• TOP  >  
  • ブログアーカイブ

けんいちブログ

「暫定税率廃止はどうなった(1)」

2011.09.26

暫定税率廃止はどうなった(1)
   ~マニフェスト違反どころか、さらに逆行~

 民主党のマニフェストが反故にされた例は数多い。その中でも典型的なものが「ガソリン税の暫定税率の廃止」という約束だろう。民主党がまだ野党だった2008年に暫定税率の存廃が大きな焦点になった。その時、民主党の若手議員たちが“ガソリン値下げ隊”なるものまで結成して「暫定税率をなくせ!」「ガソリンを値下げしろ!」と叫んでいたのも、今となっては何だったのかと思わざるをえない。

 暫定税率廃止という約束はただ単に守れなかったというだけではない。廃止できなかったどころか民主党政権下でかえって逆に「恒久化」が強められたのである。

 暫定税率の始まりは自民党政権時代の1974年のことである。本則で1リットルあたり28.7円となっているガソリン税を5年間の暫定措置だとして53.8円に引き上げたのである。それ以降、「暫定」「暫定」と言いながら5年ごとに反復延長して30年以上続いてきた。

 cf.正確には「ガソリン税」という税目はない。ガソリンには消費税以外に「揮発油税」と「地方揮発油税」が課税されており、この二つの税金を総称して「ガソリン税」と通称している。なお2008年時点では地方揮発油税は地方道路税という名称だった。

 それに対して「暫定措置のはずなのに30年以上も続くのはおかしい」として廃止を主張していたのが民主党だった。ではその民主党が政権を取ったらどうなったのか。

 暫定税率を定めているのは租税特別措置法という法律である。政権獲得の翌年2010年にこの租税特別措置法は改正された。これにより「当分の間」53.8円を維持することになった。俗にいう「当分の間税率」の誕生である。

 「暫定税率」から「当分の間税率」に変わったわけだが、いったい何が違うのだろうか。実際には大きな違いがある。暫定税率時代は先に述べた通りあくまでも期限は5年だった。つまり5年すると期限が来るので、新たに国会で審議して、次の5年も延長するという法律を通さなければならなかった。

 ところが「当分の間」には期限がない。延長のための手続きをしなくてもずっと続くわけである。上で「恒久化が強められた」と言ったのはそういうわけである。

 言行不一致そのもののおかしな話だが、続きはまだ次回のブログで。

再生可能エネルギー買取り法案の質疑

2011.08.30

再生可能エネルギー買取り法案の質疑

 本日午前、菅直人内閣が総辞職した。菅首相が退陣条件の一つとして挙げていたのが、再生可能エネルギー買取り法案だった。同法案は衆議院段階で自民党・公明党の要求を入れた形で修正された。その上で両院で全会一致で可決され、今月26日に成立した。それに

よって退陣条件が整ったとして菅内閣の総辞職に至ったわけである。
本ブログでもこの法案については7月28日、8月2日の項で触れた。原案にも修正案にも一部問題はあると思うが、再生可能エネルギーを普及させるという基本線には大賛成なのでみんなの党も賛成票を投じている。

 この法案については、私自身が8月24日に党を代表して参議院本会議で質疑に立ったので、その時の質問原稿を以下に掲載する。党と私のこの問題についての考え方の基本線を網羅しているつもりである。
実際に登壇した時は、原稿とは微妙に違った形で話しているので、細部では議事録とは違うかもしれないが、基本的に原稿通りの質問を

している。また政府側の答弁については議事録を参照していただきたい。

なお本会議質疑は、委員会質疑のような一問一答ではない。持ち時間の範囲内で、壇上で演説風に質問をして、あとは答弁を聞くという形式である。以下に掲載する質問の場合は、持ち時間は10分だった。また太字になっている部分が質問部分である。

  *  *  *  *  *

再生可能エネルギー特措法案・電気事業法等改正案
についての本会議質疑〔全文〕(平成23年8月24日)

みんなの党の水野賢一です。

再生可能エネルギーが環境面で優れていることは言うまでもありません。また輸入に依存しないわけですから、これをうまく普及・発展させれば明治以来資源小国とされてきた日本を資源大国に生まれ変わらせる可能性もあります。

 ですから私たちみんなの党も再生可能エネルギーの促進には大賛成ですし、固定価格買取り制度はそのための極めて有効な手段だと考えています。

 その上で法案についてお伺いします。衆議院段階での修正部分については本来修正案提出者に聞きたいところですが、本会議のルールに則って政府側に見解を質してまいります。

 修正については評価できる点もあります。例えば再生可能エネルギーの種類や規模によって買取り価格を変えるようにしたことです。こうしたきめ細かな配慮をする一方で、他方では丁寧さに欠けた修正もあります。附則第7条で集中的な導入期間を一律3年とした点です。導入を促進するために集中的な期間を設けるという発想は分かります。しかし一口に再生可能エネルギーといっても太陽光パネルのように設置しやすいものもあれば、地熱・風力のように環境アセスを実施するため時間がかかるものもあります。そうした特性を考慮せずに一律3年とするのが果たして適当なのでしょうか?見解を伺います。(質問1-経済産業大臣)

 しかしなによりも修正部分の最大の問題は電力多消費産業に特例を設けたことです。平均よりも8倍以上電気を使う事業者の電気料金は大幅に軽減するというのでは、平均の6倍~7倍使っている企業は、もっと電気を消費してこの制度の恩恵にあずかろうとするのではないですか。国民には節電を呼びかけながら、一方で電力無駄使いを助長するような制度に正当性があるのでしょうか。省エネ努力を求めないまま、ただ単に電気をたくさん使っているからといって配慮するという条項が正しいのですか。少なくとも運用にあたっては省エネ努力を厳しく求めていくなどの留意が必要ではないですか。お伺いします。(質問2-経済産業大臣)

 そもそも一部の業界に配慮する前に、政府がまずやるべきことは、どこの企業、どこの事業所が、どれだけの電気を使っているかのデータを公表することです。政府はそのデータを持っているのです。省エネ法という法律によって電気やガス、さらには石炭、天然ガスなどを一定以上に使った事業所は経済産業省に報告することになっているからです。

しかし国は企業秘密だとして、そのデータを十分に開示していません。製品の作り方のノウハウならばいざ知らず、なんで電気の使用量が企業秘密なんですか。データがなければ十分な議論さえできないじゃないですか。本来、政府が持っている情報は国家機密や個人情報を別とすれば情報公開法の対象のはずではないですか。

 このデータ開示をめぐっては裁判にもなっています。情報公開請求を受けても開示しようとしない国のことを環境NPOが訴えたからです。これまで地裁・高裁レベルで6回判決が出ていますが、その結果は国の方からみて敗訴・敗訴・敗訴・敗訴・勝訴・敗訴です。つまり国の1勝5敗です。現在、最高裁に係属していますが、こんなものは裁判で争う前に公開すればいいんです。

 民主党は口では情報公開を言っていたはずではないですか。口先でもっともらしいことを言いながら政権をとると実行しない例はこれまでにも多々ありますが、これもまたその典型例です。有意義な国会審議のためにも電気使用量のデータは即座にすべて開示すべきではないですか。(質問3-経済産業大臣)

 さて買取り義務化を実施すれば電気料金は上がります。電気料金が上がる要因は他にもたくさんあるので再生可能エネルギーだけを、ことさらにあげつらうつもりはありませんが、上がること自体は事実です。

 それならば電気料金を下げる政策、つまり電力自由化・地域独占打破・総括原価方式見直しなどとセットにして行なうというのが筋じゃありませんか。この点についての見解を伺います。(質問4-経済産業大臣)

 これまでにも電力自由化は形の上では部分的に進んできました。しかし実態として新規参入事業者のシェアは1%台にすぎず、越境供給もほとんどありません。結局、送電線を持っている既存電力会社が、圧倒的に優位な立場に立つため本当の競争は行われないのです。だからこそ発送電の分離が必要なのです。見解を伺います。(質問5-経済産業大臣)

 私たちみんなの党は規制緩和を強く主張していますが、弱者を守るための規制というならばまだ分かります。しかし強者中の強者、大企業中の大企業である東京電力などを守る規制には何の合理性もないと断言します。

 再生可能エネルギーで発電しても送電網に接続してもらわなければ、どうにもなりません。法案第5条では一応、接続を義務化してはいますが、例外の余地が大きすぎます。

海江田大臣は電力会社の対応に問題があれば、経済産業相が勧告・命令をかけられるから大丈夫と言いますが、その経済産業省幹部が今年も東京電力に天下ったのですから、信用できるはずがありません。経済産業省から電力会社への天下りが横行してきたことへの率直な反省と今後は断固許さないという決意を伺います。(質問6-経済産業大臣)

これに関して言えば、天下り監視機関である再就職等監視委員会を設置することは国家公務員法上の義務であるにもかかわらず、民主党政権が発足以来、長らく人選さえ進めてきませんでした。この怠慢ぶりについて本会議でも正式に謝罪すべきだと思いますが、官房長官の見解を伺います。(質問7-枝野官房長官)

なお政府も遅ればせながら5月末に同意人事案を国会に提示しましたが、それまで私たちと共に「提示すべきだ」と言っていたはずの自民党が、いざ提示されると、今度は採決に応じないという姿勢をとっているのは理解に苦しむものであり、政府の怠慢に続く、国会の怠慢として強い批判に値することも申し添えます。

さて、この法案が成立をすると電気料金への上乗せ分は“外出し”の形で電気料金の明細書に載るようです。それは良いとしても、一方でなぜ原子力発電の再処理費・最終処分費はそうなっていないのでしょうか。原発の再処理費・最終処分費もすでに電気料金に上乗せされていますが、こちらは明細書に明示されることなく“こっそり”と上乗せされています。こんな姑息なことでよいのですか。これまでに再処理費・最終処分費として累計何兆円が電気料金に上乗せされてきたのかその金額も合わせてお答えください。(質問8-細野原発担当大臣)

 さて、再生可能エネルギーを普及させるためには無用な規制の撤廃も必要です。例えば風力発電用の風車も高さ60m以上だと建築基準法で高層住宅と同様の審査が必要になります。耐震性が重要であることは否定しませんが、人里離れたところにある風車と人間が住む住宅が同じ基準である必要があるのですか。こうした過剰規制も見直すべきではないですか。(質問9-国土交通大臣)

最後に、エネルギーという時には電気だけでなく熱もあります。太陽熱利用、バイオマス熱利用といった熱の分野にも固定価格買取りのような制度を導入することも今後の課題として検討すべきだと思いますが、見解をお伺いして質問を終わります。(質問10-経済産業大臣)

野田佳彦氏の民主党代表就任にあたって

2011.08.29

野田佳彦氏の民主党代表就任にあたって
               
野田佳彦衆議院議員が民主党代表に選出された。恐らく明日にも国会で内閣総理大臣として指名を受けることになると思われる。千葉県選出の国会議員が首相に選出されることは初めてのことであり、まずは「おめでとうございます」と申し上げたいし、今後の活躍に期待をしたいとも思う。
 しかし総選挙の洗礼を経ないまま総理の座をたらい回しすることはけしからんと言っていたのは他ならぬ民主党自身である。自民党政権が“小泉純一郎→安倍晋三→福田康夫→麻生太郎”というたらい回しをした時に「たらい回しではなく総選挙で国民の信を問うべきだ」と野党民主党は言っていたはずではないか。今、同じ言葉を民主党自身に投げ返したい。新政権が早急になすべきことは解散・総選挙である。
 さて政策面で言えば、野田氏といえば増税容認・財務省依存という印象が強い。私たちみんなの党は「増税の前にやるべきことがある」を合い言葉にしている。徹底した無駄の撲滅である。もちろん無駄の温床とされる特別会計、独立行政法人、埋蔵金、天下りなどに切り込むことは当然である。こうした点については国会論戦などを通じて厳しく追及していきたい。
 また野田氏は民主・自民・公明三党の「三党協議」「三党合意」を重視する姿勢も示している。私たちも政党間協議を否定するものではない。しかし通常国会の経過を振り返ってみても、三党が協議という名の取引を行ない、合意をするとあとは審議を省略して一気呵成に法案を成立させるという場面が何度もあった。つまり充実した国会審議はおろそかにされてしまったわけである。こうした「疑似大連立路線」を継続するようなことがあるならば、それに対しても厳しい批判をしていかなければならないと思っている。

「こんなところにも東電優遇政策が・・」

2011.08.03

「こんなところにも東電優遇政策が・・」

 一般に焦点があたらないような細かな政策の中に東京電力優遇策がちりばめられていることは7月26日などのブログにも書いた。今日はそうした事例をもう一つ記してみたい。

 福島第一原発事故以来、電力不足が深刻になり、ついに7月1日からは関東・東北地方で電力使用制限令が発動されている。大口需要家はピーク時の電力使用量を15%削減せよ、というものである。強制力がある形で制限令が発動されるのは1974年の第一次石油危機以来のことである。

 この電力使用制限令だが、対象となっているのは500kw以上の大口需要家である。その数は、東京電力管内で14800、東北電力管内で3700事業所となる。

  cf.数は会社数ではなく事業所数。つまり鉄鋼業でいえば新日鉄とかJFEという会社単位でなく製鉄所単位の数になる。

 これらの事業所がすべて東京電力や東北電力から電気を購入しているわけではない。7月25日のブログにも書いたが、電力自由化は遅々として進んでいないとはいえ、それでも一応大口需要家分は自由化対象なので、新規参入事業者(PPS)などから購入することも可能である。

 そして経済産業省によると購入先は以下のようになっている。
        電力会社から購入 PPSから購入  合計
東京電力管内   13200    1500   14800
東北電力管内    3600     100    3700

 cf.電力会社から購入というのはそれぞれ東京電力、東北電力から購入したものを指す。

 おかしいのは新規参入事業者から電気を買っている事業所まで15%削減の対象になっていることである。東京電力は今回の電力不足の原因者である。東北電力は事故を起こしたわけではないが原発を増設していた点で、いったん事が起きた時には高リスクの電気だったことには違いない。それだけにそうした電気の使用者が制限を受けるのはやむを得ないだろう。

 だが新規参入事業者は事情が異なる。事故にも関係なければ、原発を使っていたわけでもない。原発と関係ない電気を購入している事業所まで同列に15%削減というのはどう考えてもおかしい。つまり「東電優遇、新規参入者いじめ」である。

 これは経済産業省の抜きがたい体質と言わざるをえない。政官業の癒着の表れである。より具体的に言えば、族議員(自民党にも民主党にもいる)と経済産業省と既存大企業の癒着である。私たちみんなの党はそれを打破するために全力で戦っていく。

 さて、こうした東電優遇策に対しては「おかしいではないか」という指摘が出るのも当然である。経済産業省側もそうした声を予想していたようである。わざわざホームページ上で“よくある質問について(Q&A)”として「なぜPPSの需要家にも使用制限が課せられるのでしょうか」という質問とそれに対する回答をのせている。

 その回答の中では「PPSは、東北電力、東京電力の送配電線を利用して電気を供給しています」ということを理由としている。よく分からない理屈である。それでも、一つだけ分かることがある。現在のように発電と送配電を一体としている限り、こうした屁理屈の口実に使われるということである。だからこそ発送電の分離が必要なのである。みんなの党の掲げる発送電分離の主張をますます強く打ち出していかなければならない。

「シンポジウムに行ったら菅首相が・・」

2011.08.02

「シンポジウムに行ったら菅首相が・・」

 7月31日の日曜日、長野県茅野市で開催をされた「みんなのエネルギー・環境会議」という会に出席してきた。「みんなの・・」という名称がついているからといって「みんなの党」関係の会ではない。自然エネルギー普及促進についての第一人者で最近テレビなどでも引っ張りだこの飯田哲也(NPO法人・環境エネルギー政策研究所)氏らが発起人となって開催されたシンポジウムである。

 飯田氏にはかねてから再生可能エネルギーについての様々な情報を教えてもらっており、先日はみんなの党の勉強会でもこの問題について講義してくれた。その飯田さんからのお誘いなので出席した。この茅野市での会議には、他にも旧知の平田仁子(気候ネットワーク)氏や澤昭裕(国際環境経済研究所)氏なども出席していたので、多彩な意見を聞くことができ、行くだけの甲斐があるものだった(もっとも澤さんとはかなり意見は違うが・・)。

 また茅野市を含む長野4区を地盤とする現在落選中の後藤茂之前衆議院議員(自民党)も聴衆として参加していた。以前、私が衆議院議員だった時に本会議場で隣の席だったこともある。久しぶりに会ったが、元気そうでなりよりだった。

 しかし一番驚いたのはサプライズゲストとして菅直人内閣総理大臣が来場したことである。菅首相が再生可能エネルギーの普及に最近情熱を傾けていることは知っている。それにしても東京から遠く離れたこうした会議にわざわざ足を運んだのは驚きである。現職国会議員の参加者は私と福島みずほ参議院議員(社民党党首)と他1~2名くらいだったので、内閣総理大臣自らの出席というのはまさにサプライズといえた。

 総理は挨拶をしたあと1時間くらいはパネルディスカッションに耳を傾けていた。私もパネラーとして登壇していたので、ちょうど7月28日のブログに書いたようなことをかいつまんで発言した。「再生可能エネルギーの買取り法案については、後ろ向き修正でなく前向き修正をすべきだ」ということである。その項にも書いたが、こうした声に耳を傾ける度量があるかどうかに菅首相のこの問題にかける本気度が問われているとあらためて思う。

 さてこの会場では時間の関係上、言わなかったが、再生可能エネルギー買取り法案については修正すべき点が7月28日のブログに書いた以外にもある。接続義務をもっと明確化にしなければならない。

 再生可能エネルギーによって発電するのは電力会社に限らない。それ以外の企業が太陽光発電や風力発電に新規参入することは十分考えられる。ところがこうした会社は送電線を持っていない。かといって新たに送電線を引くのは莫大な金がかかる。また各社の送電線が入り乱れてもあまり意味がない。

 そこでA社が太陽光発電で発電した電気は(関東地方ならば)東京電力に買い取ってもらいその送電線網を使って消費者に届くことになる。逆にいえば東電側が送電線の使用を拒めばいくら発電しても売ることはできなくなってしまうわけである。

 ところが政府が提出している再生可能エネルギー買取り法案には使用を拒む条項が存在するのである。法案の第5条1項2号では「当該電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」には送電線につながなくてよいことになっている。これではこの条項が乱用される危険性がある。

 確かに法案では正当な理由がないままに接続を拒否した場合には経済産業大臣が電力会社に勧告・措置命令をかけることができるようになっている。7月6日に渡辺喜美代表がこの問題を衆議院予算委員会で追及した時も海江田経済産業大臣はこう答弁している。「おかしいと思った場合は、これは経済産業大臣が勧告ないしは命令をして接続をさせることができるようになってございます」。

 しかしその経済産業省の幹部が各電力会社に天下っているのである。こうした天下りを通じた癒着構造の中、経済産業省が公平な立場で勧告・命令をするのかどうか、はなはだ心もとない。要はこうした条項は撤廃して、例外なく(もしくは例外は極小化した形で)接続を義務化するように修正すべきである。

 このような問題はそもそも既存電力会社が発電所だけでなく送電網も持っていることに起因する。だからこそ発送電の分離が必要なのだ。発送電が一体になっていることも問題点についてはあらためて別項で書きたいと思う。

「再生可能エネルギー買取り法案―後ろ向き修正と前向き修正―」

2011.07.28

「再生可能エネルギー買取り法案
―後ろ向き修正と前向き修正―」

本日、環境委員会で質問に立った。江田五月環境大臣が就任してから初めての審議である(なお江田氏は法務大臣も兼務)。質疑ではいくつかの問題を取り上げたが、その一つが再生可能エネルギーの買取り法案である。この法案は菅首相が突如、成立に熱意を見せ、政局の焦点にもなっている。

 いくら熱意を示してもねじれ国会の中、法案は与党だけでは通らない。そこで民主党では自民党の意見を入れて修正の上、可決・成立という道を模索しているようである。一方、みんなの党も独自の修正要求を出す。

 つまり自民党の“後ろ向き修正”要求を飲んで成立を目指す方法もあれば、みんなの党の“前向き修正”要求を飲んで成立を目指す道もある、ということになる。現状の参議院の議席数を見るとどちらの手法もありえるが、どうやら民主党政権は“後ろ向き修正”の路線を歩もうとしているようである。

 報道によれば自民党の修正要求の一つが電気の大口消費者の負担を減免するというものである(現時点では党として正式にこれを要求しているわけではないようだ。あくまでも自民党内にそうした声が根強くあるというのが正しい表現のようだが)。「コストが高い再生可能エネルギーが普及すると電気代が上がる」→「そうなると電力多消費産業が困る」→「だからそうした企業の負担は軽減すべきだ」という論法らしい。

 電力多消費産業といえば電炉、製紙、化学などである。しかし具体的にどの会社がどれくらい使っているのか。その点を本日の委員会で質問した。実は政府(厳密には経済産業省)は大口需要家の電力使用量を把握している。省エネ法という法律で大口需要家からは電力や石炭や重油の使用量の報告を受けているからだ。

答弁によると「平成20年度の場合、電力使用量が最も多い事業所は大王製紙三島工場で年間31億6千万kwh」ということである。ちなみに環境省が入っている霞ヶ関の庁舎は中央合同庁舎と呼ばれる26階建てのオフィスビルだが、ここが1816万kwhだから、その174倍になる。

 ところが、実はこの大王製紙の工場が全国一とは限らない。なぜならば国がデータを開示していない事業所が多いからである。これらの中にも電気を大量に消費しているところもあるはずである。本日の答弁によると、なんと501もの事業所について使用電力量の開示を拒否している。当該企業が「企業秘密だから不開示にしてくれ」と言うと、その言いなりになっているわけである。

 製品の作り方のノウハウが秘密だというならばまだ分かる。電気使用量がなんで企業秘密なのかよく分からないが、それにしても、どれだけ使っているかというデータさえ示さないまま減免するなどという理屈は通らない。使用量(特に大口の)というのは電力問題を考える上での基礎データである。こうした資料を隠し続ける経済産業省も経済産業省だが、データ開示を求めないまま「業界が困っているから何とかして」と言う自民党族議員も族議員である。

 大口需要家を減免すれば、その分家庭など小口の負担が増える可能性が高い。だからこそ私自身はそもそも大口需要家を特別扱いすること自体に反対である。だが百歩譲って、もしそうするならば徹底した情報開示は大前提である。それも要求せずに業界利益のために出てくる修正案は「後ろ向き修正案」と呼ばざるをえない。

 一方、みんなの党の提唱しているのは「前向き修正案」である。再生可能エネルギー買取りを義務化するなら、同時に電力自由化も推進すべきだというものである。再生可能エネルギーの普及が電気料金アップにつながるのは事実である(電気料金値上げにつながる要因は他にもたくさんあるので、再生可能エネルギーだけをあげつらうのはおかしいと思うが)。それだけに電気料金を安くする施策、つまり自由化や競争の促進も平行して進めるのである。地域独占の打破や発送電の分離の推進ともいえる。

 「後ろ向き修正」と「前向き修正」のどちらの路線を選択するか。菅首相のこの問題にかける本気度が問われている。

「なぜ?東京電力だけ環境アセスを免除」

2011.07.26

「なぜ?東京電力だけ環境アセスを免除」

電力不足ならば節電だけでなく電力供給を増やすことも考えるべきだと昨日書いた。ただ新たに発電施設を作る時には環境アセスメントを受けなければならない。

火力発電所ならば15万kw以上の施設は必ず環境アセスの対象になる。

 cf.ちなみに地熱発電所ならば1万kw以上、原発はすべてが環境アセスの対象になっている。

 ただアセスメントをしっかりと実施するとそれだけで3年くらいの時間がかかる。
それから着工するわけだから急場に間に合わない。そこで環境省は、この際アセスは省略してもかまわないという方針を打ち出した。環境アセスメント法52条2項の「適用除外」の発動である。この法律が1997年にできてから初めてのことになる。

 東京電力はいま緊急設置電源として以下の発電所を建設している。
 ・千葉火力   約100万kw
 ・袖ヶ浦火力  約11万kw
 ・姉崎火力   約0.6万kw
 ・大井火力   約21万kw
 ・川崎火力   約13万kw
 ・横須賀火力  約33万kw
 ・常陸那珂火力 約25万kw

これらの中にはすでに運転開始しているものもあれば、まもなく稼働予定のものもあるが、例えば千葉火力などは33万kwのガスタービン火力を3台設置する。もちろん本来ならばアセスの対象だが、その手続きは省略されている。

 火力発電所は周辺に窒素酸化物や硫黄酸化物を撒き散らす可能性がある。だからこそ環境アセスの対象なのである。もちろん国も東京電力も「正規なアセスメントは経なくても環境対策はしっかりとやっており大丈夫です」と言う。この点は、今後もしっかりと監視しなければならないと思う。

 私がとりわけ疑問に思うのは、アセス免除の対象が東京電力に限られているという点である。発電所というのは東京電力しか作れないというものではない。新規参入事業者が設置する例も多々ある。しかしこうした新規参入事業者の場合には従来通りのアセスが必要なのである。「東電ならばアセス免除、他の事業者ならアセスが義務」という不公平こそ問題と言わざるをえない。

 この問題には二つの考え方があるだろう。一つは「今は非常時だから、発電所の増設こそ急務でありアセスを免除しても仕方がない」という考えである。もう一つは「非常時だからといって環境への悪影響は看過できない。アセスはしっかりと実施すべきだ」というものである。

 双方ともに一理はあるが(私自身は後者の考えに近いが)、どちらの立場を取るにしても、東電と他社を差別的に扱う理由は見あたらない。「非常時だからアセス免除もやむなし」というならば新規参入事業者にもそうすればよいのである。「非常時でもアセスはやるべき」というならば東電にも義務付けるべきなのである。

 環境アセスメント法52条2項の「適用除外」などというのは細かな話なので、普通はあまり注目をされない。ただ「神は細部に宿る」ともいう。現政権の政策を見ると、こうした細かい点での東電優遇策がちりばめられている。もちろん自民党政権下もそうだった。東京電力が長年にわたって培ってきた政界・官界とのパイプが生きているのだろう。だからこそしがらみのない「みんなの党」がしっかりと言うべきことを言っていく使命がある。

cf.東電だけが環境アセスの適用除外になっていることについては5月20日の参議院予算委員会での私の質疑で菅首相や海江田経済産業大臣に質しました。詳しくは国会会議録をご覧ください。

国会会議録はこちらより検索いただけます→http://kaigi.ndl.go.jp/

「電力自由化は形だけ」

2011.07.25

「電力自由化は形だけ」

「夏は暑い」というのは当たり前だが、それでも近年はさらに暑くなってきている感じがする。気象庁は以前から30℃を超える日のことを「真夏日」と呼んでいたが、最近は30℃以上などは当たり前になってきたため2007年からは35℃を超える日を「猛暑日」と呼ぶようにした。そして昨年は、明治31年に観測が始まってからの113年間で最も暑い夏になった。

 さて暑い季節は電力消費が増える。特に今年は原発事故が重なったために電力不足が心配されている。政府も37年ぶりの電力使用制限令を関東・東北地方に出し、他地域でも節電を呼びかけている。

 電力不足というならば節電は当然のこととして、もう一つやるべきことがある。電力供給を増やすことである。発電は何も電力会社しかできないわけではない。自家発電もあれば、既存の電力会社以外の新規参入事業者もありえる。東京電力の電気だけでは足りないというならば、新規事業者にもどんどん参入してもらえばよい。つまり電力自由化である。

 そういうと「電力はすでに自由化されています」という答えが返ってくる。確かに法律上はそうなっている。1990年代から段階的に電力自由化が進み、現在では50kw以上の電力小売りは自由化されている。要は関東地方の工場であっても必ずしも東京電力と契約する必要はない。東北電力と契約しても構わないし、エネットとかダイヤモンドパワーという新規参入事業者(PPSという)から買ってくることもできる。

cf.なお家庭用は50kw未満なので自由化の対象外で、関東の世帯は東京電力と契約せざるをえない。

 ルール上は大口需要家の電力は自由化されている。問題は実体としてそれが進んでいないことである。その実態を明らかにするために私も7月7日の予算委員会でこの問題を取り上げた。

 政府の答弁によると、電力会社が自分の管内を超えて他社の管内に小売りをした「越境供給」はわずかに1件にすぎない。「越境供給」できる対象も50kw以上なので全国におそらく何十万件もある。何十万件のうちたったの1件である。

 cf.50kw以上の需要家が全国にいくつあるかは7月11日提出の私の質問主意書で政府に問い質したが、政府の答弁は「その数を把握していない」というものだった。しかし500kw以上の需要家に限っても東京電力管内に約14800あると政府も認めているので、「全国」「50kw以上」に対象を広げれば何十万以上に上るのは間違いない。

 この1件というのは九州電力が広島市内(中国電力管内)のスーパーに電力を販売したというものだが、越境された側、つまり中国電力では社長、会長がまもなく辞任するに至った。越境という異例の事態を許してしまったことへの引責だと取り沙汰されている。「越境」というのはそれほど珍しいことといえる。さらに私の質問主意書(7月11日提出)への政府の答弁書によると全販売電力に占める新規参入事業者の発電の割合は1.91%にとどまっているという。

 これではいくら法律上、電力は自由化されているといっても結局、「関東は東京電力、関西は関西電力、九州は九州電力」という既存大企業の縄張りは何ら崩れていないと言わざるをえない。

 制度上は自由化されているにもかかわらず、なぜ実態の自由化が進んでいないのか。大きな理由は既存の電力会社が送電線を持っているからである。いくら発電事業に新規参入しても送電線が使えなければ、実際に電気を売ることはできない。結局は送電線を持っているところが強くなるのだ。

 だからこそ発電と送電を分離すべきだと私たち「みんなの党」は主張している。要は東京電力は発電だけの会社にすればよい。送電線は別会社にして、東電にも他の発電事業者にも平等に利用させるようにすべきである。それなくして真の電力自由化はないし、地域独占企業の壁を崩すことはできないのである。

「原発」「国の責任」「自民党」

2011.07.22

「原発」「国の責任」「自民党」

東京電力福島第一原発事故の損害賠償に関する「原子力損害賠償支援機構法」が成立する見込みだ。民主党政権が出した法案に対して自民党などが修正を求め、その修正要求を受け入れた形で成立するようである。

 自民党が求めていた修正の柱が「国の責任を明確にしろ」という点だった。つまり東電ばかりに賠償責任を押しつけるのでなく、国もしっかりと責任を取れということである。このことだけ聞けば一見もっともらしい。

 しかしこの自民党の言い分にも違和感がある。「国の責任」と言えば聞こえはいいが、要は税金で負担しろということである。確かに原発政策で国にも責任はあるだろう。しかし「国」という抽象的なものが政策を決定しているわけではない。「国」の中枢にいた個々人が政策を決定したのである。そういう人たちの責任に切り込まないまま「国の責任を明確にしろ」といって安易に税金を投入してよいものなのだろうか。

 私自身も与党時代の自民党に在籍していたが、当時の自民党のエネルギー・環境関係の部会・調査会では「日本の原発は絶対安全」「もっともっと原発を」「自然エネルギーなんて駄目駄目」という声が渦巻いていた。私のような再生可能エネルギー派は明らかに異端だった。もちろん「原発よりも自然エネルギーを」という主張も河野太郎議員など一部にあったのは事実にせよ、全体から見れば少数派であることは間違いなかった。

 そうした原発安全論・推進論を声高に唱えていた個人の責任に切り込まないまま、自民党が「国の責任」を声高に叫ぶのはどうにも理解できない。単に税金投入により東電の負担を軽減してあげる東電救済策ではないかと言いたくなる。最近では同党も「自民党政権時代のエネルギー政策にも反省すべき点があった」などと言っているようだが、文言だけ反省を言っても駄目である。原発安全論・推進論を声高に唱えていた個人の責任を問う覚悟こそ必要である。典型的な原発族のA議員などが総裁選を念頭に新グループを結成するなど論外である。

刑事責任は無理であっても次回選挙で公認しないなど政治的なけじめくらいつけられるかどうかが自民党が変わったかどうかを示す試金石ではないだろうか。

参議院 予算委員会での質疑

2011.07.06

水野事務所です[emoji:i-189]
参議院 予算委員会の質疑にみんなの党を代表して
質疑をさせていただきます
[emoji:i-197]
7月7日(木)15:45~16:15 参議院 予算委員会 TV中継
お時間がございましたら、是非ご覧ください
[emoji:i-190]

ページ上部へ