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羽田の国際化、ちょっと待って
2001.02.04
「羽田の国際化、ちょっと待って」
◆成田空港は遠いから羽田を使おうという声がある。でもその前にやるべきことがあるのでは・・・
【要旨】
最近、羽田空港から国際便を飛ばそうという動きがある。その背景には成田は「遠くて不便だ」という声がある。しかしそれならばまず考えるべきことは成田を「近くて便利」なように都心とのアクセスを改善することではないか。政府もこのアクセスをかねてから約束しているのに実行が伴っていない。政府は一刻も早くこの約束を果たすべきである。
●羽田国際化とは
昭和53年に成田空港が開港して以来、首都圏では成田が国際空港、羽田が国内空港と役割分担をしてきました。ところが最近、「羽田空港から国際便を飛ばすべきだ」という声が強まってきています。いわゆる羽田国際化論です。石原東京都知事や亀井自民党政調会長はこれを熱心に主張していますし、扇国土交通大臣まで同調して千葉県側の強い反発を浴びたのは記憶に新しいところです。
こうした声の背景には「成田空港は都心から遠くて不便だ」ということがあります。確かにそうかもしれません。成田空港は都心から約66キロ離れたところにあり、世界的に見てもこれだけ都心から離れたところにある空港はすくないでしょう。
●まず成田へのアクセス改善を
しかし、だからといって「じゃあ羽田を使えばいいじゃないか」という声には「ちょっと待った」と言わなければなりません。成田空港が「遠くて不便だ」というならば、まず考えるべきことは「近くて便利」なようにすることです。そもそも成田空港が遠いということは建設する前から分かっていたことです。それを承知の上で国は成田に空港を建設したのです。 だからこそ成田への空港建設を決めた昭和41年の閣議決定には東京と成田を高速鉄道で結ぶことが謳れています。そして実際に東京駅から成田空港まで新幹線を通す計画がつくられ、一部地域では着工まで行われました。結局、この構想は挫折してしまいましたが、成田-東京間のアクセスを改善することの重要性には変わりありません。そこで運輸省はこの新幹線に代わる計画として昭和59年にB案ルートという構想を打ち出しました。これは千葉ニュータウンを走っている北総・公団鉄道をさらに東に延伸して成田にまでつなげようというものです。この鉄道が完成すれば、今の京成スカイライナーや成田エクスプレスよりもはるかに早く都心に到達できるようになります。当初の予定ではこの鉄道は昭和75年(平成12年のこと)には開通しているはずでしたが、現実には印旛日医大という駅まで開通しただけで成田市まであと10キロほどがつながっていません。
要するに国は千葉県と地域住民に約束したことをまだ果たしていないのです。新幹線にしてもB案ルートにしても掛け声ばかりで実現していません。羽田国際化とか何とか言う前に、まず国はやるべきことをきちんとやってほしいというのが私の基本的な主張です。つまり「遠くて不便だ」と言う前に「近くて便利」なように交通アクセスを整備すべきなのです。
●国は責任を持って鉄道整備を
現在、運輸省はこのB案ルートを平成27年を目途に完成させるとしています。当初の予定よりも15年ずれ込んだことになります。この鉄道の建設が遅れた理由はいろいろありますが、最大の原因としては1000億円を超すとされる建設資金の調達が大変だということがあります。そうであるならば国が責任を持って資金を投入すべきです。現在の補助制度では空港にアクセスする鉄道の建設費の36%は国と県で補助するようになっています。18%を国が、18%を県が出すということです。現に仙台空港へのアクセス鉄道や中部国際空港へのアクセス鉄道はこの補助制度を使って建設を進めています。
しかし成田は日本の表玄関です。仙台空港などの地方空港とはとは重要性が格段と違います。仙台空港のケースと同じだけしか国が負担しないというのでは明らかな悪平等です。仙台空港への鉄道の建設費の36%を国と県がまかなうのであれば、成田空港の場合は例えば70%くらいは国が負担しても全然おかしくはありません。
●本当に必要な分野にこそ重点投資を
最近、公共事業の見直しが叫ばれていますが、その本義は無駄な投資をしないということにあると思います。車の通らないところに高速道路を建設したり、採算が取れないような地方空港を整備したりするのはやめるべきです。「隣町に音楽ホールができたからうちの町にも」という妙な横並び意識は無駄使いの元凶です。
逆に言うならば貴重な税金を投入するからには本当に必要なところにこそ重点的に投入すべきだということです。その点からしても、成田へのアクセス鉄道に重点投資することは極めて重要だと考えます。ましてこれは千葉県のためだけではありません。都民にとっても外国からの旅行者にとっても、空港利用者の誰にとってもプラスになることです。
さらに言うならば、この鉄道はまったく一から建設するのではありません。すでに成田市の西10キロの印旛日本医大まで開業しているのです。それを伸ばすというだけのことです。財政事情が厳しい現在、まず考えられるべきことはこのようにすでに存在する施設を最大限有効に活用するということではないでしょうか。
◆解説◆
◆深夜早朝の利用 成田空港は深夜23時から早朝6時までは開いていない。この深夜早朝の時間帯に限って、今年の2月から国際便でも羽田空港を使用することが認められた。ただし騒音被害をくいとめるためにこの時間帯は千葉県上空は飛行しない約束になっている。
◆羽田空港と騒音
羽田空港を利用する飛行機は離着陸の際に必ずと言っていいほど千葉県上空を飛行している。これに対し、東京の上空はまったく飛んでいない。これは都内の騒音被害を防ぐためにわざわざ東京上空を避けた飛行ルートを設定しているためである。つまり羽田空港の騒音被害は都民でなく千葉県民が受けているのである。国際線は機材も大型化し、燃料も大量に積むために騒音も格段に大きくなる。つまりこの飛行ル-トのままで羽田に国際便が飛べば、千葉県側の被害はさらに大きくなることが予想される。東京都などが「羽田に国際便を」と主張するならば、まず先にこうした飛行ルートの見直しに着手すべきだという声が強い。
◆B案ルートとは 新幹線計画を断念した運輸省は成田空港へのアクセス鉄道のルートとしてA案、B案、C案の三案を検討した。その結果、北総・公団線を成田まで延長するB案が最適という結論を下した。これがB案ルートで成田新高速鉄道とも呼ばれている。
◆平成27年の開通予定 運輸大臣の諮問機関である運輸政策審議会が平成12年1月に出した答申で、B案ル-トは平成27年までに開業すべきと位置づけられた。さらに運輸省は昨年4月の水野賢一議員の国会質問に対し「平成27年といわずにもっと早くに整備したい」旨の回答をした。こうしたこともあり最近では平成22年開業を目途に準備が進められている。ただし今後実施される環境アセスメントの結果など流動的な要素も多い。
◆水野賢一のひとりごと
この文章は私が選挙区内に配っている機関紙「水野賢一レポート」に掲載したものです。これを書いた直後の2月16日から羽田空港から国際チャーター便が飛び立つようになりなした。また3月には千葉県知事に堂本さんが当選し20年ぶりに知事が変わるなど成田をめぐる状況にも大きな変化がおきています。
しかし私の主張はまったくもって不変です。なにも私は「羽田からは一便たりとも国際便をを飛ばさせない。」と息巻いているのではありません。「成田が不便だというならばまず便利にしてくださいよ。 それが国の努めでしょ」という至極当然のことを言っているだけなのです。 それにしても国は勝手なものです。扇千景とかいう大臣も「成田は不便」みたいなことを平気で言うのですから。そもそも成田が遠いというのは建設する時から分かっていたことです。なにも最近急に遠くなったわけではありません。だからこそ「近くて便利」にするのが国の役目なんです。なにしろ成田に空港をつくるというは国が一方的に決めたわけですから。こうした努力もしないで「遠い、遠い」と担当の大臣が言うとはどういうことでしょうか。まったく不勉強とは怖いことです。羽田を使う飛行機の飛行ルートにもいろいろ言いたいことがありますが、それはまた後日あらためて、ということで。
(このひとりごとは2001年5月13日に記す)
成田新高速鉄道について
2000.06.08
「成田新高速鉄道について」
◆北総鉄道の問題は運賃だけではない。成田延伸についても取り上げた意欲作。
総・公団線を東に延ばして成田までつなごうという計画があります(成田新高速鉄道の建設)。完成すれば、千葉ニュータウンから都心にも成田にもいけるようになり利便性は倍増する。 高すぎる運賃の値下げに取り組む水野賢一は、この成田延伸についても4月20日の国会質問で取り上げ、早期完成の約束を運輸省から取り付けた。前号、前々号で運賃問題解決を誓った水野賢一が今度は成田延伸について語った。
Q.北総・公団線を成田方面に延伸するという構想がありますが、この問題についてはどのように考えていますか。
A.最近、羽田空港を再び国際空港として利用しようという動きがあります。その時に必ず言われるのが「成田は遠くて不便」ということです。しかしそれならば、まず最初にやるべきことは成田空港を「近くて便利」にすることです。そのためには北総・公団線を成田にまで延ばすことが最善策です。これが完成すれば、都心に住む人にとっても千葉ニュータウンに住む人にとっても成田空港の利便性は倍増します。私も最大限の力を注いでいきたいと思っています。
Q.成田への延伸のめどがついたと聞きましたが本当ですか。
A.運輸省の審議会が15年ごとに首都圏の鉄道網の整備計画をつくっていますが、その計画が今年の 1 月にできました。つまりこれからの15年間でどの鉄道を建設すべきかの考えをまとめたわけです。その中では、成田までの路線は2015年までに開業すべきだと位置づけられました。国としてはあと15年間でこの鉄道を開業にまでこぎつけたいという意志を表明したといえます。
Q.では2015年には成田まで開業されると考えていいのでしょうか。
A.計画上はそうです。ただ計画通りになるかどうか不安もあります。実は今から15年前の昭和60年にも鉄道網の整備計画は作られています。その時の計画にも成田までの路線を整備すべきだと書いてあるのです。ところが15年経った今になっても出来ていません。今年の7月に印旛日本医大駅までは開業しますが、そこから先はまったく工事もされていません。ですから今度こそ、計画通りに開業できるように我々も努力しなければいけません。3月には千葉県が中心になって「事業化推進検討委員会」という組織を立ち上げ、県や関係市町村、空港公団、北総開発鉄道など関係者で調整が始まりました。いい方向には進んできましたから、側面から支援したいと思います。
Q.水野さんは国会でも延伸問題を取り上げたということですが。
A.4月20日の衆議院決算行政監視委員会で質問しました。この時は北総線の高すぎる運賃問題と成田への延伸問題について運輸省の見解を問いただしました。その結果、運輸省側も運賃については「長期間、値上げはしない」ことを明言し、成田への延伸についても中馬運輸政務次官が「2015年というまどろっこしいことでなく早期に整備する必要がある」と述べました。ずいぶんと思いきった発言をしたなと思いましたが、そこまで強い決意を述べたのは大きな前進といえます。
Q.ところで、成田までの延伸計画はかなり昔からあるのに、まだ完成していないというと何かネックになっていることがあるのでしょうか。
A.最大の問題はお金、つまり建設費でしょう。ある試算によると建設には736億円ほど掛かるとされていますが、この負担をすることにどの関係者も尻込みしてしまっているのです。つまりどの会社が鉄道を作るのかという一番大事なことが決まっていないのです。鉄道事業者になる候補としては、都市基盤整備公団や新たにつくる第三セクターなどいろいろ考えられますが、今の段階では積極的にやろうという会社がないのです。
Q.建設費の負担がネックというお話ですが、鉄道を建設する時には国がある程度の補助はしてくれないのですか。
A.空港にアクセスする鉄道の場合は国と県が補助を出します。合わせて建設費の36%を補助してくれることになっています。ただ私はこの36%という補助率では不十分だと思っています。もっと50%とか60%とかを国や県が負担する覚悟でいないと、関係者が重い腰を上げてくれないでしょう。地下鉄を建設する場合には、国と県で建設費の70%を補助してくれます。地下鉄が70%で、国際空港へのアクセス鉄道が36%の補助しか受けられないというのはいくらなんでもアンバランスです。見直す必要があると思います。その他にも、空港公団などにも一定の負担をしてもらう必要もあるでしょう。
Q.ところで新しい鉄道ができると、都心と成田空港はどのくらいで結ばれるのですか。
A.30分台で結ばれる予定ですね。現在の京成スカイライナーや成田エクスプレスよりも十分以上短縮されます。北総・公団線のレールの幅は1435ミリで普通の鉄道より広く、新幹線と同じ幅になっています。ですから高速で走るのに適しているのです。
Q.千葉ニュータウンの住民にとって鉄道の成田延伸は、運賃値下げと並ぶ悲願です。今後の取り組みに期待しています。
A.千葉ニュータウンは本来19万4000人が入居する計画だったのですが、実際には8万人くらいしか住んでいません。こうした見込み違いが様々な弊害を生み出しています。一層の入居を促進するためには鉄道をより便利なものにする必要があります。今後も最大限の努力をしていきたいと思っています。ぜひ期待してください。
◆水野賢一のひとりごと
これまた昨年の選挙の直前に出したビラに載せたものです。 成田空港が「遠くて不便だ」というならば「近くて便利」なようにアクセスを良くしろというのが私の基本的な考え方です。 最近もこのことを堂本知事に申し入れるために5月17日に実川代議士、関係県会議員、関係市町村長と県庁に行きました。堂本知事もこの問題には極めて一生懸命だという印象を受けました。特に感銘を受けたのは、ただ単に陳情を受けて官僚的に対応するというのではなく、自分の言葉で鉄道延伸の必要性を熱心に語ったことです。
この印象通り、堂本知事は5月29日に国土交通大臣と会ってかなり前向きの言質を引き出しました。この分だと最短で2010年にはこの鉄道の開業ができる見込みです。 ところで文中後半にある補助率嵩上げの問題も僕なんかは当然のことだと思うんですけどねえ。財務省が嫌がっているようです。まあ彼らからすれば出すものは舌でも嫌だということなんでしょうけど、他に無駄な投資を一杯しているのにまったくおかしい。大蔵省から財務省に名前が変わっても体質は変わらないのかなあ。 なお成田へのアクセス問題については2001年2月4日の頁もご覧ください。 (この◆水野賢一のひとりごとは2001年5月31日に記す)
◆水野賢一のひとりごと-追補
成田新高速鉄道建設に向けた気運はだいぶ高まってきました。これまで取り組んできた甲斐があったというものです。6月22日には亀井善之代議士(神奈川16区)を代表として千葉、東京、神奈川、埼玉の国会議員15人ほどで首相官邸に行き、小泉総理に対して成田へのアクセス改善の申し入れをしました。もちろん私も実川幸夫代議士も参加しました。 千葉と東京は羽田国際化の問題では対立することが多いけど、アクセス改善では一致できます。協力できることは協力してどんどん進めていくべきでしょう。 最近の大きなトピックは東京駅乗り入れの話も動きだした点です。 これまで議論になっていた成田新高速鉄道は「上野-日暮里-京成高砂-千葉ニュータウン中央-成田空港」という経路を前提としていました。これはこれで完成すれば、大きな前進です。
しかし「東京駅と成田空港のアクセスを改善しないと不十分だ」という声も説得力があります。そこで今回、東京駅八重洲側の地下を工事してこの鉄道を東京駅に乗り入れることの研究も進められることになりました。つまり「東京駅-京成高砂-千葉ニュータウン中央-成田空港」というルートも可能になるということです。東京駅周辺の地下工事は難作業になることが予想されるので、順調に進むかどうかは分かりませんけど、歓迎すべき動きです。 さらに本文でも主張した補助率の嵩上げもできそうな雰囲気になってきました。まだまだ油断は禁物ですけど・・・。 (この追補は2001年6月22日に記す)
北総・公団線の運賃問題(3)
2000.06.01
「北総・公団線の運賃問題(3)」
◆大好評連載第3弾!運賃値下げのための具体策を提示。
北総・公団線の運賃値下げを求める住民の要望に応え、水野賢一衆議院議員は四月二十日の国会質問でこの問題を取り上げ、運輸省から「長期間、これ以上の値上げはしない」との約束を取りつけた。前号では、運賃問題の解決策として低利への借り換えを提案した水野代議士が、今回は鉄道に対する国の補助制度の問題点について語った。
Q.前号では、北総鉄道(株)が鉄道建設公団に分割払いをしている建設費 の金利が高いことが、会社を経営難に陥らせ、高額運賃の元凶になってい るとおっしゃっていましたが。
A.そうです。この鉄道会社の収入はだいたい年間百億円程度で営業利益は二十四億円くらいあがっています。しかし年間五十億円を超える金利を払っているのですから、利益などは吹っ飛んでしまって赤字になってしまうのです。だからこそ低利への借り換えが必要だと提言しています。
Q.金利負担があまりにも大きいなら、それに対して国や県は補助をしてくれないのですか。
A.実のところ現在でも補助制度は一応あります。「一応」といったのは実際には機能していないからです。現行の補助制度とは「P線補助」と呼ばれていますが、その内容は金利が五%を超えた場合には、その超えた部分を国と県が折半しながら負担するというものです。例えば七%の金利ならば、五%を超えていますからその超えた二%の部分を国と県が負担します。国が一%、県が一%というわけです。つまり鉄道会社が負担する金利は最大五%までで、それ以上は国や県が補填してくれるという仕組みです。
Q.しかし前号での水野さんのお話ですと北総鉄道(株)が払っている金利 は確か4%台でしたよね。
A.平成11年度で4.47%です。そうすると5%以下ということで補助の対象にはならないのです。先ほど、補助制度が実際には機能していないと申し上げたのはそういう意味です。制度としてはあるけれども「空振り」に終わっているのです。
Q.それでは五%以上は補助するというのではなく、例えば三%を超えたら 補助するというように改めたらいいのではないでしょうか。
A.まったく同感です。高金利時代ならともかく、この低金利時代では四%の金利でもけっこう大きな負担に感じるわけです。そこで私は国会質問でもこのことを問い質しました。いったい五%というラインはいつから決まっているのかと。そうしたら昭和四十八年からだと言うんです。二十七年間も変わっていないわけです。金利というのは日々変動しているわけですから、いつまでも五%というラインに固執していたらこの補助制度が形骸化してしまうのではないかと心配です。
Q.時代と共に補助制度が変わるのも当然じゃないかと思いますが、難しい ことなのでしょうか。
A.このことは運輸省などでも心ある人は理解してくれています。ところが大蔵省が反対しています。必要な補助金であれ何であれ、出すものは舌でも嫌なんでしょう。もっと他の無駄使いを切り詰めるべきなんですけどね。しかし官僚の抵抗がある時こそ、政治主導で活路を見出すことが求められているわけですから今後も努力していきたいと思います。 だいたいこの現行のP線補助がうまく機能しているならば私もわざわざ国会で追及したりしません。しかし実際にはこの補助制度が形骸化しているために北総鉄道をはじめ多くの鉄道が大赤字にみまわれています。千葉県をみても東葉高速鉄道もそうですし、千葉急行にいたっては経営破綻してしまいました。だからこそ制度そのものを見直すべきだと主張しているわけです。
Q.例えば補助を実施するラインを三%にまで下げれば、北総鉄道の運賃は 下がりますか。
A.すぐに値下げにまで直結するかどうかまでは断言できませんが、鉄道会社の経営を楽にするという点で値下げへの環境が整備されるとはいえるでしょう。ただ一つ問題があるのは、このP線補助の制度では補助を受ける期間というのは普通二十五年間あります。ところが北総鉄道のようなニュータウン鉄道に限って十五年しか補助を受けられません。これまた不合理で差別的な政策だと思いますね。今のところは補助の対象になっていませんから、十五年だろうと二十五年だろうと実害はありませんけど(逆に実益もないが)、もし補助が行われれば、こうした差別的な措置も改善しなければならないと思います。
Q.ところでこれまでに運賃を値下げした例というのはあるのでしょうか。
A.最近では京王電鉄や北神急行の例があります。定期代だけ値下げした例としては多摩都市モノレールなどがあります。値下げは決して夢物語ではないのです。
Q.今後もご活躍をお祈りします。
A.ありがとうございます。運輸省から「値上げはしない」という約束は取りつけましたが、今後は値下げというさらなる目標に向かって進みたいと思います。簡単ではないと思いますが、全力を尽くしていきます。
◆水野賢一のひとりごと
P線補助の見直しは残念ながらまだ実現していません。各方面に働きかけはしているのですが・・・。「P線補助の見直し」といくら主張しても、何のことやらなかなか理解してもらえないもどかしさもあります。確かに私もこの問題を調べるまではP線補助なんて言葉は聞いたこともありませんでしたから仕方ない面もあるけど・・・。 ただ北総鉄道に関しては明るい光が多少見えてきたとも言えます。5月25日の“ひとりごと”の欄にも書きましたけど、第四次支援が決まったこともその一つです。そして毎年毎年赤字を積み重ねてきた同鉄道が平成12年度には初めて黒字を計上したということもあります。単年度黒字になったからといってもこれまでの膨大な累積赤字があるので即時値下げというのはなかなか難しいでしょう。しかし値下げにむけての環境少しずつ整備されつつあるということは客観的にみて事実ではないでしょうか。
北総・公団線の運賃問題(2)
2000.05.25
「北総・公団線の運賃問題(2)」
◆「これ以上の運賃値上げはしない」との約束を取り付けた水野賢一。今度は値下げに向けて・・・。
値段の高さでは日本でも有数の北総・公団線の運賃をいかに引き下げるかは千葉ニュータウンの住民の悲願となっている。水野賢一代議士は地域からの強い要望を受けて、四月二十日にこの問題を国会の質問で取り上げ、運輸省から「これ以上の値上げは長期間いたしません」との約束を取り付けた。しかし水野議員は「あくまでもこれは第一歩。値下げこそが目標」と今後もこの問題に取り組んでいくことを誓っている。(4月20日の国会論戦の全文)
Q.北総・公団線の運賃問題を国会で取り上げた理由をお聞かせください。
A.運賃の高さが尋常でないからです。他の鉄道に比べ二~三割高いというならまだしも二~三倍も高い。だからこそ地域住民が行った値下げを求める署名運動も短期間に六万三千もの署名が集まったのでしょう。私もなぜ高いのかを色々と調べてみましたが、そうすると現在の国の取り組みに多くの問題点があることが分かってきました。そこで国会で取り上げるべきだと思ったのです。
Q.運輸省の答弁をどう評価しますか。
A. 十分満足がいくとは言えませんが大きな前進はあったと思います。これまでの運輸省は「運賃が高いのはやむをえない」という姿勢でしたが、今回は「これ以上の値上げは長期間しない」「仮に値上げの申請があっても十分慎重に対応したい」との答弁をしたからです。ただあくまでもこれは第一歩です。値下げこそが目標ということを忘れてはいけないと思います。
Q.鉄道会社の経営状態が悪いので高い運賃もやむをえないという声も依然 として根強いようですが。
A.確かに経営状態が悪いのは事実です。開業以来、現在にいたるまで毎年赤字を重ねており、累積赤字が四百三十四億円にも達している状態です。しかし高い運賃のために利用者が伸びずに、かえって経営状態を悪くしているという面もあります。こうした悪循環を断ち切るためにも値下げが求められています。
Q.いくら会社の経営が苦しいといってもニュータウンの居住者にとっては 唯一の鉄道です。経営破綻しないような支援策はないのでしょうか。
A.実はこれまで三次にわたって住宅都市整備公団(現・都市基盤整備公団)、千葉県、京成電鉄が融資・出資という形で支援をしてきました。ところが昨年度でこの支援が終わってしまったんです。まったくおかしな話だと思いますね。まず早急に第四次支援策をまとめるように関係者を促しています。
Q.経営難の直接の原因は高い金利負担だと聞いていますが、どういうことですか。
A.この鉄道は北総開発鉄道株式会社が運行していますが、建設をしたのは鉄道建設公団という特殊法人です。鉄建公団がつくった線路などを北総鉄道が買った形になります。その代金を分割払いしていますが、その金利が昔の契約ですから四・四七%と高いままなわけです。
Q.それでこの金を期限よりも前に繰り上げ償還して、現在の安い金利に借り換えたらどうかと提案しているわけですね。
A.おっしゃる通りです。元本が大きい額ですから、例えば二%の金利に借り換えられたら、それだけで支払い金利は年に約三十億円も減ります。そう簡単に計算通りにはいかないでしょうが実現すれば会社の経営はずっと楽になるはずです。
Q.なぜその案が今のところ実現しないのですか。
A.最大の理由は大蔵省の反対でしょう。借り換えをすると鉄道建設公団が損をする、公団の資金はもともと財投資金だから、結局財投に穴があくから駄目と言っています。その論法がまったく間違っているとはいえませんが、高額運賃に苦しむ住民をあまりにも無視した理屈ですよ。現に財投資金を原資とした他の公団では借り換えを認めた前例はあるんですから。 まあ、抵抗はあってもそれを打ち破って、国民の声を政治に反映させることこそ政治家の本来の役割ですから、今後も知恵と力を注いでいきたいと思います。
Q.他にも値下げのために国がやるべきことがいろいろとあるんじゃないかと思います。そのへんもじっくりと伺いたいところですけれど紙面の都 合もありますから、また次回によろしくお願いします。
A.そうですね。もし機会があれば、鉄道に対しての国の補助がもはや時代遅れになってしまっていることなどについて、私の考えを述べられればと思います。よろしくお願いします。
◆解説
●北総開発鉄道と国会審議 あまりにも高い北総開発鉄道の運賃問題は水野氏が取り上げる以前にも国会で審議されたことがある。誰が見てもやはり運賃が高いと思うからである。
平成11年5月 斉藤鉄夫氏(公明)衆議院建設委員会にて質問
平成11年7月 実川幸夫氏(自民)衆議院運輸委員会にて質問
●北総開発鉄道の経営状況(平成10年度)
営業収入 109億8378万円
営業費用 74億8688万円
営業利益 34億9689万円
経常損失 ▲24億3457万円
営業利益を出しているにもかかわらず大幅な経常損失になっているのは鉄道建設公団などへの支払い利息が大きいため
●鉄道運賃の認可 鉄道運賃を値下げする場合、鉄道事業者が運輸大臣に申請をする。申請を受けた運輸大臣は運輸審議会に諮問して認可するという流れになる。 ただし値下げの場合は新たに認可を受ける必要はない。
●北総開発鉄道株式会社の概要
設立年月日:昭和47年5月10日
資本金:249億円
京成電鉄:124億5千万円(50.0%)
千葉県:55億5千万円(22.3%)
都市基盤整備公団:43億0千万円(17.2%)
金融機関:15億8千万円(6.4%)
地方公共団体:7億5千万円(3.0%)
輸送人員は一日平均8万2千人
従業員は283名(平成11年3月末)
●北総鉄道への第3次支援の内容
期間は平成7年度から11年度まで
京成電鉄:出資57億円、融資81億円
千葉県:出資15.5億円、融資53億円
住都公団:出資15.5億円、融資53億円
鉄建公団:元本償還の支払い猶予
◆水野賢一のひとりごと
これも衆議院選直前に機関紙に載せた文章です。インタビューの形式をとっていますが、実際には全部自分で書きました(バラしちゃった!)。 だから本当は自問自答というべきかもしれません。そのくらいの技巧はご容赦のほどを。 ところで文中で経営の厳しい北総線への支援策について次のように書いています。「ところが昨年度でこの支援が終わってしまったんです。まったくおかしな話だと思いますね。まず早急に第四次支援策をまとめるように関係者を促しています」。 その後、紆余曲折はありましたが、結局、支援措置は復活しました。 今年の3月に支援策がまとまり現在、第四次支援が行われています。これによって恐らく今後10年は値上げはしなくてもすむと思います。その点では私が昨年、国会質問で運輸省から取り付けた「今後、長期間値上げはしない」という約束は守られるだろうという感触を持ってます。ただ「値上げをしない」というのはあくまでも第一歩です。今後とも値下げという最終目標に向けてさらに努力をしていきたいと考えています。
この運賃問題については2000年5月18日、6月1日の項もご覧ください。
北総・公団線の運賃問題(1)
2000.05.18
「北総・公団線の運賃問題(1)」
◆日本有数に高い運賃をなんとかしたい。地元住民の期待に応える連載第1弾。
北総・公団線の旅客運賃問題「長期間、値上げはいたしません」
運輸省が衆議院決算分科会で約束
四月二十日の衆議院決算行政監視委員会第四分科会で、水野賢一衆議院議員は二階運輸大臣などに北総・公団線の運賃問題で質問した。 同路線は、他の鉄道に比べ同じ距離で二〜三倍という高い運賃水準になっている。
水野代議士の質問に運輸省側は「なるべく長い間運賃を据え置きたい」と答弁し、千葉ニュータウンの住民にとっての悲願である運賃問題の解決に向かい大きく前進した。
千葉NT中央〜新日本橋1,110円はあまりにも高すぎませんか?
距離20キロの運賃比較
北総・公団線 680円
北総・公団線対比
京成電鉄 310円 2.2倍
都営地下鉄 310円 2.2倍
JR東日本 290円 2.3倍
営団地下鉄 270円 2.5倍
北総・公団線の運賃は他の鉄道に比べて二倍から三倍も高く、日本有数の高額運賃となっている。そのため六か月の通勤・通学定期で比べると他の鉄道と数十万円の格差ができてしまう。この背景としては運営する北総開発鉄道(株)が年間二十四億円、累積で四百三十四億円という巨額の赤字を出している点が挙げられる。
赤字の理由は大きく分けて二つ。一つは千葉ニュータウンの入居の遅れだ。千葉ニュータウンは当初、将来人口を三十四万人として計画されたが、下方修正されて現在の計画は十九万四千人だ。しかし現在入居しているのはその四割にも満たない七万六千人だけ。鉄道利用者が予定通り増えないため赤字になり運賃の値上げをせざるを得ない、逆に運賃が高いので入居者が増えないという悪循環に陥ってしまっている。
もう一つの理由は同社が払っている建設費である。実際に鉄道を建設したのは鉄道建設公団という特殊法人なので同社はここに建設費を二十五年分割で払っている。しかしこの金利が高く、経営を圧迫し巨額の赤字を生み出した。
また水野代議士は、運賃問題の解決策として「金利負担を軽減するための低金利への借り換え」をまず提案。水資源開発公団や農林金融公庫など、過去に借り換えをした具体例を挙げ、特殊法人に対しても繰り上げ償還・借り換えが可能ではないかと運輸省に迫った。
また、鉄道に対する国の補助制度がもはや時代遅れになってしまっていることを指摘し、この改革など、運賃問題早期解決のためのより現実的な手法を提案。分科会に出席した関係者からは、共感する声が多数聞かれた。
水野代議士は、ただでさえ高い運賃が二〜三年おきに値上げされている現状を取り上げ、「今後長期間にわたって値上げをしないことを約束していただけるか」と質問。これに対し、運輸省の安富鉄道局長は「二〜三年おきに値上げをすると入居も遅れて悪循環になるので、できるだけ長く運賃を維持していきたい。値上げ申請があっても十分慎重に対応したい」と答弁した。これまでの同省が「高い運賃もやむをえない」と言っていたことに比べると大きい前進ではあるが、水野代議士は「あくまでも目標は値下げ」と今後の努力を誓った。
昨年から今年にかけて、地域住民が行った運賃値下げの署名運動では短期間で六万三千人もの署名が集まった。北総開発鉄道運賃問題の解決は、まさにすべての住民の悲願と言える。水野代議士は地元選出の国会議員として一日も早い「悲願達成」を目指していくつもりだ。
◆水野賢一のひとりごと
この文章は昨年の衆議院選直前に選挙区内にビラとして配ったものです。「水野代議士は・・・と提案した」というように新聞記事風に書いてありますが、筆者は私自身です。 さてこの時の選挙公報にも私は次のように書きました。
“北総・公団線の運賃問題は、国会で取り上げ、その結果、運輸省が「長期間値上げはしない」と回答しました。今後も値下げに向けて努力します”。 つまり私にとって値下げへの努力は選挙公約なのです。だからこそ当選させていただいた後も微力を尽くしているつもりです。
総選挙後の動きとしては、昨年8月に千葉県や関係市町村で「北総開発鉄道利用促進協会」というのが設置されて様々な角度から北総鉄道の利便性を高めるべく論議が始まりました。そして北総鉄道への第四次支援策もまとまりました。さらに北総鉄道側も「学期定期」を発売することになりました。今まで通り「3か月」という期間で買いたいお客さんはそれで買えば良いし、「一学期」という単位で買った方が有利な人はそっちを選べるようになりました。選択の幅が広がったのは歓迎すべきことです。関係者のご努力には感謝してます。
そういう意味でこの問題も少しずつの前進はしています。ただあくまでも最終目標は値下げです。この目標は率直なところ“なお道遠し”の感もあります。しかし今後とも粘り強い取り組みをしていくことを重ねてお約束いたします。 なお北総・公団線の運賃問題については2000年5月25日、6月1日の欄もご参照ください。
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