『消費税の安易な増税には反対 』
~税率アップよりもまず税金の無駄遣いの一掃を~
消費税の取り扱いは経済財政政策の最大のテーマになっている。この問題についてどう考えるか水野賢一衆議院議員に聞いた。
Q1 財政難の中、消費税率を上げざるをえないという声もありますが。
水野:確かに日本の財政は危機的な状況です。増税の議論から逃げてはいけませんが、だからといって安易な増税には反対です。まずは税金の無馱遣い撲滅に全力を傾注すべきだと思います。消費税は1%上げると税収が2.5兆円増えるので、上げると言った途端に「わざわざ苦労して切リ詰める必要はない」という雰囲気になり、無駄撲滅の気運が雲散霧消しかねません。また税率アップは景気を冷え込ませる効果がありますし、逆進性があるため低所得者ほど負担感が重くなります。その点からも安易な増税には慎重でなければなりません。
【消費税とは】
消費税は間接税のーつ。昭和63年竹下内閣の時に消費税法が成立し、翌平成元年に税率3%で導入された。それ以前にも大平内閣が一般消費税を、中曽根内閣が売上税の導入を目指したが頓挫していた。平成9年に税率が5%に上がる。この時から1%分が地方消費税という都道府県税となる。残リ4%分は国税である。
Q2 多くの国民は税金の無馱遣いに対して怒っています。
水野:貴重な税金を無駄にすることはそもそも許されません。ところが今年は居酒屋タクシー問題や道路特定財源でマッサージチェアを購入したことなどが発覚しました。これでは国民が怒りと不信感を持つのも当然です。私は党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の主査のー人として徹底的にメスを入れているところです。こうしたことは会計検査院や財務省主計局の仕事ともいえますが、役所任せではなく政治家の立場からきちんと精査していこうと思います。調べれば調べるほど広報費 · 委託調査費の名目でよく分からない支出が見受けられます。また公益法人への支出や随意契約にも不明朗なものがあります。今後もしっかりと監視の目を光らせていきます。
【会計検查院とは】
会計検查院は国家財政の決算が適切かどうかを検査する国の機関。ただし内閣、国会、裁判所のいずれにも属さない独立した組織となっている。設立は明治13年。平成18年度の決算検査報告では310億円の公金の不正支出などを指摘した。職員は約1300名。
Q3 水野さんは道路特定財源の問題ではー般財源化を求める急先锋でしたが,これも無駄遣い撲滅のためだったそうですね。
水野:これまでガソリン税などは道路にしか使えない税金だったので道路特定財源と呼ぱれていました。しかしこの特定財源こそ無駄遣いの温床だったのです。「必要があるから道路を作る」というのではなく「税収があるから使い切るまで道路を作る」という本末転倒のことが起きるからです。しかもこの道路特定財源は年間5兆円を超える莫大な金額でした。そこで私は道路だけを聖域にするのでなく、福祉でも教育でも環境でも必要な分野に自由に使える一般財源にすべきだと強く主張してきました。ようやく一般財源化することが決まりましたが、今後きちんと福祉などに予算が回っていくようにしっかりと監視していきます。
【道路特定財源とは】
ガソリン税は昭和24年に創設されたが、当初は使途は決まっていない税金(つまりー般財源)だった。昭和29年こ当時若手議員だった田中角栄氏の議員立法により税収の全額を道路に充当する税金(つまり道路特定財源)となる。ガソリン税以外では軽油引取税、石油ガス税、自動車取得税なども道路特定財源だった。今年5月にこれらすべてをー般財源化することが閣議決定された。
Q4 将来的には消費税をどうすべきですか?
水野:先に述べた通り私は「無駄撲滅をせずに安易に増税に走るのは手順が違う」と思っていますが、未来永劫いまの税率のままで済むわけではありません。諸外国を見ても日本よりかなり高い税率になっていますし、民主党のように「バラマキは行なうが税は上げない」というのは不可能ですし無責任です。ただ将来、消費税をアップするとすれぱー律に上げるのではなく、生活必需品には軽減税率やゼロ税率を適用するなどきめ細かな対策が求められると思います。
【諸外国の消費税率】
導入年/税率/軽減税率
日本 1989年/5%/なし
スウェーデン 1969年/25%/医薬品はゼロ税率、新聞 · 書籍は6%、食料品は12%
フランス 1968年/19.6%/新聞 · 医薬品は2.1%、食料品は5.5%
イギリス 1973年/17.5%/食料品 · 新聞 · 医薬品はゼロ税率、家庭用燃料は5%
『3~5歳児の幼児教育はすべて無償化を』
~少子化対策のためにも国が率先して経済支援すべき~
Q1 少子化が進み人口が滅少することが心配されていますね。
水野:日本の人口は1967年に1億人を突破し、その後1億2千万人にまで達しましたが、2005年には初の自然滅となりました。このままいくと2055年には8993万人にまで減ってしまうと推計されています。しかも単に人口が減るだけではなく、少子高齢化によって人ロピラミッドの形も崩れていきます。こうなると年金 · 医療が立ち行かなくなるだけでなく経済的活力も失ってしまいます。
【人ロピラミッド】
人ロピラミッドとは男女ごとに年齢別人口を表わしたグラフのこと。普通はピラミッド状の形になるが、少子高齢化が進むと次第に釣鐘型、さらには壺型になっていく。
【過去の日本の人口】
縄文中期26万人
弥生時代59万人
800年551万人
1600年1227万人
1721年3129万人
1868年3402万人
1920年5547万人
1945年7215万人
1965年9828万人
2005年12777万人
※近代以前の人口は鬼顧宏「人口から読む日本の歴史」などによる推計値。1920年以障は国勢調査が行なわれている。
【各国の人口比較】
1950年/2005年
①中国55476/①中国131297
②インド37185/②インド113440
③米国15781/③米国29984
④ロシア10270/④インドネシア22606
⑤日本8362/⑤ブラジル18683
2050年
①インド165827
②中国140884
③米国40241
④インドネシア29688
⑤パキスタン29220
※2050年は「国連世界人口の見通し」による中位推計
※1950年はソ連が存在したが、ソ連のうち現ロシア領の人口
※日本の人口順位は2005年は10位。2050年はフィリピン、べトナムなどにも抜かれ16位と予想されている。
Q2 少子化対策としては国などの経済的な支援も必要ですね。
水野:「産めよ増やせよ」と掛け声をかけただけで出生数が増えるわけではありません。安心して出産 · 育児ができるような環境を整備する必要があります。とりわけ重要なのが未就学児に対する幼児教育の無償化です。現在、義務教育は無償となっていますが、それよりも幼い子供の場合、義務教育ではないということで国の財政的支援が少なく保護者にかなりの負担が掛かります。そこで私はすべての国公私立の幼稚園· 保育所 · 認定こども園の教育を無償化し、保護者負担をゼロにすべきだと考えています。他にも1972年に始まった児童手当制度は徐々に対象を広げて現在では小学校6年生までが対象となっていますが、金額についてもさらに充実させていければと思います。
【義務教育】
日本では6~15歳の9年間が義務教育となっている。憲法第26条2項は「義務教育は、これを無償とする」と定めているが、ここでいう無償とは授業料の無償を意味すると解されている。 6歳未満は義務教育ではないとはいえ、幼稚園 · 保育所の入所率は合計して3歳児の場合は75%、5歳児になると97%(幼稚園が57%、保育所が39%)となっており、事実上ほとんどの児童が入所している。そのため義務教育並みの支援をすべきだという声も強い。
【私立幼稚国では】
全国の幼稚園数は1万3600。そのうち私立が園数で61%、園児数で81%を占めている。私立幼稚園の場合、入園料・保育料の全国平均は年額28万8千円となっており、そのー部を国や市町村が所得や子供の数に応じて補助する形になっている,
Q3 各国はずいぶんと手厚い支援をしているようですね。
水野:イギリスでは5歲からが義務教育ですが、ブレア政權の時にすべての3、4歳児に対する幼児教育も無償化しました。フランスは6歳から義務教育ですが、幼稚園は無償です。韓国も6歳から義務教育ですが05年から段階的に5歲児の幼児教育 · 保育を無償化しています。緒外国に比べても日本の幼児教育に対する予算配分が際立って少ないのは事実です。O6年に约60年名ぶりに改正された教育基本法では新たに「幼児期の教育」について規定を設けましたが、そうした今こそ国の責任でしっかりと予算をつけるべきです。
Q4 とはいえ費用が掛かるでしょうが、財源はどうしますか?
水野:確かに費用はかかります。ただすべての国公私立の幼稚園 · 保育園を無償化しても7~8千億円くらいの予算です。民主党の小沢一郎さんが言っている政策をすべて実施すれぱ少なめに見積もっても合計15兆円以上ものバラマキになりますから、これに比べればずっと少ない金額で済みます。7千億円くらいであれば無駄の切リ詰めと5兆円以上もある道路特定財源のー般財源化などによって調達しうるでしょう。少子化対策を進める以上は、このくらいのことはやるべきだと考えます。
『犯罪被害者の権利を守るために尽力』
法務副大臣をつとめた水野賢一衆議院議員に犯罪被害者支援と治安対策について聞いた。
Q1 水野さんは犯罪被害者の権利のために力を入れてきましたね。
水野:これまでは加害者の権利 · 人権ばかりが強調されて、被害者の権利がないがしろにされる傾向がありました。それが山口県光市の母子殺害事件など凶悪な事件の続発によって「もっと被害者の視点に立つべきだ」という気運が高まり、04年には犯罪被害者等基本法が制定され、その後様々な具体策が講じられていきます。これらの施策の取りまとめには私も法務副大臣などとして関わってきました。
【光市の母子殺害事件】
1999年に山口県光市で23歳の主婦と生後11か月の娘が自宅で殺害された事件,妻と娘を奪われた遺族の本村洋さんが被害者の立場を訴える姿勢が司法制度のあり方に大きなー石を投じた。犯人の18歳(事件当時)の少年はー審 · 二審では無期懲役の判決になるが、最高裁がこれを差し戻し08年に広島高裁で死刑判決が出る。被告人が上告したため現在再び最高裁で争われている。
【法テラスによる被害者支援】
04年に成立した総合法律支援法に基づいて、06年に日本司法支援センター(愛称;法テラス)という公的機関が設立された。法テラスのコールセンターでは法律相談窓口の紹介と犯罪被害者への情報提供のサービスを無料で行なっている(電話の通話は有料)。
法律相談の窓口紹介は#0570-078374
犯罪被害者支援は#0570-079714
Q2 具体策のーっとして、犯罪被害者が裁判にも参加できるようになったみたいですね。
水野:従来、被害者が刑事裁判でできることといえば傍聴席に座ることくらいでした(注)。しかし裁判は公開が原則である以上、傍聴というのは誰であっても可能です。つまり誰であっても可能なことくらいしか被害者の権利として認められていなかったのです。傍聴席に座っているだけでは被告人が「勝手な弁明や嘘八百を言ったとしても何の反論もできません。それはあまりにもおかしいということで07年に刑事訴訟法を改正して、重大犯罪の場合には被害者やその家族も希望すれば法廷の栅の中に入って、被告人に対して質問をしたり、「被告人を懲役15年にして下さい」というような求刑に類する意見も述べられるようにしました。この被害者の裁判参加は08年12月から施行されることになっています。 (注)ただし00年の刑事訴訟法の改正によって被害者意見陳述という制度はー応あった。
Q3 被害者の裁判参加には反対論もありましたね。
水野:日弁連や野党の中には被害者が裁判に参加すると法廷が仇討ち · 復讐の場になるとして反対する声もずいぶんとありました。しかし裁判で被害者が蚊帳の外に置かれている方がよっぽど問題です。血の通った司法を実現するためにも新制度は意義深いと思います。また犯人の更生のためにも被害者と向き合わせ、罪の重さを自覚させることが必要です。
Q4 被害者への見舞金も増額されたそうですが。
水野:故意の犯罪によって身体に危害を受けた人やその遺族には障害の程度に応じて公費でー時金が支給されます。この制度は1981年から始まりましたが、死亡した場に遺族が受け取る最高額は1573万円でした。これに対しては「交通事故の死亡事故の自賠責保険でも3千万円なのに、その半額とは少なすぎる」という指摘も強く、08年から2964万円に増額しました。予算の総額で見ると、この被害者や遺族への支給金は07年の場合、年間9億3千万円でした。一方、加害者である被疑者や被告人のために支払われた金額は国選弁護費だけでも年間75億円なのですから今回の増額は当然だったと思います。
Q5 犯罪の被害をなくすためには、まず治安を改善することも大切だと思いますが。
水野:まったくその通りです。犯罪の発生件数は普通、一般刑法犯の認知件数という数値で表わしますが、昭和期には年間140万720万件くらいだったのが02年には過去最高の285万件にまで増えてしまいました。その後、滅少傾向に転じて07年は10年ぶりに200万件を割り込みましたが、その背景には警察官を2万4千人増員したことがあります。更なる治安改善のためには警察官、検察官、入国管理官といった治安に密接に関係する人たちの更なる増員が不可欠です。まして被害者に対してきめ細かな対応が求められる時代です。今までと同じ人数で冶安の確保にも当たり、一方で被害者に対しても丁寧に封応し説明することは困難です。その点からも警察官などの増員が求められるところです。
【検挙率】
犯罪の検挙率とは普通、一般刑法犯の検挙率を指す。昭和期には約6割だったが、その後急落し01年には19.8%にまで下がった。その後回復の兆しを見せ07年には31.7%となる(千葉県は33.2%)。殺人の検挙率に限れば全国の検挙率は96.5%となっている。
【警察官一人あたりの各国の人口】
日本は警察官一人あたりが負担している人口が多い。逆にいえぱ人口に比べて警察官の数が少ない。治安が良かった時代はそれでも構わなかったが、近年は警察官の増員を求める声が強まっている。
日本511人
イギリス366人
アメリカ353人
フランス286人
『総武快運の終電時間の延長を』
≪早すぎる終電の時間≫
総武本線は千葉県を横断する形で県内各駅と都心を結んでいます。とりわけ直通の快速は沿線住民にとっては通勤・通学の重要な足となっています。そうした中、問題点として指摘されているのが、東京方面からの終電の時間が早すぎるということです。佐倉などに直通する快速の場合、最終電車は東京駅を22:55に出発します。(終点の佐倉着は23:54)23時台には直通電車がないというのは、他の近郊都市鉄道と比べても異例です。この点はJR東日本に対して強く改善を求めていきます。
※東京方面から近郊都市までの直通最終電車
総務本線 東京駅を22:55発 /佐倉駅(55.3km)に23:54着
東海道線 東京駅を23:54発 /平塚駅(63.8km)に0:59着
横須賀線 東京駅を23:51発 /逗子駅(54.9Km)に0:54着
中央線 新宿駅を23:45発 /大月駅(77.5Km)に1:10着
高崎線 上野駅を23:46発 /熊谷駅(64.7km)に0:53着
つくばエクスプレス 秋葉原駅を23:30発 /つくば駅(58.3km)に0:27着
駅名のあとの距離は起点の駅からの距離。佐倉駅よりも遠い所まで直通電車が遅くまで走行していることが分かる。
≪ダイヤにも工夫を≫
他にもきめ細かな対策が求められます。例えば千葉駅始発 · 成田行きの最終普通列車(5両編成)は0:01に発車しますが、これだと千葉駅0:04着の総武快速からの乗換えができません。発車時間を数分ずらせばよいことです。そうなると都賀駅でのモノレールとの接続時間などに工夫を加える必要も出てきますが、利便性を高める方向で知恵を出していくことが求められます。もちろん0:04千葉駅着の快速(現在は千葉駅が終点)がさらに佐倉方面に延伸すればすぺての問題が解決する最善策だということは言うまでもありません。
≪国や自治体の権限≫
当然のことですが鉄道のダイヤを決定するのは事業者(ここではJR東日本)です。国は運行計画の策定をするわけでもなく、許認可権を持っているわけでもありません。鉄道事業法17条によって国土交通大臣が事業者から運行計画の届出を受けることになっているだけです。その点、ダイヤ改正に関しては国や自治体には限定的な権限しかないのは事実ですが、沿線 ·住民の声を受けてJRに対して粘り強く働きかけを行なっていきたいと思います。
≪今後に向けて≫
こうしたことは今までも自治体からJRに対してまったく要望がなかったわけではありません。各市町村の要望を「千葉県JR線複線化等促進期成同盟」(会長は堂本千葉県知事)がとりまとめ、JR側に申し入れを行なってきています。私も国政の立場からもさらに粘り強く働きかけをしていきたいと考えています。これらの要望は決して荒唐無稽な内容ではなく、住民の立場からすれば当然の要望ですから、粘り強く訴えることが実を結ぶと確信しています。
※期成同盟のその他の要望
この期成同盟では他にもバリアフリー化や駅員数の確保などの要望も行なっている。総武本線に関わるその他の要望としては、以下のようなものも取り上げられている。 · 普通· 快速列車の増発 · 増結(特に通勤 · 通学時間帯) · 成田エクスプレスの佐倉駅停車 · 物并駅への通勤快運の停車と構内売店の設置 · しおさい15号の榎戸駅への停車 · 佐倉駅における成田線下り快速列車と総武本線下り普通列車の接続時間の短縮
※JR各駅のー日平均利用者数(平成18年度)
(単位・人)
千葉駅 206,802
東千葉駅 4,226
都賀駅 40,346
四街道駅 47,058
物井駅 8,346
佐倉駅 22,328
南酒々井駅 404
榎戸駅 5,452
八街駅 3,094
(参考)
東京駅 758,700(メトロを加えると899,186)
新宿駅 1,495,860(メトロ · 私鉄を加えると3,311,491)
利用者数の数え方は乗車 · 降車の双方をカウントするので、朝上リ電車に乗車し、夜下リ電車で降車したとすれば2人と計算される。