆蓄積される不法投棄
平成12年度に不法投棄された産業廃棄物は全国で40万3千トンに上った。前年度よりはやや減ったとはいえ、それでも膨大な量である。ちなみに県別に見ると私の住む千葉県が全国最悪で12万1千トンになっている。しかもその多くは県外で排出されたものが越境してくるのだから質が悪い。
こうした不法投棄をなくすためには様々な側面からの取り組みが必要になってくる。まず罰則の強化である。実はこれはかなり厳しくなってきた。不法投棄の罰則は平成3年までは「3月以下の懲役又は20万円以下の罰金」だったのに対し、現在では「5年以下の懲役又は1000万円以下の罰金」になっている。また監視・パトロール体制の強化も必要だろう。これらの施策によって今後の不法投棄を未然に防止することが肝要である。
それに加えて過去の不法投棄をどう処理するかということも重要な課題である。全国各地に不法投棄の山があり、○○富士などと嘆息まじりに呼ばれている実態がある。千葉県を例にとると、首都高速湾岸線で東京から千葉に入り、千鳥町出口を過ぎるとまもなく左手に不法投棄の山「行徳富士」が目にとまる。このようにすでに捨てられてしまった産業廃棄物の撤去も必要である。
平成12年度の不法投棄40万3千トンのうち原状回復に着手されたものが16万3千トンである。逆にいえば残る24万トンは未処理のまま放置されている。つまりこれだけの量が蓄積されていくことになる。昨年6月に環境省が全国のゴミの山の実態を調査した。それによると問題になっている廃棄物は全国に1261万トンもある(うち産業廃棄物1214万トン、一般廃棄物47万トン)。ちなみにこの統計には量が不明なゴミの山は含まれていないので、実際の投棄量はこれを大きく上回ることは確実である。
産業廃棄物の撤去はガレキなどで1トンあたり1~1.5万円とされる。有害物質が含まれていれば2?3万円になる。つまり全国の不法投棄を一掃すると数千億円の費用がかかることは間違いない。
(注)この稿を書き上げた後、平成13年度の産業廃棄物の不法投棄量が発表された。12年度よりは大幅に減少し全国で24万2千トン、千葉県は4万8千トンだった。
①千葉県 47731
②岩手県 36481
③茨城県 25501
(単位・トン)
また24万2千トンのうち原状回復に着手されたものは14万1千トンである。
◆誰が撤去すべきなのか
さてこうした不法投棄は誰が撤去すべきなのか。撤去費用は誰が負担すべきなのか。不法投棄で一番悪いのは原因者である。つまり不法投棄に関与した人間が処理するのが当然である。 現在の廃棄物処理法でも投棄者・注意義務違反の排出事業者・土地所有者などに責任を負わせている。
だが残念ながら原因者が不明の場合がある。もしくは原因者が明らかでも財力・資力がないこともある。倒産しているなどの例がこれにあたる。だからといって放っておくわけにもいかない。 産業廃棄物にはダイオキシン、PCB、カドミウムなどの有害物質が含まれていることが多い。地下水汚染も懸念される。
そういう場合には原因者に代わって都道府県が撤去することができる。これが代執行と呼ばれ、廃棄物処理法第19条に規定されている。とはいえ都道府県もあまりこれをやりたがらない。 費用がかかるからである。例えば千葉県市原市福増の不法投棄は県内最大規模であり、今年5月には廃棄物処理法違反で5名の逮捕者を出しているが、このゴミの山の撤去には約80億円くらいかかると見込まれている。莫大な出費に都道府県も尻込みしてしまう。しかも不法投棄の撤去というのはあくまでも片付けであって、公共事業のように資産が後々まで残るわけでもない。そこでどうしても消極的になってしまう。本当はこうした負の遺産をなくすことも大切なのだが、都道府県がなかなか重い腰を上げないのが実状だった。
◆不十分な支援策
そこで都道府県を後押しするために平成9年に廃棄物処理法が改正され、国と産業界が資金面で支援することになった。まず産業廃棄物適正処理推進センターを全国に一か所設け、ここに基金を置く。この基金には国と産業界が資金を出す。そして都道府県が代執行する場合にはこの基金から費用の4分の3を出すことにした。これであれば都道府県の負担は4分の1に軽減される。そこであまり負担を気にせずに代執行に着手するようになるだろうと見込んだわけである。ちなみに基金の原資は国と産業界が1:2の割合で拠出しているので、全体の負担割合は都道府県が4分の1、国が4分の1、産業界が2分の1ということになる。こうした支援が行なわれるのは平成10年6月以降に不法投棄された産廃に限られている。それでも従来に比べれば一歩前進したとはいえる。
ところがこの基金への資金の集まりが悪い。現在の残額は9億円しかない。先の市原市のように一件80億円などというのがあれば、この基金からは4分の3、つまり60億円の支援が求められる。この程度の残額では一か所の産廃撤去にさえ足りない。実際にこの基金が資金協力をした産廃撤去はこれまでに11件あるが、小規模なものばかりだったので協力額は計8億円である。これでは全国の廃棄物の原状回復などは夢のまた夢である。
◆協力不足の産業界
なぜ資金が集まらないのか。産業界が十分な協力をしないためである。産業界は平成13年度までは年に数億円ずつの拠出をしていた。13年度の場合は、建設団体が2.8億円、自動車工業会・鉄鋼連盟がそれぞれ800万円などで合計4億円である。しかし14年度はまだ資金協力の構えを見せていない。廃棄物処理法第13条には環境大臣は「基金への出えんについて、事業者等に対し、必要な協力を求めるよう努めるものとする」と明記されている。環境大臣が産業界に協力要請することは法律上の義務なのである。ところが実際には大臣が協力を求めたことはない。潤沢な資金があるならばそれでも構わないだろう。だが現実は産業界が躊躇しているために資金不足に悩んでいるのだ。それならば一層明確に要請すべきなのである。しかもこれは法律に記されていることなのである。にもかかわらずそれが実行されてこなかったのは、いったいどういうことだろうか。産業界に対して過度に遠慮した姿がうかがえる。
そこで私は12月6日の衆議院環境委員会でこの問題を取り上げた。鈴木俊一環境大臣は私の質問に対して、要請していなかったことを認め、「今後、必要があれば事業者等に要請をしてまいりたいと思っております」と答弁した。今後は法律通り、きちんと産業界に負担を求めていくべきである。また金額も従来のような年間数億円では足りない。より大きな負担を要求すべきである。
産業界からの出捐がないと負担は国と都道府県だけにかかってくる。これはおかしな話である。確かに不法投棄の撤去は必要である。とりわけ健康に悪影響をもたらす有害物質の場合は特にそうである。国や都道府県が放置していいわけがない。だがそのすべてを税金で処理するというのは筋が違う。 不法投棄者の責任を安易に税金で穴埋めするのはモラルハザードにつながる。やはり多大な産廃を排出している産業界に一定の負担をしてもらわなければならない。それによって責任感も生まれ、廃棄物の減量化にも取り組むようになるだろう。まして平成10年6月以前に不法投棄されたものの原状回復については産業界には負担を求めていないのだ。せめて法律に明記された10年6月以降分については積極的な資金提供をしてもらわなければならない。
◆さらなる法整備に向けて
平成10年6月以降の不法投棄を都道府県が撤去する時は国と産業界が支援することになっている。支援のための基金が不足していることは前述した通りだが、少なくとも法的な制度は整っている。一方、それ以前に不法投棄されたものを撤去する時の支援策は法律上はない。だが古い不法投棄の方が量は圧倒的に多い。全国の廃棄物の山1261万トンのうち平成10年6月以降のものが164万トンなのに対し、それ以前のものが実に1085万トンと大半を占めている(投棄時期不明が12万トン)。こちらの対策も急務である。
環境省はこの部分に的を絞った新法「産業廃棄物の不適正処理に係る原状回復等の推進に関する特別措置法(仮称)」を来年にも制定したいとしている。また廃棄物処理法の改正も検討されている。処理しにくい製品を作った製造者には一定の責任を負わせる方向である。「拡大生産者責任」は時代の潮流である。歓迎すべき動きといえよう。
廃棄物不法投棄は緊急の課題である。特に国会議員は立法活動を通じて社会問題を解決するのが仕事である。私自身も志を同じくする議員と相語らいながら今後ともあるべき法整備を目指したい。そのために若手議員の会を創立したのである。今まさに我々の責任が問われている。次世代に負の遺産を残すわけにはいかないのだから。
※平成14年12月6日の衆議院環境委員会にて不法投棄問題を取り上げた(議事録を参照されたい)。その後、12月5日に「若手議員による廃棄物不法投棄撤去を推進する会」より鈴木環境大臣らに申し入れを行った。
外務省、台湾訪問解禁へ
2002.12.09
「外務省、台湾訪問解禁へ」
外務省が時代遅れの内規をついに改正。水野賢一の国会質問が冴える。『エネルギーフォーラム』誌に掲載論文。
ここ一年以上にわたって外務省は批判の集中砲火を浴びてきた。一つには機密費問題など不祥事の噴出のためである。もう一つが外交姿勢に対する批判である。とりわけ潘陽総領事館事件では中国への弱腰が叱責された。
外務省の中国への遠慮を象徴していたのが、課長以上の台湾訪問を認めないという内規だった。確かに日台間には正式の国交はない。だが国交はなくても政府首脳が訪問する例はある。今年9月の小泉首相の北朝鮮訪問などはその最たるものである。それではなぜ台湾の場合には、課長級でさえ駄目なのか。理由は実に簡単である。中国が怒るからというだけのことである。 私は以前、外務大臣政務官在職中に台湾訪問を希望した。だが中国に遠慮する外務省当局によって認められなかったため、それに抗議すべく辞任した。課長の訪台さえ認めない外務省からすれば政務官訪台など論外というところだったのだろう。
そこで私は11月22日の衆議院外務委員会でこの内規について取り上げた。答弁の中で外務省側は内規の改定を約束した。これで将来的には閣僚級の訪台への道も拓けることになった。従来の内規が定められたのは昭和55年である。20年以上経った今、時代は大きく変わった。改定は当然である。遅きに失したとはいえ一歩前進と評価できる。
だが他の部分では中国への過度の遠慮が今なお続いている。慶応大学の学園祭で講演しようとした李登輝前総統にビザを発給しなかったこともその一例である。 日中関係は大切である。だが台湾との関係もまた重要である。しかも台湾は自由や民主主義という価値観の点でも日本と共有する点が多い。東アジアの民主国家同士として今後の関係強化が求められている。
※平成14年11月22日の衆議院外務委員会の議事録を参照いただきたい。
成田空港民営化について
2002.11.03
「成田空港民営化について」
行革に逆行する国土交通省案=成田・関空統合案に反対。正しい民営化のあり方とは。
◆成田と関空
日本に空港は88ある。国際定期便が発着しているものに限ると23空港となる。ただ国際線のほとんどは成田空港と関西国際空港に集中している。2001年の場合、国際便の乗降客数の54%が成田空港を利用している。関空が25%でこれに続き、三位の名古屋空港の9%を大きく引き離している。この二つの空港だけで全国の79%を占めていることになる。まさにこの両空港こそ日本の表玄関と呼ぶにふさわしい。
成田空港を建設・運営しているのは新東京国際空港公団という特殊法人である。年収1500億円、従業員900名なので企業にあてはめれば一部上場企業に比べても遜色ない。一方、関空建設のために設立されたのが関西国際空港株式会社である。これは株式会社という形態をとっているが、やはり特殊法人の一つである。行政改革の掛け声の下、今この二つの特殊法人をどうするかが焦点になっている。すでに民営化されることは決定している。だがその時期や方式が定まっていない。今年の末までにどのように民営化するかの結論を出すことになっている。
◆特殊法人改革
特殊法人改革の必要性は以前から叫ばれていた。親方日の丸の非効率的経営、天下りの温床、使命の終わった事業の存続という手厳しい批判が寄せられていた。そこで特殊法人の統廃合が進められ、最盛期には113に達したその数も、現在では74にまで減少している。
昨年4月に発足した小泉内閣は構造改革を掲げているが、その大きな目玉が特殊法人改革である。民間でできることは民間でやるという考えの下、昨年12月には特殊法人等整理合理化計画が閣議決定された。ここには多くの特殊法人や認可法人の廃止・民営化・独立行政法人化が盛り込まれた。だがこの時点では決まらなかったものもある。話題の道路関係四公団もそうだった。そして空港関係も2002年中に結論を得るということで決定が一年間先送りされた。
◆当初の国土交通省案
この整理合理化計画の策定に先立つ昨年9月、国土交通省は新東京国際空港公団と関西国際空港株式会社の民営化についての同省案を発表した。成田と関空と2005年開港予定の中部国際空港をそれぞれ上下分離にして、上物は三空港別々に民営化、下物については三空港一体の公的法人にするというものだった。上下分離というのは空港の管理・運営をする上物法人と滑走路などを整備・保有する下物法人を別会社にするということである。JRにおけるJR貨物とJR東日本などとの関係にやや似ている。JR貨物はあくまでも貨物列車の運行をするだけで、下物である線路は別会社であるJR東日本やJR九州などが保有しているという関係である。上を走るJR貨物は線路の使用料を下物法人に支払うことになる。国土交通 省案ではこれと同じように空港を管理・運営する上物会社が滑走路などの施設使用料を下物法人に払うわけである。
◆国土交通省案への批判
この案の最大の問題点は三空港の下物法人を統合したという点である。要は収益力のある成田と赤字に悩む関空を一緒の会計にして関空の赤字を補填しようということである。関空を大赤字にした国土交通省の失政を隠し、そのツケを成田に回したわけである。高速道路で強い批判を浴びているプール料金制をどさくさに紛れて空港にも導入しようとするものだともいえる。国土交通省自身、この仕組みでは成田空港は今後33年間にわたって毎年154億円分、関空と中部国際空港が持つ債務を肩代わりすることになると認めている。逆に関空の負担は毎年127億円、中部の場合は毎年28億円軽減されることになる。国土交通省はこれを「平準化」という言葉で飾ったが、実態は単なる損失補填であり誰がどう見ても関空支援策に他ならないものだった。
当然、関西国際空港株式会社、大阪府、関西政財界などは歓迎し、千葉県などは猛反発した。しかしこの案は単にそうした地域的な損得を超えた問題をはらんでいた。関空が赤字だからといって別のところから黒字を持ってくればいいという安易な発想そのものが行政改革に真っ向から反するものだからである。私はこの案に対しては強く反対した。
自民党行政改革推進本部の総会などで私は次のように述べ続けた。「私は民営化そのものに反対するわけではない。しかし成田と関空・中部を一緒の法人にすることは納得できない。これは単に成田の黒字で関空の赤字を補填しようというものではないか。いま高速道路などでこれだけプール料金制が問題になっている時に、新たに空港にプール料金制度を導入するというのはそれこそ行革の理念に反するものではないのか。成田空港に黒字があるというならばまずそれは地元対策に使うべきである。これは地元エゴで言っているのではない。成田は関空や中部と違って内陸空港なのでどうしても騒音などの問題が発生する。そういう特殊事情を抱えている以上、まずは騒音対策など地元の環境問題に資金を使うべき。それでもまだ黒字が余るというならば、着陸料を下げるべきだ。世界一高いといわれる成田の着陸料を下げることが先決であり、それもしないうちに何故に関空支援に成田の資金が回されなければいけないのか。こんなおかしな案は認められない。」
結局、昨年末の時点では賛否両論が平行線をたどり、まとまりがつかなかった。その結果、12月19日に政府が発表した特殊法人等整理合理化計画では次のような表現になった。「国際ハブ3空港の経営形態のあり方については、従来の航空行政を厳密に検討した上、上下分離方式を含め民営化に向け平成14年中に政府において結論を得ることとする」。つまり結論を一年先送りしたというわけである。
◆国土交通省の方針転換
だが国土交通省案への強い批判はなおも続いた。新聞も全紙そろって反対の論陣を張った。国内の航空会社で組織する定期航空協会も反発した。世界の航空会社でつくる国際航空運送協会(IATA)も懸念を表明した。四面楚歌の中、同省もついに今年9月、姿勢を転換させた。成田と関空を一緒にするということを断念したのである。これまでの案を撤回した背景には7月末に新東京国際空港公団の総裁が変わったことも影響したとみられる。
これで三空港統合という最悪の案は消えてなくなった。だが一口に成田単独民営化といっても、さらに二つの考え方がありえる。一つは成田単独で上下分離する民営化である。この場合は上物法人だけを民営化し、下物法人は公的法人にとどめることになる。もう一つは成田単独で上下一体の民営化である。
関空と統合することには一枚岩で強く反対していた千葉県内でもこの点については見解が分かれる。堂本暁子・千葉県知事は前者を主張し、小川国彦・成田市長は後者が持論だった。国土交通省は今度は上下一体民営化を念頭に置くようになった。ちなみに定期航空協会は成田単独民営化は強く要望していたが、それ以上に踏み込んで上下一体か分離かということにまでは言及していない。
◆上下一体か分離か
民営化というからには上下一体という方が本筋である。建設から運営まで一体に行なってはじめて経営に責任感も生まれ、効率化が図られるといえよう。ただ上下を分けるべきという意見も分からないではない。上下含めてまったくの民間会社になってしまうと環境対策や地元対策は不採算部門だとして切り捨てられるのではないかとの懸念があるからである。完全民営化は環境問題や共生策での国の責任放棄だというわけである。 成田空港の場合、空港公団は毎年100億円を超す環境対策費を支出している。2002年度の場合119億円でその多くは移転補償である。これは内陸空港としては当然のことである。同じく内陸にある伊丹空港でも環境対策費は86億円(02年度)になっている。民間会社になった時に、例えばこうした環境対策費が無駄遣いのように指摘され、株主代表訴訟の対象になったりしたのではたまらない。環境分野などにもきちんと対策をするためには完全な民営化よりも国が何らかの関与をした方が良いという考えも一理ある。
ただ逆にいえば、環境対策などが万全になされるのであれば上下分離にこだわることもない。また2010年度開業予定の成田新高速鉄道への協力も重要である。成田空港と都心を30分台で結ぶこの鉄道には空港公団が出資・負担金などで多大な支援を行なうことになっている。民営化されたとしてもこの事業への熱意は継続してもらわなければならない。こうした点が担保されさえすれば上下一体民営化に反対する理由はなくなる。千葉県の姿勢も上下一体を容認する方向に変わりつつある。私自身も同じ考えである。
担保としては法律への明記が一番確実である。民営化するためには法改正が必要となる。まずさしあたっては来年の通常国会に空港公団を特殊会社化する法案が出される見込みである。法案の中に、新会社の責務として環境対策や地元共生を盛り込むべきである。その中で民営化された成田空港が地域と共に歩む日本の表玄関としてますます発展していくことを期待したい。 項で発動するようにした。それに伴って第3項に修正を加えた。
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